
55話は、こんな話
正吉(近藤正臣)が隠居すると言い、榮三郎(桐山照史)が跡を継ぐことになった。あさ(波瑠)は45年ぶりの襲名披露の準備をすることに。これは加野屋の奥さんとしてのはじめての大仕事だ。
濃密なのにオラオラ感がない
冒頭、先週のダイジェストがざっと流れる。
各々の登場人物のいい台詞でつないでいくと、みんなに見せ場があり、ものすごくたくさんのイベントが起っていて、改めて九州炭坑編が濃密だったことを思わせる。佐々木善春の編集センスによるところも大きいとはいえ、これだけのストーリーを書いたのは大森美香。彼女の巧さは、情報量がてんこもりにもかかわらず、どうだすごいだろ! 的なオラオラ感が微塵もなく、シルクの手触りのように優雅に描いていることだ。
さらにすごいのは、はじめての朝ドラ「風のハルカ」(05年)でもすでにその才能は発揮されていること。例えば序盤、まず主人公親子が東京から九州に移住してきて、父は移住する気満々だが、母親が東京の仕事をとるか九州に残るか迷い、そして時が経ってーーという流れをものすごく手際よく描いていたことに感動を覚えたものだった。
かけるところにはお金をかける
鬼才感すら漂う優美な筆さばきは、このドラマで強調する「女性の柔らかさ」にピッタリ。
こうして「あさが来た」もいよいよ第10週に突入。
自他共に男のように思えるあさだったが、奥さんとしての活躍を見せることになりそう。
自分の着物は新たらしくしなくとも、襲名披露のお料理にはお金をかけようとするあさ。かけるとこにはお金をかける。
よの(風吹ジュン)もようやく、あさにも「女の勘がある」と認めはじめた。
もしかして、正吉が隠居してよのとの時間をもちたいと言ったのは、よのの
悪気ない姑気分をあさから逸らそうということなのかも? と想像してしまった。
一方、はつ(宮崎あおい/崎の大は立)のほうは、惣兵衛(柄本佑)が活躍しはじめたものの、まだまだ菊(萬田久子)がごねている。
今週も、あさとはつは、姑との戦いに頭を悩ませそうな予感を漂わせる月曜日。
(木俣冬)
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