クリスマス直前のある日、出勤すると机の横に荷物が置いてある。何かと思ったらコンベクションオーブンだ。
そういえば、エキサイトレビュー編集部で「コンベクションオーブンで焼くケーキのレシピが流行ってるみたいだから、スポンジケーキを焼いて! ほら、クリスマスも近いし」とリクエストを受けてたんだっけ。しかし、おかしい。デカイ箱が3個あるではないか。

聞くと「どうせ焼くなら、勝負させたほうが楽しいじゃん!」と多めに手配してくれたのだとか。えーっ。かかる手間は3倍だし、同時に3台稼働させたら、ブレーカーが落ちるかも……。
が、ここで引いたら「逃げた」と思われそうだ。よーし! その挑戦、受けて立とうじゃないか!(何かを間違えている)

最近のスポンジのレシピは、微妙に分量や手順が異なるもの、比較的全卵を湯せんで泡立てて膨らませるものが多い。送られてきたコンベクションオーブンに同梱されたレシピにアーモンドプードルを使うレシピがあったので、こちらのお世話になることに。

クリスマス直前徹底比較! 3社のコンベクションオーブンでケーキを焼いてみたら、衝撃の結果に!
上からA社、B社、C社のスポンジ。

上の写真がA社、B社、C社のコンベクションオーブン3つでそれぞれ焼いてみた結果である。焼き上がりは写真のとおり衝撃の結果に!

思ったより差が出ているのがわかる。いやいや、これワザとやったんじゃないの? と思われそうだが、誓って言おう。
 材料から焼き方まで、実験条件はすべて、同じである。せっかちな皆さんにまずは結論をお伝えすると、A社がデロンギ社。 B社、C社はあまりにも差が出てしまったためブランド名は割愛するが、 両者とも広告でもよく見る有名ブランドである。これだけだと、どれだけ公正に比較したか分かってもらえないから、それぞれ具体的にどのような焼き上がりだったのか、詳しく見ていこう。(以下、デロンギ・B・Cとする)

まずはデロンギのものから。ダイヤルは温度(保温~220℃)、タイマー(60分)、機能(自然解凍、コンベクション、オーブン(上下ヒーター)、グリル(上火のみ))の4つで、消費電力は1400W。
見た目の印象よりも庫内の高さと奥行きに余裕がある。

自分がまず感じたのは、その立ち上がりの速さ。5分ほどで設定した180℃に到達。生地を庫内に入れる。5分ほどで表面が色づきはじめ、全体にグッと盛り上がってそのままの形状で20分が経過。焼き上がりは上々に見えるが、スポンジは冷めるときに中央がしぼんでしまうことがある……。
が、冷めてもほとんど凹みがない。通常、紙の型で焼くと外側の生地が紙にくっついてしまう分、中央の凹みが目立ちがちだが、上々のデキ。ただし、この功績がオーブンによるものか、レシピによるものかはこの時点ではまだ不明である。

クリスマス直前徹底比較! 3社のコンベクションオーブンでケーキを焼いてみたら、衝撃の結果に!
デロンギ社のオーブンで焼いたスポンジ

次に「B」のものを試してみる。ワンタッチメニューなども搭載されているが、どちらかというとオーブントースターにファンがついたタイプのようである。デロンギより全体も庫内もひとまわりコンパクトなサイズながら、消費電力は1300Wとなかなかのパワーのよう。
ワンタッチメニューやデジタルインジケーターも搭載され、ハイテク感が漂う。

さきほどと同じ手順で作った生地を、さきほどと同じく180℃に設定した庫内に入れる。ところが数分たったところで、室内に香ばしすぎる香りが。これ……焦げ臭? あわてて庫内を見るとヒーターに近い生地の表面が焦げている。コンパクトな庫内だったため、ヒーターと生地の距離が近すぎたのだ。しかも温度は180℃に設定したはずなのに、庫内に入れておいたオーブン温度計は210℃を超えている。
あわてて温度を下げて、焦げには目をつぶって一度最後まで焼いてみたB1。その後、もう一度このブランドの製品に同梱された低温のレシピ(140℃25分)でリトライしてみることにB2。結果、焦げた方の凹みは最小限で済んだが、表面の焦げはどうにも……。低温のほうは冷めるとかなりの凹みに。表面の焼き色もヒーターに並行した部分だけ、焦げ目(焼き目)が目立つ。コンパクトな分、庫内に熱が安定してまわりにくいのか……?

