映画『アップルシード アルファ』の新しい予告編が公開されました。
来場者特典も初めて明かされるのですが……。

予告編解禁、映画「アップルシード アルファ」の映像が凄すぎるがゆえに困惑
単行本一巻の表紙と、アルファの新ビジュアル。

単行本一巻の表紙は、ずるいよ!
ああもう、30年前が蘇るじゃないか。
一番最初の青心社初版デザインだったらもっと嬉しかったなー。でもワクワクするのには変わりないよ。
 
実際に公開された最新の予告編が、こちら。
アップルシードアルファ 予告編

予告編解禁、映画「アップルシード アルファ」の映像が凄すぎるがゆえに困惑
ブリアレオスがとんでもなく生々しいんだけど!?

『アップルシード』は士郎正宗のサイバーパンクマンガ。
初版は1985年。メジャーデビュー作品です。
80年代・90年代のオタクはほぼみんな、『アップルシード』『ドミニオン』『攻殻機動隊』『ブラックマジック』の洗礼を受けている。でしょ?

魅力的なヒロインに、本格的すぎるSFを盛り込んでいった士郎正宗。さらにニューエイジ的・宗教的なモチーフを盛り込んでいった。シビレた。
マンガは情報量がものすごい多い。
マンガの外側の枠まで、世界観の解説で埋め尽くされている。シビレた。

中でも『アップルシード』は、オタク心をくすぐるモチーフだらけ。
第五次大戦の廃墟無人都市、全身が有機質サイボーグ化されたブリアレオス、巨大都市オリュンポスと人造人種バイオロイド。ぞくぞくしますね。
ロリババア(中身はおばあさん、外見は少女)の人美や、ネコと人間のハイブリットバイオロイドのアルテミスとか。今も余裕で萌えられる。
設定は複雑中の複雑。ストーリーも極めて難解。それを脳みそフル回転させて読むのが、楽しい。
だから五巻ずっと待ってるのです。でも連載は凍結されました。
残念。

『アップルシード』は何度かアニメ化されています。
一番最初は1988年のOVA版『アップルシード』。なぜかちょっと、実写版も入ってます。
最も有名なのは、2004年の『APPLESEED』
主題歌であるBOOM BOOM SATELLITES『DIVE FOR YOU』との組み合わせがいいんだ。
映画館に重低音が、響いたね。
予告編解禁、映画「アップルシード アルファ」の映像が凄すぎるがゆえに困惑
日本のセルアニメ風タッチを、3DCGで作った独特な映像。

キャラクターデザインがマンガとは大きく異なっています。
日本アニメーション的な、3DCG作品。アクションと表情(!)はモーションキャプチャー。トゥーンシェード+モーションキャプチャーの「フル3Dライブアニメ」です。
当時は、特にアクションシーンのリアリティと、セルアニメ的表現の融合が大変話題になりました。

ヒロインのデュナンの派手な動きは、さすがに今のCG技術からみたら限界はあるものの、十分面白い。
その後すぐに2007年に『Appleseed EX MACHINA』が公開。たった3年でとんでもなく3DCG技術は進歩しました。メインテーマがひそかに「HASYMO」名義のYMO三人とか、色々豪華です。

その後2011年、『APPLESEED XIII』がシリーズアニメ+劇場化。コミカライズもされています。
ゲームも、1988年「アップルシード」、1994年「アップルシード プロメテウスの信託」、2005年「APPLESEED THE ONLINE」、2007年「APPLESEED EX」、2008年「APPLESEED TACTICS」と山ほど出ています。

ここまで多様化すると、『アップルシード』のガワだけ残って、解釈はバラバラになりました。
なんせ最初に描かれてから30年。結末も出ていません。多様な考え方が出て当然。

今回の『アップルシードアルファ』は、シリーズの前日譚。
かなり原作に対しては挑戦的です。
まず『アルファ』のスピンオフマンガ描いているのは、『茄子』とか『セクシーボイスアンドロボ』黒田硫黄です。
アップルシードα / 黒田硫黄 - モーニング公式サイト - モアイ
そこ持ってくるの?!
でも黒田硫黄は確かに、ストーリーテリングや設定の作りこみに、士郎正宗イズムの血を引いている、気もする。
泥臭い絵柄が魅力の作者なだけに、ソリッドな『アップルシード』と融合させる発想にはまいった。面白いんだこれが。かわいいんだデュナンが。

今回の『アップルシードアルファ』の予告を見ると、今までの日本アニメテイストを捨て、リアル路線に舵を切っています。
すっごい正直に言うと、ショック
どんなにブリアレオスが惚れるボディで、中田ヤスタカの曲がかっこよくても、ショック。

そもそも士郎正宗作品のよさって、日本アニメ的な絵柄で、サイバーパンクの頂点まで極めていこうとしているところじゃん。
デュナンもさ、強くて美しくてちょっと粗雑で、かつ顔赤らめてピーとかやるヤキモチやきでキュートな女性じゃん。
士郎正宗テイストは、ドイツのアニメ好きテクノミュージシャンのマイク・ヴァン・ダイクがわざわざジャケットを頼んでいたように、日本的サイバーパンクの象徴だったじゃん。
98年だけど。
特典が一巻の表紙のクリアファイルなのに、リアル路線のCG見せられたら、「シロマサ世界と、新しいCG世界、どっちをやりたいの?!」って困惑も、しちゃうのよ。

けれども思い出しました。最初のアニメ『APPLESEED』が上映される前。「2Dアニメじゃないの? 3DCGとかないわー」と言って、指差して笑っていた自分を。
見て、「いいじゃん」と手のひらを返した自分を。

「ゆりかご願望は極言すれば死だ!」
(「アップルシード」2巻より)
昔のシロマサ願望に浸りすぎて死にかけるところだった。
『アップルシード』は、30年経っても新しく広げたくなるだけの作品だ、ということです。

どんなシナリオになるか、まだわかりません。
今回の映画を見た後に「そういう解釈もあるのか! 面白い!」と感じたら、ものすごい勢いで手のひらを返そうと思っています。

(たまごまご)
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