韓国では歴代大統領の住んでいた家・生まれた家が、文化財や観光スポットとして公開されていることがよくある。
でも一番気になるのはやはり、現職の朴槿恵大統領のお住まいではなかろうか。大統領官邸である青瓦台(チョンワデ)はツアーで敷地まで入れるが、さすがに居住空間までは見ることができない。しかし、朴槿恵が子供のころ過ごしたという家ならお宅訪問が可能だ。今年3月に一般公開が始まった、ソウル市新堂洞に位置する「朴正煕家屋」へ、ワクワクしながら出かけてみた。
朴槿恵が6歳から9歳まで居住
朴正煕家屋は、2号線「新堂」駅から徒歩15分ほど。下町風情あふれる景色を横目に坂道を登っていくと、塀に囲まれた平屋が現れた。これがかの朴正煕家屋である。玄関にかけられた「朴正煕」の表札がまぶしい。
おさらいしておくとこの家は、朴槿恵の父である朴正煕元大統領が、大統領就任前の1958年5月から1961年8月にかけて家族と過ごした住まいだ。朴正煕が1961年の5・16軍事クーデターを計画した場所として知られ、韓国現代史の重要な現場として文化財登録されている。
1952年生まれの朴槿恵がこの家に住んでいたのは、6歳から9歳までのこと。
「失礼します!」と声をかけながら門をくぐると、朴正煕・陸英修夫婦の立て看板が、庭でお出迎え。思わず一緒に写真をパチリ。
かつての玄関は管理人室となり一般公開されていないため、庭から応接室へとお邪魔する。VIPの家とはいえ、天井も高くなく質素な印象。何よりこの、ドラえもんやサザエさんに出てきそうな、どこか懐かしい感じはなんだろう。
それもそのはず、この家はもともと、1930年代後半(日本統治時代)に建てられた「文化住宅」。西洋の住宅の仕組みを取り入れ改良された文化住宅は、ソウルでは1920年代から建てられ、1930年代にはここ新堂洞に文化住宅団地が生まれた。ただし、周辺で残っている文化住宅はここだけだという。
隣の部屋は、夫婦が使っていた6畳ほどの寝室だが、こちらはまさに韓国の家といった雰囲気だ。床は油紙が張り巡らされたオンドル仕様。窓の建具も韓国的なデザインとなっている。
そしてその隣にある、約4畳半のお部屋が子供部屋だ。オンドル床の、シンプルで小さな部屋だが、ここで幼き槿恵ちゃんが、机でお絵かきしたり床に寝転がったりしていたのだと考えると、プレミアム感たっぷり。彼女は天井を眺めながら何を思ったのだろう? 壁には幼き日の朴槿恵の写真が掲示されており、想像をかきたてる。
子供部屋を出ると、今度は廊下が現れた。この廊下の存在も、非常に日本の住宅っぽい。廊下を通じて、台所やトイレ、先ほどの応接室へとつながる構造となっており、そして廊下の突きあたりにあるのが、朴正煕の書斎だ。こちらもびっくりするほど質素で、彼の人となりを思わせるものがある。
お宅訪問はこれで終了。5分ぐらいで見学できる、あまりに素朴な住まいであった。とはいえどこかに香る気品は、さすが大統領のお宅。
「う~ん、こんな家に住みたいなぁ」とつぶやきながら大統領の家を後にした。
(清水2000)