巨大な氷の器に注ぐ「逆アイスコーヒー」 日本初の会員制喫茶店で愛された味

夜になると忍び寄る秋の気配を感じるものの、昼間はまだまだ暑い日が続く。先日、神戸でコーヒーの中に氷が浮かんでいるのではなく、氷で作った器にアイスコーヒーが入っている「逆アイスコーヒー」(!?)を発見した。


三宮にある「北野坂にしむら珈琲店」が毎年、7月~8月の夏季限定で出しているもので正式には「氷の器アイスコーヒー」といい、1杯1600円とアイスコーヒーとしては注文するのに勇気がいるお値段だが、眺めるだけで涼しげ~。

巨大な氷の器に注ぐ「逆アイスコーヒー」 日本初の会員制喫茶店で愛された味

同店は北野坂を異人館に向かって歩く途中にある、蔦のからまる瀟洒な洋館の1階。ちなみに、2階はフレンチレストランとなっている。

巨大な氷の器に注ぐ「逆アイスコーヒー」 日本初の会員制喫茶店で愛された味

一歩入ると、アンティークのオルゴールやホールクロックがある優雅な空間が広がり、暖炉の上にはマリー・ローランサンの絵が! それもそのはず、このお店、1974年の開店時は日本初の会員制喫茶店で、長らく著名人や文化人といったセレブリティが優雅に語らうサロンとして愛されていたのだとか。その後、1995年の阪神大震災を機に、一般人も利用できるようになったという。

巨大な氷の器に注ぐ「逆アイスコーヒー」 日本初の会員制喫茶店で愛された味

ちなみにアイスコーヒーは、スタッフの杉岡俊彦さんによれば、「会員制の時代からすでにあったと思われます」とのこと。
20年以上前から愛される 神戸の夏の風物詩だが、当時のスタッフが現在はもうおらず、開発秘話はエピソードは謎に包まれているとのこと……。会員制時代からのお客様はもちろんだが、最近では若者が見た目のインパクトから注文することも増えたらしい。

氷がひび割れないように工夫


なお、この器は氷屋さんが正方形にカットしたものを、同店のスタッフがひとつひとつノミで掘っているそうで驚きだ。7月のシーズンに入る前に、大量にストックしておくとのこと。
「時間を計ったことはありませんが、ひとつ仕上げるのに10~15分はかかっていると思います。氷が溶け出さないうちに作業しないといけないので、スピードが大切です。
また、氷にひびが入るとコーヒーが漏れることがありますので、非常に気を使いますね」
と杉岡さん。

また、氷の器を冷凍庫から出してすぐにコーヒーを注ぐと、「ピキッ」と音がしてひびが入ってしまうことがあるので、10分くらい常温においてからコーヒーを注いでいるという。見た目の清涼感だけでなく、背景にはきめ細かな心遣いがあるのだなあ……と感心。気になるオーダー数だが、平均すると1日1杯、2カ月で約60杯のオーダーがあるという。

なお、「にしむら珈琲店」のアイスコーヒーは150ccのコーヒーに対して、 ティースプーン2杯程度の砂糖があらかじめ入っているのが特徴。かなり濃厚な甘味とコクがあり、アイスであってもおいしく飲めるよう工夫しているそうだ。
なお、砂糖抜きのものもあり、注文時にどちらかを選べるようになっているので、ブラック党の人も安心だ。

夏の日差しが氷の器にキラキラと反射するのを眺めつつ、静かに本でも読むひとときは格別。8月末までなのでカウントダウンが始まっているが、皆さんも楽しかった夏の思い出を振り返りつつ味わってみてはいかが?
(野崎 泉)