朝ドラ「あさが来た」(NHK 月〜土 朝8時〜)1月14日(木)放送。第15週「大阪の大恩人」第88話より。
原案:古川智映子 脚本:大森美香 演出:佐々木善春
わてもまだ裸のつきあいまではしてへんさかい「あさが来た」88話
イラスト/小西りえこ

88話はこんな話


新聞によって、五代はすっかり悪徳商人のレッテルを貼られてしまう。結果、北海道との取引も取り消しになり、五代は大阪商法会議所の会頭を辞任する決意をする。

無理しす過ぎは身体に毒だす


「(五代とは)わてもまだ裸のつきあいまではしてへんさかい 見た事あれへんよってな。」
なに言っちゃってるんだ、新次郎(玉木宏)。
千代が、世間で悪者呼ばわりされはじめた五代について、彼のお腹は黒いのか? と幼いゆえに素朴な疑問を投げかけたときの答えがこれだ。
新ちゃん、友ちゃん、どころでなく、裸のつきあい・・・するようになったらどうしよう〜〜とか妄想している場合でなく、炭鉱事故以来のシリアス回だ。
どうやら政治の争いに巻き込まれてしまったらしい五代。かなりのピンチのうえに、体調も悪くなってしまう。
同じ頃、うめ(友近)もあさ(波瑠)について九州に行って帰ってくるなり、ふらっと倒れてしまう。
無理するな、と心配する雁助(山内圭哉)。
頑張り過ぎると、どこかにほころびが出てしまうもの。それに、ドラマがはじまった頃、瑞々しいお年頃だった登場人物たちも、みんなそれなりに年をとり、だんだん無理が効かなくなっている。うめと五代の体調エピソードは、時の流れを改めて認識させる。
ところが、ひとり、あさだけはぴんぴん。
朝ドラのヒロインはたいてい丈夫で、あさもスペシャル級に健やかに、やりたいこと好きなように自由にやっている。

それを新次郎は「みんなを守るために戦っている」「ひとのためになるのは大事なこと」と娘・千代に言い聞かせる。
本来なら、仕事に夢中で家庭を省みないお父さんのことを、お母さんがそんなふうに子供に説明するところだが、「あさが来た」では反対だ。
どっちにしても、夫婦がかばい合って、子供には親のいいところをちゃんと伝えるというすばらしい教育。出来た新次郎のおかげで、千代はきっと理解ある子に育つだろう。
しかし、目下、心配なのは、五代のことだ。最期がわかっているからこそ、余計に辛くて辛くて。そう思うと、「裸のつきあい」みたいな暢気な台詞があって救われた。
(木俣冬)

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