今年30周年を迎えた『スーパーマリオブラザーズ』。横スクロールアクションゲームの元祖であり、その後のゲームの歴史を変えた偉大なる作品だ。
日本国内のみならず海外でも大ヒットを飛ばし、「世界一売れたゲーム」としてギネス認定もされている。
その絶大な人気と知名度から、93年にはハリウッドが実写映画化しているのを覚えているだろうか?
その名も『スーパーマリオ魔界帝国の女神』。オリジナルファミコン版のリメイクも収録したスーパーファミコンソフト『スーパーマリオコレクション』が発売された時期の出来事だ。

マリオ役はトム・ハンクスの予定だった?


2度のアカデミー賞に輝いた名優ダスティン・ホフマンは、いずれ映画化の暁にはスーパーマリオを演じたいと思っていたそうだ。
しかし、実際に映画の企画が立ち上がった際に任天堂が指名したのは、映画監督も務めるコメディが得意な俳優・ダニー・デビート。シュワちゃんと凸凹兄弟を演じた『ツインズ』や、怪人ペンギンを熱演した『バットマンリターンズ』が印象深い、丸っこいフォルムのイタリア系アメリカ人だ。確かにマリオっぽい風貌であるが、スケジュールの都合もあってご破産に。

そんな中、プロデューサー側が選んだのがあのトム・ハンクス!
だが、185cmの長身ではマリオとしてのキャラクターに無理があったか、最終的に任天堂が選んだのは『ロジャー・ラビット』や『フック』を代表作に持つボブ・ホスキンスであり、ここからスーパーマリオ実写映画の「悪夢」はスタートするのであった……。
「生涯最悪の作品」スーパーマリオ実写化の"悪夢"
ボブ・ホスキンス演ずるマリオ

トム・ハンクスだったらどんなマリオになっていたのか興味深いが、もしオファーを受けていたら、時期的にも『フィラデルフィア』『フォレスト・ガンプ』での2年連続アカデミー主演男優賞はなかったかも知れない……?

ゲームと違ってリアルでグロかった映画マリオ


主役のキャスティングにこれだけ難航しながらも、映画での実質的な主人公はルイージ。そして、マリオ兄弟は破産寸前の配管工という設定だ。リアルすぎるというか、夢のない話。しかも、ボブ・ホスキンスのマリオはハゲてるし……。
「生涯最悪の作品」スーパーマリオ実写化の"悪夢"
飛び出る舌がグロすぎる

名優デニス・ホッパーが演じるクッパは、ゲームでは亀なのに映画ではティラノサウルスから進化した恐竜帝国の魔王という設定。クッパの甲羅のようなパンチの効いた髪型で、ビローンと飛び出る舌もグロい有様。
ヨッシーに至っては、あまりにリアルすぎる単なる恐竜で、可愛くないどころか恐怖をあおる事必至!
キノコでのパワーアップ的展開はないし、ゲームの醍醐味でもあるジャンプ力は何か変なシューズでカバーしているが、もはやドクター中松の発明品にしか見えないのであった。

マリオの映画化 最悪の結果に


大人向けにするか子供向けにするかを巡り、撮影の間中に渡って監督たちと制作会社側は揉めに揉めていたらしい。それに嫌気が差したマリオ&ルイージは、うんざりする撮影を乗り切るためにスコッチを引っ掛けていたんだとか。パワーアップアイテムが「酒」のマリオブラザーズ、嫌すぎる……。
「生涯最悪の作品」スーパーマリオ実写化の"悪夢"

ボブ・ホスキンスはこの映画のことを、「生涯最悪の作品」「ギャラを投げ返したいぐらい」とまで語っているが、撮影途中までホスキンスはマリオの存在も知らなかったそうだ。
そんな映画が成功する訳もなく、制作費は50億ドルも掛かっているが、日本での配給収入は3億円止まりの惨敗でゲームオーバー。

コンティニュー(続き)がなくて、本当に良かった!
(バーグマン田形)
『スーパーマリオ 魔界帝国の女神 [DVD]』