
85話はこんな話
榮三郎(桐山照史)が嫁さち(柳生みゆ)をもらい、あさ(波瑠)は「若奥さん」から「奥さん」に昇格する。
仕事に励むあさ。いよいよ銀行をつくろうと目論むが、雁助(山内圭哉)は頑として首を縦に振らない。
新ちゃん 友ちゃん って・・・
子供は親を見て育つもので、数えで6歳になった千代は、ままごとでも働くあさの真似ごとをし、母の口癖だった「なんでどす」まで受け継ぐ。
子供の眼からも仕事に一生懸命に見えるあさは、雁助や榮三郎にどれだけ反対されても、銀行がこれからの新しい商売になることを信じて、ひたすら学び続ける。
あさは、五代(ディーン・フジオカ)がつくった大阪商業講習所に通うが、そこには彼女以外、おなごの生徒がいない。
男女が席を同じくすると風紀が乱れるという考えがいまだにはびこる中、あさだけが乱れに巻き込まれず、五代に対して一切なびかない姿勢を貫いている。
ふゆの妾問題も美しくまとめ、新次郎も不自然なまでに徹底して操を妻に捧げている。あんなに色男で芸事が好きなのに、いっさい他の女の気配を見せないなんて。仮に、隠すことに長けている設定だとしても度が過ぎないか。
こういう描写にせざるを得ないのは、大衆的なテレビドラマの優等生を求められているからなのだろうが、さすがにちょっと守り過ぎのような気もしないでない。
その物足りなさを埋めるのは、五代と新次郎のやりとりだ。
五代が、新次郎に「友ちゃん」「新ちゃん」と呼び合おうと言いだすくだりは、
微笑ましく見せながら、新次郎が単なるあさ一筋の真面目な人ではなく、何か秘めているのかと思わせると同時に、五代のはかりしれない孤独をも感じさせる。
五代が史実どおり、そろそろ亡くなる(史実では50歳で亡くなっている)のは公表済み。原案の「土佐堀川」に書かれた五代の最期を読んでも胸が痛くなるし、盟友・大久保利通を失い、ひとりでいろいろ抱えながら、それでもずっと笑顔を絶やさずスマートにふるまってきた五代は、新次郎以上に仮面をかぶっているのかもしれない。
あさは、こんなふたりに守られて、新しい女の道を邁進していく。
(木俣冬)
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