「バブルサッカー」も、今やメジャーな存在となってしまいました。大きなバブルを頭から被ったおかげで足元のボールや周囲のプレイヤーを上手く把握できず、サッカースキルを存分に発揮できなくなる珍競技。
逆に考えると、サッカー初心者にとってすれば好機。どの参加者もフラットな状態で、グラウンドへ臨むことができます。

この効果(?)を理念にまで高めた、ある団体が発足しました。今年4月10日に産声を上げたのは、その名も「世界ゆるスポーツ協会」。コンセプトは「スポーツ弱者を、世界からなくす」だそう。

どうやって、スポーツ弱者をなくすのか? それは、同協会が考案した8種目のスポーツを紹介してからの方がわかりやすいかもしれないです。


ハンドソープボール
手にとんでもなくツルツルなハンドソープをつけて行うハンドボール。ボールを落とす度にハンドソープが追加され、試合が進むほどツルツルになる。
“ハンドソープボール”に“手錠バレー”!? スポーツ弱者を世界からなくす「世界ゆるスポーツ協会」
両手の自由が奪われる「手錠バレー」。

エレクトリック温泉
世界初、温泉をフィールドに裸で行う“のぼせるスポーツ”。腰までお湯に浸かり、温泉で遊べるデジタルコンテンツ(カーリングやエアホッケーなど)で争う。下半身が湯船から出たら、反則。
“ハンドソープボール”に“手錠バレー”!? スポーツ弱者を世界からなくす「世界ゆるスポーツ協会」
世界初の“のぼせるスポーツ”「エレクトリック温泉」。

イヌティメットフリスビー
基本的なルールは「アルティメットフリスビー」と同じ。
フリスビーをパスし合い、相手ゾーンでキャッチしたら得点になる。ただしチーム編成は、人間5人&イヌ2匹。イヌはリードにつながれ、人間と共に動く。人間がフリスビーを持ってもピボットしかできないが、イヌがフリスビーをくわえたら“無敵状態”となり、誰も触れることはできない。得点は、基本的にイヌが担当する。
“ハンドソープボール”に“手錠バレー”!? スポーツ弱者を世界からなくす「世界ゆるスポーツ協会」
リードでつながったイヌと共に! 「イヌティメットフリスビー」。

手錠バレー
手錠を付け、自由を奪われながら行うバレーボール。
スパイク含め、両手でのプレイが余儀なくされる。
ゾンビサッカー
ゾンビのコスプレをし、全員目隠しをした状態でフットサルを行う。ゾンビのように手を前に突き出し、ボールを追い求めて呻き声をあげながらゆっくり歩き続ける。ボールを持ったら、音を頼りにゴールまで向かう。
使われるボールは特別仕様。蹴られると「きゃああああ!!!」という悲鳴が上がるので、この声を頼りにプレイすること。

“ハンドソープボール”に“手錠バレー”!? スポーツ弱者を世界からなくす「世界ゆるスポーツ協会」
ゾンビになったつもりでゆっくり動け! 「ゾンビサッカー」。

パチンコバスケットボール
基本的には3on3と同じルールだが、競技のために考案された“専用ゴール”が用いられる。シュートを打つとそのボールはいくつもの釘にバウンドしながら穴(リング)に向かって落ちていき、3つ設けられた穴(ゴール)のどれに入るかによって得点は異なる。

FACING(フェイシング)
顔の筋肉をフル活用し、渾身の変顔を披露。その顔は最先端の顔認証技術によって「真顔とどれだけかけ離れた顔を披露できたか」測定され、点数化される。

バブルサッカー
過去コネタを参照。
“ハンドソープボール”に“手錠バレー”!? スポーツ弱者を世界からなくす「世界ゆるスポーツ協会」
おなじみ「バブルサッカー」。

これらの競技、バブルサッカーを除く全てが同協会によって考案されたものだそうです。
確かに各々の体力やスキルがリセットされ、“スポーツ弱者”がなくなりそうだ。
「意図したわけではないのですが、結果的にどの種目も男女混合で行うことが多いです。そこに子供が混ざる時もあるし、車いすの人や、時には視覚障がいを持つ方が混ざることもあります。ゆるスポーツは『仲間はずれをつくらない』を大事にしており、どんな人でも楽しめる競技ばかりを用意しています」(「世界ゆるスポーツ協会」会長・澤田智洋氏)

ここで、ゆるスポーツ協会設立の経緯と目的をご紹介しましょう。
「僕は、運動が苦手でした。体育の時間が本当に嫌でした。
スポーツから疎外されているような気にさえなっていました。(中略)ふと思いました。新しいスポーツジャンルを、創れないだろうか? 僕みたいな運動音痴の人も、それこそお年寄りも、障がいを持っている人も。みんなができるスポーツを創る。仲間はずれをつくらないスポーツを創る。色んな人たちが混ざり合って、笑いながらできるスポーツ。(中略)超高齢社会で『スポーツ弱者』が多い日本だからこそ、新スポーツを世界に普及させていく。その名も、ゆるスポーツ」(協会HPから)
ちなみにゆるスポーツ8種目を開発する過程では「スポーツクリエーター×アスリート」「スポーツクリエーター×テクノロジスト」「スポーツクリエイター×障がい者」といった組み合わせが顔を揃え、両者の話し合いによりアイデアが搾り出されたそう。なるほど、そこには強者も弱者もなさそうだ!

ちなみに発足して間もないものの、同協会の活動実績はかなりのものです。
「ハンドソープボールは今までに4度の体験会を行い、スポーツとして成立させました。手錠バレー、イヌティメットフリスビー、エレクトリック温泉、ゾンビサッカーに関しては体験会をそれぞれ1回ずつ行い、手錠バレーは既に完成の域です。それ以外はやや改良の余地が残っており、現在はスポーツ用品の改良等に取り組んでいます」(澤田会長)
またFACINGとパチンコバスケットボールは未だ用具の製作途中だが、「うまくいく勝算はあります!」と澤田会長は自信を隠さない。

そんな「世界ゆるスポーツ協会」、すでに大勢の賛同者を獲得していました。
「『これだったら自分でもできそう!』というご意見を、数多くいただいております。僕自身“スポーツ弱者”で、マラソン大会やフットサルなどイケてる人がわんさか集まるような場へは、今でも行けません。でも『僕らのような人ができるスポーツを創りたい』が事の発端なので、そういった意見は本当に嬉しいです」(澤田会長)

そして、今後について。
「実は水面下で、新たな15種目の開発を進めています。また様々な方から『一緒にスポーツを創ろう』とオファーもいただいており、さらに種目が増えることが予想されます。多少は淘汰されていきながら、結果的に100年続く『ゆるスポーツ』を一つでも増やしていきたいと考えています」(澤田氏)

同協会は、決して「優劣を付けない」と言ってるわけじゃない。「ゆるスポーツ」のおかげで、スポーツ弱者が忘れかけていた“喜び”を思い出す。夢のある話だし、ゆるスポーツの100年後が楽しみです。
(寺西ジャジューカ)