生命創造は人類の悲願であり、そのために人工知能は生み出され、クローン技術は発展してきました。多くのSF作家がその先にある「破滅」を示唆しているにも関わらず、その可能性を突き詰めてしまうあたり、人間の業の深さを感じずにはいられません。
革新的なロボットペット登場 未来世紀の到来を予感
さて、遡ること17年前の1999年。世紀末を迎えた世の中はこのニュースに、来るべき新世紀が一足飛びでやってきたかのような錯覚を覚えたものです。何かといえば、日本が誇る世界的電機メーカー『ソニー』が、人工知能を搭載した小型犬ロボット「AIBO」を発売したのです。全長約30cm。
「機嫌」「性格」が存在したAIBO
「AIBO」が革新的だった点は、ユーザーとのコミュニケーションを通して成長するようにプログラミングされていたことです。「成長機能」であれば前年の1998年にアメリカで大ヒットし、1999年に日本上陸を果たしたファービーにも搭載されていたのですが、この2種を明確に分けるのは、ファービーが受身なのに対してAIBOが自律型であるということ。
つまり、話しかけたりしなければ反応しないファービーとは違い、AIBOは何もしなくても、こちらに寄ってきたりジャれたりするのです。さらに、「機嫌」「性格」が存在するという、より本物のペットに近いロボットだったのです。
販売開始から20分で3,000台が完売!
こうした今までに例がない、本当に生きているかのような機械仕掛けの命の誕生に、世間は沸き立ちました。特に一部ペット好きからは熱烈な歓迎を受けます。「これでもう、愛犬の死を経験しなくて済む」。
ソニーの修理対応打ち切りによる「死」
しかし、そんな「死なないペット」にも突然の死がやってきます。2005年に製造中止。
終了したサービスのサポートを製造元企業が10年以上続けるというのは、かなり異例のことなのですが、「死なない」と銘打ったソニー自身がAIBOを殺してしまうとは何とも皮肉。これを受けて、千葉県いすみ市の光福寺では2015年にAIBOの合同葬儀が行われ、飼い主たちは神妙な面持ちで手を合わせていたそうです。
こうして「永遠の命をもったペット」という夢は、企業サポートというかなり卑近な理由で成しえませんでした。あれから17年。この課題を解決する完全無欠の愛玩動物は今後現れるのでしょうか。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonよりSONY AIBO アイボ ERS-7 マインド2