4年に一度の夏季オリンピックが開催されている。さて、今年で連載40周年を迎える「こち亀」こと「こちら葛飾区亀有公園前派出所」には、五輪の開催年にしか登場しないキャラクターが存在する。
それが日暮巡査だ。

4年に一度登場する「日暮熟睡男」


本名を日暮熟睡男(ひぐらしねるお)といい、当初は1日16時間寝る生活を送っていたが、徐々に睡眠時間が長くなり、4年に1度しか起きなくなる。それでもクビにならないのは、超能力があり未解決事件の捜査に役立つためだ。

日暮が漫画に初登場したのは1980年のモスクワ五輪が最初であり、以降4年ごとに登場し続けている。日暮が起きると、寝ていた4年間にあったことを両さんから説明され驚く浦島太郎シーンがおなじみとなっている。そこで、日暮の登場回から激動の1990年代をふりかえってみたい。

1992年 バルセロナ五輪


1992年はバルセロナ五輪が開催された。水泳の平泳ぎ200メートルで14歳の岩崎恭子が金メダルを獲得し話題となった。

日暮はコミックス81巻の「忘れて!日暮くん…の巻」に登場する。両さんが、日暮から預かっていた4年分の給料1500万円が入った預金通帳を競馬で使い込んでしまい、それを隠し通そうと、あの手この手で日暮を眠らせようとする話だ。

覚醒した日暮は腹をすかして外へ出るが、ジュースが100円でないことに腹を立て自販機を破壊。消費税を取ろうとする店員を「嘘つき」呼ばわりする。1988年から4年間にわたり寝ていた日暮は、消費税導入(89年)と、それにともなう缶ジュースの値上げを知らなかったのだ。

さて、預金通帳の話を切り出そうとする日暮に両さんは、昭和から平成への移り変わり(89年)ドイツ統一(90年)、宮沢りえのヌード(91年)、湾岸戦争、ソ連崩壊(91年)など、4年間のビッグニュースを次々と伝えることでごまかそうとする。

そして睡眠薬を飲ませ、なんとか日暮を眠らそうとした両さんだったが、ついに給料の使い込みを知られてしまう。怒りの日暮に対して、「ちょっと資産運用したらバブルが崩壊してなくなってしまった」と時流を反映したもっともらしい言い訳をつけたところで話は終了する。

1996年 アトランタ五輪


1996年にはアトランタ五輪が開催される。この大会ではサッカー日本代表が、強敵ブラジルに勝利しマイアミの奇跡と呼ばれた。

日暮は100巻の「日暮巡査の潜在能力!?の巻」に登場する。例のごとく日暮を起こしに寮へ向かう一行。そこには別の人間が住んでいた。
実は一時的に、寮の外に設置されたカプセル部屋に移していたのだ。カプセルは粗大ごみに出され、東京湾岸の埋立地に投棄済。日暮が眠る上にはすでにホテルが建っていた。そこで、超金持ちの中川が土地とホテルを買収し、なんとか日暮が掘り起こされる。

ところで、日暮が寝ていた4年間の間にウィンドウズ95が発売(95年)され、一般家庭へのパソコン、インターネットの普及率が上昇していたこの時期。
さらには、「こち亀」自体もアニメ化(96年)され、日暮は早くも第7話に登場している。
95年をまたぐ4年間が、日暮にとっても社会にとっても大きな変化を起こす時代であったことは間違いない。

その後も日暮は、4年ごとにコンスタントに登場。日暮はロンドン五輪のあった2012年から眠り続けているので、2020年の東京五輪の開催決定(13年)をまだ知らない。それを知った彼は何を思うのか。2016年のリオデジャネイロ五輪での登場回を待ちたい。
(下地直輝)

※イメージ画像はamazonよりこち亀ジャンプ 2016年 9/21 号 [雑誌]: 少年ジャンプ 増刊
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