コアなところだと、『およげ!たいやきくん』の子門真人が『スターウォーズ』のテーマ曲、羽賀研二が『ネヴァーエンディングストーリー』の主題歌を日本語で歌っています。
『GOLDFINGER '99』も、そんな洋楽を日本語でカヴァーした楽曲の一つ。1999年に、郷ひろみ76枚目のシングルとしてリリースされたこの曲は、色んな意味で話題を呼びました。
複数の女性と浮気したことを自白した自著『ダディ』が話題に
『GOLDFINGER '99』が発売される約1年前の1998年。郷は11年連れ添った妻・二谷友里恵との離婚を発表します。離別の原因は郷の奔放な女性関係。離婚してすぐに発売された自著『ダディ』の中に、その詳細が赤裸々に記されており、当時大きな波紋を呼びました。
結果として『ダディ』は、10万部で大ヒットとされる出版業界においてミリオンセラーを記録。この本が売れに売れた理由は、それまでどちらかというとクリーンな印象で売ってきた郷が、実は不貞行為を働いていたという意外性に、世間が飛びついたためです。
今まで築き上げてきたパブリックイメージを崩してまで、自身のプライベートを切り売りする姿勢に幻滅したオールドファンも多かったはず。かくして、二人の娘の養育費も搾り取られたヒロミ・ゴーは、方向転換を余儀なくされたのです。
『GOLDFINGER '99』がヒット! 渋谷のゲリラライブで警察沙汰になる騒動も
そんな時期を経てリリースされたのが『GOLDFINGER '99』です。プエルトリコの歌手、リッキー・マーティンの『リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ』に、語感重視で和訳する気ゼロの日本語をあてがったカヴァー曲でした。
90年代中ごろまで続けていた郷の“オトナのバラード路線”とは全く異質の、開き直りとカラ元気、ヤケクソ感全開で歌われたこの曲は、世紀末日本の空気に何となくマッチし、結果、40万枚のスマッシュヒットを記録。
プロモーション目的で渋谷駅前を無断占拠したゲリラライブの一件も、郷のヤケクソ感を引き立てる、ある種、スパイスのような役目を果たしました。刑事事件となった後の顛末も含めて、今振り返ると、何とも巧妙に仕組まれたPR活動だったと理解できます。
この郷のブレイクにあやかろうとしたのか、かつての新御三家、西城秀樹は、スペインの歌手エンリケ・イグレシアスのカヴァー曲『バイラモス』、野口五郎はサンタナのカヴァー『愛がメラメラ』をリリースするも大して売れず。郷の一人勝ちという格好になりました。
『笑う犬の冒険』ではっぱ隊にもなった郷ひろみ
このように、不倫&離婚によるピンチをチャンスに変えて乗り切った郷は、テレビにおいて“ノリが良い大物のオジサン”的ポジションを確立。以後、バラエティ番組に引っ張りだこになります。
特に、フジテレビの『笑う犬の冒険』では、全裸に葉っぱ一枚という姿で踊る「はっぱ隊」のコントに出演し、彼のキャラ変を強烈に世間へ印象付けました。
他にも、自身の女性遍歴を裏表紙に綴ったエッセイや、かつての恋人・松田聖子とのデュエット曲を発表するなど、これでもかというくらい、身を削った芸能活動を展開してみせた離婚後のヒロミ・ゴー。
自らのマイナスイメージを払拭してみせたそのサービス精神を、不倫・浮気で名を汚したにも関わらず、逃げ隠れする昨今のタレントたちは、見習った方が良いのではないでしょうか。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonよりHiromi Go Concert Tour 2015 THE GOLD [DVD]