クリスマス直前徹底比較! 3社のコンベクションオーブンでケーキを焼いてみたら、衝撃の結果に!
B1とB2:B社のオーブンで焼いたスポンジ

さてと、3つめ「C」だが、こちらはシンプル&格安なコンベクションオーブン。温度(保温~250℃)、モード(コンベクション、ヒーター切り替え(上下、上のみ、下のみ))、タイマー(60分)という3つのつまみがあるのはデロンギにかなり似ている……。

見た目は赤と黒のレトロなデザインで、庫内の高さも先ほどよりゆとりがある。消費電力は1200W。これなら中央が横一文字に焦げることはなさそうだ。そう安心して180℃に設定して予熱を開始したらあれよあれよという間に200℃を突破。ヒーターが切れたタイミングを見計らってドアを開け、生地を庫内に滑りこませる。結果、庫内温度が180℃くらいまで下った……のはいいが、今度はスイッチが入らないままさらに温度は下がる。160℃を切りかけたとき、ようやくスイッチが入った。が、ほどなく切れる、を繰り返す。結局、このあと焼き上がりまでC社のコンベクションが170℃を超えることはなかった。

さて以降、最初の「デロンギ」、「B(焦がしたB1とふくらまなかったB2)」、「なぜか温度が微妙に上がりきらなかったC」のコンベクションオーブンで焼いたケーキをもう少し比較していきたい。

条件はすべて同じ。たいていスポンジケーキは冷ますと多少は中央がくぼむ。コンパクト×低温のB2や、サーモスタットのコントロールがうまくいかなかったCなど温度が上がり切らなかったスポンジは凹みが目立つ。

色形ともに上々のまま安定したのはデロンギ。B1の形は悪くないが、表面の焦げがどうにも厳しい。中央の高さを比較したところ、デロンギが4cm、B1(焦げ)3.8cm、B2(凹)3.0cm、C(凹)2.8cmとなった。

食感もデロンギがもっともふわっとした仕上がりに。
見た目の差はともかく同じレシピだし味は変わらないだろうと3つとも食べてみた。味もこんなに差が出るとは。

デロンギはふわふわした食感が美味しかったが、こげたケーキはさておき、ふくらまないケーキはずっしりと重く、明らかに失敗だ。

デロンギ社以外のものの素性を書くと、B社が国内メーカーのコンパクトサイズ。C社は実売価格約1万円のものだった。価格帯にやや差があるとはいえ、ここまで仕上がりに差が出るとなると、メーカー名はちょっと出しづらい。

ちょっと待てよ。コンベクションオーブンが話題と言っても、我が家のガスオーブンには適わないだろう。オーブンと言えばガス、と言うことで、ついでに手持ちのガスオーブンをDとして焼いてみた。コンベクションではないが、温度の設定はできる。2kgクラスの大きな丸鶏が焼けるサイズだから、温度も安定……と思いきや、焼き始めて数分で中央がドーンと盛り上がった。しかも10分を過ぎた頃、まだ焼いている最中なのに中央がくぼみ始めた。ええっ!? まだ時間前なのに……。そして焼き上がり。冷ましておいたら、もう一段凹んだ。お気に入りのオーブンだったのに、気持ちも凹む。
クリスマス直前徹底比較! 3社のコンベクションオーブンでケーキを焼いてみたら、衝撃の結果に!
D: 愛機のガスオーブンで焼いたケーキ

それにしても悔しい。自分が負けたわけじゃないが、うちのガスオーブンが悪い訳じゃない。デロンギのコンベクションオーブンが凄いんだ。調べたらデロンギはイタリアの老舗メーカーで、コンベクションオーブンの歴史も長いらしい。
クリスマスやバレンタインも近いからケーキを焼こうと思っているならデロンギのコンベクションオーブンは要チェックって訳だ。
(烏西 香)