『元気TV』の終了は、裏番組の『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)に視聴率で負けたためと言われる。確かにその側面はあるが、『元気TV』はすべてをやりつくして衰退を迎えたと見ることもできよう。それほど『元気TV』は、バラエティ番組のあらゆる要素を網羅していた。
革新的だった『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』
現在では多くの番組で見られる、事前収録のVTRをスタジオで視聴者、出演者がともに観覧し、感想を述べあう“サブ出し”の手法は『元気TV』によって定着したものである。さらに人間の成長の記録などを随時見せていく“ドキュメントバラエティ”の手法も『元気TV』が確立した。
また、番組が注目したのは既存のタレントではない素人。話すうちに入れ歯がはずれてしまうおじいさんのエンペラー吉田やオカマの日出郎、青森の素朴な訛りが憎めないヤンキー三上大和など、多くの名物キャラクターが誕生している。
的場浩司、山本太郎、グレートチキンパワーズなど、番組出演をきっかけにプロとなった人間も多い。
テリー伊藤のテレビ哲学
番組制作の司令塔である総合演出を務めたのは、タレントとなる前のテリー伊藤であった。テリーははっきりとしたテレビ哲学を持っていた。
例えば、漢字だらけの企画書を書いてくる放送作家には「ひらがなで書け」と命じたという。テレビは子どもからお年寄りまで誰もが見るものであるため、誰にでもわかる、ひらがなで説明できる企画でなければならないのだ。さらにテリーは、番組が終わると付き合いのあった若い女性に電話をかけ、反応を確かめていたという。
受け継がれる『元気TV』の遺伝子
それほど勢いのあった『元気TV』がなぜ終了してしまったのかといえばやはり“燃え尽きた”というのが実際のところなのだろう。実際にリニューアル後のコーナーを見ると、不良やダンスといった、過去の名物コーナーの焼き直しが多かった。
それでも『元気TV』が作り上げた“ドキュメントバラエティ”の遺伝子は、『進め!電波少年』(日本テレビ系)における無名芸人の起用、『学校へ行こう!』『ガチンコ!』(TBS系)等における素人への着目に受け継がれてゆく。
いずれも90年代末から00年代初頭に一世を風靡したバラエティ番組ばかり。こうして見ると『元気TV』の終了はテレビ黄金期の“終わりのはじまり”であったのかもしれない。
(下地直輝)
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