内田有紀から始まった「90年代ショートカットの美少女枠」に名を連ねていた彼女もすでに38歳。
なにしろ、全盛期のエンクミは輝いていた。特に、デビュー直後の95年のマクドナルドのCMでの輝きはピカイチだった……。
遠藤久美子が大ブレイクしたマクドナルドのCM
エンクミが証明写真を撮っている間に、外で待つ友達がマックシェイクやポテトを先に食べようとたずねてくる。渋々OKするエンクミに対し、ついにはビッグマックまでも食べようとする友達。さすがにそれは勘弁してと、慌てて外に飛び出すが……。実際は友達のイタズラだったというオチ。
大きな目をキョロキョロして困惑の表情を浮かべるエンクミ。その愛くるしい姿は視聴者のハートをがっちりキャッチ。“ポスト内田有紀”の本命として、一躍話題のCMアイドルとなっていく。
マクドナルド人気とコギャル文化がエンクミのブレイクの原因!?
当時のエンクミは、時代の歯車とガッチリ噛み合っていた気がしてならない。この時代のマクドナルドは上り調子にあった。前年となる94年にはリーズナブルな「バリューセット」の販売が始まり、この年にはハンバーガーの価格が210円から130円に一気に値下げ。
エンクミのCMも連日連夜の大量投下で、同世代から圧倒的支持を獲得。マクドナルドとエンクミは相乗効果で人気を高め合う関係にあったのだ。
“アムラー”を始め、コギャル文化が台頭してきた時期とも重なる。
茶髪のロングヘアに極端な細眉、日焼けサロンなどで焼いた浅黒い肌のコギャルたちに対して、エンクミは黒髪ショートに太い眉、自然な透き通った肌。清潔感やさわやかさも兼ね備えたエンクミは、まさにコギャルの対極的な存在だった。
そんなエンクミを時代は支持。次々と大手のCMに出演し、トントン拍子でドラマデビューに繋がっていく。
CM人気からバラエティや映画にも進出したエンクミ
SEGAのカラオケや、『ご飯食推進委員会』のCMでは、笑顔いっぱいに歌って踊って、明るい魅力を振りまくエンクミ。ちなみに、ダンスはあまり得意ではなく、カラオケでは当時はジュディマリの『そばかす』を好んで歌っていたそうである。
97年には明治製菓のCMに登場。『明治ブルガリアヨーグルトソフトキャンデー』では、サッカー日本代表ゴールキーパー川口能活、『プッカ』ではナインティナインと、時代の人気者と共演。CMクイーンとして、ファン層を拡大して行く。
この年にはバラエティや映画にも進出、翌98年にはCDデビューと、順調に芸能界のトップに駆け上がって行ったのだが……。
広末涼子の登場、霞んだエンクミの輝き
そこに立ち塞がったのが、「90年代ショートカットの美少女枠」“最後の大物”広末涼子。
エンクミより少し遅れてブレイクした広末は超高速で猛追、社会現象化する人気で話題を独占してしまったのだ。その勢いの前では、同じジャンルで括られるエンクミの輝きは霞むばかり。CMクイーンの座もあっという間に取って変わられてしまった。(記事はこちら)
エンクミの代表作と言えば、未だに“広末ブレイク以前の”マクドナルドのCMが挙げられるのが通例。広末と同時代だった悲哀を感じずにはいられないのである……。
(バーグマン田形)
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