
■SEKAI NO OWARI/【SEKAI NO OWARI 全国ツアー2016 「The Dinner」】ライブレポート
2016.06.19(SUN)at さいたまスーパーアリーナ
(※画像20点)
観る者のハートを食い尽くすホラーでファンタジックな“The Dinner”ショー!
バンドサウンドからポップネス、そしてヒップホップやEDMなどの世界的なトレンドまでを巻き取って進化し続けているSEKAI NO OWARIの音楽。そんな彼らの最新を魅せる【SEKAI NO OWARI 全国ツアー2016 「The Dinner」】が、さいたまスーパーアリーナで最終公演を迎えた。

西洋の洋館を思わせる、豪奢(ごうしゃ)だがどこかおどろおどろしさが漂う館が構えるステージセットは、薄暗がりの中に静かに浮かび上がり、まるでルネ・マグリット『光の帝国』の絵画のように幻想的だ。
雰囲気そのままに、レトロな雰囲気が漂うオープニング映像が流れると観客の目はくぎ付けに。オペラが流れる中、クラシカルな車に乗り込んだ4人が森深く分け入り、館へと到着。……と同時に、映像からそのまま飛び出たかのように4人が乗り込んだ車がステージに現れ、会場は一気に歓声に包まれた。
黒のタキシードやドレス姿で決めた4人が、最初に鳴らしたのはルーズなラップが新鮮なダークチューン「ANTI-HERO」。正装とヒップホップというギャップがいい。かと思えば、続くエレクトリカルでポップな「スターライトバレード」では夢の世界に。オーディエンスが腕に巻いていたリストバンド型の照明が楽曲と連動して瞬き始め、会場内はドリーミーな星空と化した。
リアレンジを施した「Love the warz」は、暗がりを赤いライトが照らし、ヘビーで強いサウンドとメッセージを視覚でも巧みに見せていた。Nakajinのメランコリックで細やかなアコースティックギターのプレイも秀逸で、Fukaseの叫ぶようなメロディラップの迫力に、聴衆は圧倒されていた。


続くは、森の動物たちにふんしたストリングス隊とSaoriのはかなげなピアノが切ない「Never Ending World」。人の世の常と希望を優しく歌うそのボーカルに誰もが耳を澄ませていた。
冒頭4曲に続いて、SaoriとNakajinが中心となり、ストリングスやバンドとセッションが始まった。美しい音色に、どこかおぼろげな気分になっていた……が、「『The Dinner』へようこそ!」と元気なDJ LOVEのMCが現実に引き戻してくれた。
実はこのバンドセッションは、ツアー最終日のために特別に演奏されたもの。Nakajinが「ファイナルだからスペシャルに(セッションを)やってみました。生楽器を弾く僕とサオリちゃんを含めた8人で演奏しましたが、どうでしたか?」と呼びかけると、Fukaseが「いつ(練習を)してたの?」と不思議顔。メンバーにすらサプライズを仕掛けるあたりも、なんともセカオワらしい。
今度はSaoriがアコーディオン、Nakajinは打楽器を鳴らして「ピエロ」へ。胸がきゅんとするナンバーを厚みあるバンドサウンドが深いものへと昇華していた。続く「眠り姫」はDJ LOVEのダンサブルなビートによって躍動感ある新鮮なナンバーへと生まれ変わったかのようだった。
ノクターン調のピアノに誘われるように、まず男子3人が館の中へ。続いてSaoriが入っていった。
ここで、ライブの恒例になったメンバーを模したパペット劇がスクリーンに映し出された。

館に消えたはずの4人が、突如フロアの通路を歩き始めたためファンは大興奮。ファンに手を差し伸べてタッチしながら、センターステージへ向かうメンバーたち。
ハードなビートと印象的なギターのフレーズに耳を奪われる「Death Disco」に続いて、頭上の巨大なシャンデリアが振り子のように怖いくらいに前後左右に揺れる元で、ファンキーでジャジーな新曲「Monsoon Night」が披露された。
「全部で25公演をやってきました。感慨深いです。200人のスタッフと写真を撮って、しみじみいいチームだと思いました」とSaoriが胸いっぱいに詰まった思いをポロリ。
「もう1曲、リリースされてない曲を聴いてください」と、オーディエンスに二つ目の新曲をプレゼントしてくれた。
全て英詞で、キャッチーな旋律と高揚感漂うEDMを掛け合わせたノリの良い「Mr.Heartache」が鳴り始めると、観客の腕のライトが青、赤、緑と色を変えて輝き始め、息をのむような絶景が広がった。
華やかな瞬きの後は、「SOS」へ。
センターステージからメインステージに歩いて帰る道すがら、Fukaseはゲストを一人客席から選んでエスコートしながら館へと招き入れた。そう、それはきっと彼らにとっての“獲物”に違いない。
ホラー映画さながらの恐怖の音が場内に鳴り響いた後、満足げな4人が再びステージへ姿を見せたのだが、オウム顔のシェフたちも連れ立っていた。


