脚本:西田征史 演出:藤並英樹
「明日をもっと明るくしてやろう」 これはいい台詞。
94回はかなり気持ちが上向いた。ついに、あの雑誌の表紙が出来上がったし!
着物のように洋服をつくり出す花山(唐沢寿明)。
朝っぱらから小橋家に来たのはミシンが必要だったからで、君子(木村多江)に頼んで洋服をあっという間に縫い上げる。
直線断ちの「簡単でかつ無駄のなさ」は、「とと姉ちゃん」の世界観にも通じるものがある。
和服で洋服は、アメリカに負けたけれど日本人の誇りは捨てないという思いとも、西洋と日本を融合しようというクリエイティビティともとれそうだ。
出来上がったワンピースを着ると、カフェーの女給さんたちが見違えた。
そして、前述の「明日をもっと明るくしてやろう」に──。
小橋家三姉妹と綾は雑誌のモデルになる。市井の人間が着てこそという花山の考えからだが、この4人、市井の人間にしてはかなり華やかである。
緊張してガッチガチの4人を、偶然やって来た水田(伊藤淳史)が意図せずして笑わせる。
「踊りたまえ」と花山が無茶ぶりしながら、撮影しているのだが、モチーフとなった「暮しの手帖」では、松本政利という写真家がレギュラーで撮影を担当していた。
花森をモチーフにした「とと姉ちゃん」の花山は、表紙の絵を描き、常子に見せる。その時の彼のいつもの強気な顔でなく、ややはにかんだような顔だった。女性誌にふさわしい絵だろうかと少々心配だったのかもしれない。
でも常子が「わたしたちが目指す豊かな暮しがここにあるような気がします」と肯定。
良かった、良かった。
ちなみにモチーフになった「暮しの手帖」創刊号の絵は、神戸生まれの花森が少年時代にみた異人館の光景だとか。
(木俣冬)