
72話はこんな話
正吉(近藤正臣)のお葬式が終わると、東京に事業で行っていた五代(ディーン・フジオカ)が訪れ、故人を忍ぶと同時に、あさ(波瑠)のことを気遣う。
その後、あさが大阪と炭坑とを行き来する日々を送っていると、五代は、あさを東京につれていきたいと、新次郎に申し出る。
新次郎、いけず
正吉の、最後まで人に弱っているところを見せず、プライドを保ったまま亡くなるというダンディズムみたいなものと、家族愛、夫婦愛などが、12週の最大の見どころかと思っていたら、それを覆したのは、新次郎と五代のやりとりだった。
やって来た五代。客間で向き合う五代と新次郎。
正吉のことを惜しむ五代。父のことを語る新次郎。
「奥様もさぞお気落ちのことでしょうな」と心配したあと、「それで、他の皆様は?」とさらに訊ねる五代。
ここで、ジャーンジャジャジャジャ♪ といつも五代登場のときにかかるいさましい音楽(71話であさの場面でもかかった)がかかり、新次郎が「ほかの皆様いうても五代さまが気にしてはりますのは、きっと、あさのことだすわな」と返す。
妙にニコニコしながら、あさについて語る新次郎が、あまりにいけずに見えたため、最初の五代の「奥様も・・・」も、新次郎の奥様=あさ のつもりだったのが、新次郎がわざと勘違いしたふりをしたのではないかと穿った見方をしてしまったではないか!
それは考え過ぎと思うが、新次郎対五代のやりとりは、男を取り合うふたりの女みたいなピリピリ感。男同士でもよく、ひとりの女性をめぐって「おまえがそんなだと俺が奪うぞ、いいのか」みたいに挑戦的なことを言う場面があるけれど、五代と新次郎の場合、妙に女性的(一方的に新次郎のほうがだが)。
あさが、男性のものと思われていたことをやっていく一方で、新次郎は、女性のものと思われていた行動をしていく。この逆転が面白い。
噂の八っちゃん(JEFFI)は、妻子持ち(しかも子だくさん)だったことが判明。加野屋をのぞいていた人物はまだ他にいて・・・。
なんなんだろう、八っちゃんのエピソード。正吉が亡くなるエピソードだけでなく、もっとたくさんの人に楽しんでほしいという思いからか、いい話になり過ぎないようにノイズを入れているのか。
八っちゃんとふゆ(清原果耶)の可能性はあっという間に消えたが、うめ(友近)と雁助(山内圭哉)がいる。雁助からの手紙を、縁側で足ぶらぶらさせながら読んでいるうめが、娘さんという感じで愛らしい。
それにつけても、亀助(三宅弘城)にも愛を。
(木俣冬)
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