直木賞作家、朝井リョウ原作のアニメ化作品『チア男子!!』。直木賞作家の作品のアニメ化というのは意外と多く、野坂昭如『火垂るの墓』を筆頭に、宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー』、森絵都『カラフル』、桜庭一樹『GOSICK』、京極夏彦『京極夏彦 巷説百物語』その他などなどの作品名が挙がる。

文学を知らなければ、どうやって人生を想像するのだ(アニメか?)アニメです!「チア男子!!」4話

近年はいずれも直木賞作家である山田詠美、角田光代、山本文緒の3人の作品をアニメ化した『大人女子のアニメタイム』という企画もあった。逆に、2015年に受賞した東山彰良は『NARUTO』のノベライズや脚本を数多く手がけている。

何が言いたいかというと、「文学を知らなければ、どうやって人生を想像するのだ(アニメか?)」と言い放って物議をかもした「人生に、文学を。」という日本文学振興会(直木賞を運営する団体)の広告はおかしくって、文学とアニメは地続きなのである。

くだらない縄張り意識やポジショントークなんかぶち壊せ! というわけで、『チア男子!!』先週放送の第4話は「壊したいもの」。

組体操をするための大事な3要素


男子だけでチアをやりたい! と集まった男子大学生7人組。毎日地味なトレーニングを積み重ねてきたが、そろそろスタンツ(組み体操)の練習へと進むことに。「これでやっとチアっぽくなるな」とはメガネ男・溝口(演:杉田智和)の弁。
4話でようやく本格的なチアの練習が始まるのだから、いかに丁寧に話を積み重ねてきたかがわかる。

チア経験者の翔(演:小野友樹)を中心にスタンツのことを学ぶメンバーたちだが、翔の絵がすさまじく下手なのがご愛嬌。宇宙人の目撃談でこういう絵をよく見る。

小柄なため、トップを任されたハル(演:米内佑希)だが、実はハルは高所恐怖症。スタンツの基礎の技、エレベーター(3人で1人を支えて立つ)で立つことができない。こういう逆チートな主人公って共感するなぁ。


そんな中、女子チアの名門「DREAMS」と合同練習をすることになる。ここで登場するのが美人だけどコワい高城コーチ(演:甲斐田裕子)だ。

高城コーチによる安定したスタンツを行う大切な要素とは「基礎」「技術」「信頼」の3つ。基礎と技術を学ぶのはもちろん、トップに立つにはまわりの人が自分を支えてくれるという信頼を持っていなければいけない。いきなり学校のクラス(つまり寄せ集めのメンバー)で難易度の高い組体操をやらせることが間違いだとよくわかる解説だ。

レベルの差を感じて、打ちひしがれつつ「例の屋上」(ハルの家)に集まって反省会をする7人。
それでも信頼の大切さを知り、再び挑戦しようと意気上がる。立ち直りの早さが若さだと思う。いいなぁ。チーム名を決めようと話し合い、発起人のカズ(演:岡本信彦)が提案したのが「BREAKERS」だった。OPにもEDにも出てくるのに、チーム名が出てくるまでまるっと4話かかったのね。

「壊そう! 無理だって言うヤツらの常識と、俺たち自身を!」
「壊す……BREAK……BREAKERS!」
「よし、やるぞ! この7人で壊そう!」

『チア男子!!』は地に足のついたお話


4話でようやく本格的なチアの練習が始まった『チア男子!!』。
チアもスポーツの一種だが、毎回クライマックスにバトルがあるわけでもなく、「勝った!」「負けた!」と騒ぐわけでもない。ここから練習が激しくなるかと思えば、ハルはバイトを始めてしまった。本当に地に足のついたお話だと思う。

じっくり話を進めている感じがするのは、小説が原作だということも関係があるだろう。毎回何らかのクライマックスや「引き」が盛り込まれているマンガに比べて、小説はロングスパンでお話やキャラクターが構成されている。これはドラマにも言えることだ。


ごく自然な会話の中から、少しずつそれぞれのキャラクターが抱える「壊したいもの」が見え始めてきた。そうか、溝口は名言を言うことで本音を隠しているのか……。このあたりはシリーズ構成・脚本の吉田玲子、同じく脚本の國澤真理子の技が光る。

こうやって話をじっくり組み立てていくアニメが増えてきたということは、観る側も成熟してきたということだろう。『チア男子!!』の試みが成功すれば、今後直木賞作品や芥川賞作品のアニメ化がもっと増えるかもしれない。文学賞だからどうということではなく、要するに面白さの種類が増えていけば良いのだ。


さて、本日放送の第5話は「LET’S GO BREAKES!」。いよいよBREAKERSが学祭の舞台に立つ! 男子たちがステージで乱舞する様を見届けよう。ゴー・ファイ・ウィン!
(大山くまお)