「食べ物を粗末にするな!」「見ているだけで気分が悪い」「何がしたいんだ?」――。しばしばこのような非難を浴びながらも、やはり廃れることのない大食い文化。
大食いといえば、1990年代に『TVチャンピオン』(TV東京)で活躍した元祖「大食い女王」の存在を忘れられない人も多いだろう。「飢えるジャンヌダルク」と呼ばれたその女性こそ、赤阪尊子である。
男性のような食べっぷり、赤阪尊子
1990年代といえば、大食い番組が一斉を風靡していた時代だ。TVをつければ、フードファイターたちが胃袋に大量のわんこそばを流し込む映像や、水を口に含みながら熱いラーメンを何十杯も食べる彼らの姿を見ることができた。
なかでもそのキャラクターが印象的だったのが、当時はまだ珍しかった女性フードファイターの赤阪である。ギャル曽根やアンジェラ佐藤など、後続の女性フードファイターの先駆け的な存在として、赤阪が大食い界に残した功績は大きい。その食べっぷりといえば、ときに男性を凌ぐもので、赤阪が得意とする甘味系のバトルでは無類の強さを誇っていた。
メガネがラーメンの湯気で曇ったり、汗が丼に滴り落ちたり、時には食べ物にメガネを落っことしたり……。とにかく赤坂は「ファイター」という名にふさわしい女性だったのだ。
とにかく優勝しまくり
そんな赤阪の存在を世に知らしめたのが、あの「TVチャンピオン」である。1994年に放映された「TVチャンピオン第4回全国大食い選手権」での優勝をきっかけに、1995年、1996年、1997年まで毎年同番組で優勝を果たしている。惜しくも優勝を逃した1999年以降も、たびたび準優勝を獲得するなど、「女王」としての貫禄は健在だった。
2000年代に入ってからは、番組のタイトルに「TVチャンピオン 打倒!!赤阪 甘味大食い女王選手権」と名前が冠されるようになるなど、彼女を倒すことに奮闘する他のフードファイターたちの姿も目立つようになる。
この頃、すでに赤坂は大食い界のレジェンドとなっていた。
その記録もすごい
もちろん、「女王」の称号をつかみ取っただけはある。彼女が叩き出した大食い記録は尋常ではない。1994年に放映され、はじめて優勝をつかんだ「TVチャンピオン・第4回全国大食い選手権」では、なんと30分間で寿司を62皿完食。
その後は、江戸雑煮60杯(1996年)、おしるこ36杯=7.2kg(2002年)を完食している。また甘味に挑戦する際は、水に砂糖を混ぜて飲むことで食欲増進を図るという、赤阪流の独自のワザも披露された。
ギャル曾根以降、いまでは細身で容姿端麗な美女系フードファイターがもてはやされる傾向にある。しかし、筆者が「ファイター」と聞いて思い起こすのは、やはり絶対的女王・赤阪の猛烈な“闘いっぷり”なのである。
(野中すふれ)