「深い森」で人の闇と光を歌うFukaseのそのすぐ後ろで、実際に肉をフランベ(!)。炎が上がり、肉の焼ける煙りが客席にまで届いていた。ガーデンBBQの準備が進められる中、どこか切ないメロディとバンドサウンドが温かな「幻の命」、オーケストラを思わせるドラマチックなサウンドが華やかな「MAGIC」と、次々に華燭の典は繰り広げられていった。


昨年7月に日産スタジアムで開催した大規模ライブの際、視覚だけでなく嗅覚や触覚にも訴えるライブをしたいとSaoriが語っていたが、まさにそれを具現化したのが今回のツアーなのだろう。
ライブも最終盤が見えたあんどからだろうか、Nakajinがこんなことを言い始めた。
「オープニングの車は毎回僕が運転していました。25公演全て無事に駐車できて本当に良かったです(笑)。
まっすぐな思いとあふれんばかりの感謝の言葉に、みんなが温かな拍手を贈っていた。
「さあ、大合唱しましょう。準備はいいですか!」


大号令のようなNakajinの言葉に合わせて会場が明るくなり、大人気ナンバー「RPG」のイントロが流れ始めた。一人じゃないというシンプルで心強いメッセージを、あの場所にいた誰もが共感していただろう。Saoriの奏でるピアノに寄りかかるように歌うFukaseの笑顔が、それを物語っていた。


そして本編ラストは、セカオワの代表曲の一つ「Dragon Night」。
本編終了に合わせて、館は火に包まれたかのよう赤々と照らされた。主人たちがいなくなった館が静まりかえったのと引き換えに、観客が「スターライトパレード」を合唱して、アンコールをねだりはじめた。
スモークで満たされたアリーナに、レスキュー車のサイレン音がとどろいた。
館の主人たちが再び登壇。「アンコール、ありがとう!」と笑顔で謝辞を述べるFukase。ポップで心がウキウキする「炎と森のカーニバル」が鳴り始め、花火が打ちあがった。再びライブの幕が上がったのだ。
歌いながらセンターステージから降りて、Fukaseは通路を練り歩き始めた。笑顔でハイタッチしたり、握手している姿はなんともうれしそうだ。



ステージに戻ったFukaseがお知らせを発表。
秋には海をテーマにした新曲のリリースも計画しているという。「日本語の曲はすごく久しぶりじゃない?」とFukaseが話しかけると、Saoriから「『プレゼント』があるよ。(忘れちゃったのなら)泣いてるよ(笑)」と突っ込まれる場面も。
何気ない会話から4人の仲睦まじさが伝わって来る。だが、今回のツアーではバンドとして成長するため、コンサート制作のリーダーからSaoriを下ろしたのだとFukaseが明かした。
「『リーダーから下ろそうと思う』とSaoriちゃんに告げたら、怒って部屋に帰っちゃったよね。他にもツアーにはいろんな日があった。男3人で海と月を見ながら風呂に入った日、スタッフ200人と祝杯をあげた日。ある時は、動くのも困難な男の子がライブ後に僕らの楽屋を訪ねてくれて、一緒に『RPG』を歌ったり……。その子が『夢がかなうってFukaseくんが教えてくれたし、こうして夢をかなえてくれたよ』って言ってくれて、その言葉が大きく感じられた日もありました。そして、最終日です。結局、(ライブ制作の)リーダーはSaoriちゃんに戻ってます(笑)。もともとそのつもりでした。Saoriちゃんが『子供たちに夢を与えたい、次の生きる力にしたいんだ』と言った日もありました。今日は来てくれて本当にありがとう……」
ここまで話すとFukaseの目には涙が。それを聞くSaoriの瞳にも涙があふれているようだった。
「生まれてきて、本当に良かった。ありがとう!」
言葉を絞り出すように、心からの思いを吐き出したFukase。会場内がとても温かなものに包まれた気がした。




オールラストに選んだのは、陽気なアッパーチューン「インスタントラジオ」だった。キャノン砲が打ち上げられ、金のテープが舞う終演は、ゴージャスなディナーパーティーにぴったりだ。
登場シーンと同じようにオペラが鳴り響く中、4人は館へと姿を消した。Fukaseが振り返った時の名残惜しそうな横顔が、次にまた会う約束のように見えた夜だった。
(取材・文/橘川有子)
≪セットリスト≫
1. ANTI-HERO
2. スターライトパレード
3. Love the warz -rearranged-
4. Never Ending World
5. ピエロ
6. 眠り姫
7. 生物学的幻想曲
8. Death Disco
9. Monsoon Night(新曲)
10. Mr.Heartache(新曲)
11. SOS
12. 深い森
13. 幻の命
14. MAGIC
15. RPG
16. Dragon Night
<アンコール>
1. 炎と森のカーニバル
2. Fight Music
3. インスタントラジオ
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