「踊れ踊れーー!」
木村の煽りで一気にボルテージが上がる客席。中居は花道でクルクル回る。
静かなオープニングから一転、2曲目から真っ赤な衣装で『Just GO!』、『BANG!BANG!バカンス!』と序盤から飛ばすSMAP。

白い衣装をまとった子どもが一人ステージにあらわれた。透き通った歌声から、幻想的なストーリーと共に静かな幕開け。ステージ上部に5つの箱が登場すると、大きなリボンがほどけて白いマント姿の5人が現れた。ツアータイトル「GIFT of SMAP CONCERT'2012」だけに、プレゼントはSMAP!?
SMAPのDVD年末までに全部レビューその2。キス寸前の木村と香取「愛してまーーす!」
ペンライトは、リボンがついたギフトボックス型。

キス寸前の木村と香取「愛してまーーす!」


2012年に行われたコンサート「GIFT of SMAP CONCERT'2012」は、8月23日の福岡Yahoo!JAPANドームから12月24日の札幌ドーム、味の素スタジアムでの野外ライブを含む、全国6会場で行われた。

前回の「Mr.S “saikou de saikou no CONCERT TOUR”」にもあったけれど、またしても5人揃ってトロッコに乗り込むSMAP。“5人でSMAP”を表現しているのか、何度見てもSMAPが愛おしくなるシーン。


歌詞の中に「木村くん」とあれば、先にトロッコを降りた木村の肩に手をかけて近づく香取。木村が横を向くと、キスまで数センチのところまで顔が近づく。香取は目を見開いて、いたずらっ子のような表情を浮かべる。仲が良すぎ!
香取の次なるターゲットは稲垣。マイクを向けられると驚きながらも、されるがまま歌うゴローちゃん。
今回のコンサートは香取が構成を担当したこともあり、思いを形にした喜びを隠しきれないのかSMAPの末っ子・香取慎吾は終始、楽しそうにステージを飛び回っていた。


中居が、「こんにちは!こんにちは!どうも改めましてSMAPでーす!」と挨拶を締めくくると、5人が近づいて歌詞のとおりVサインをする。
個々で活動しているときもSMAPの一員であることには変わらないけど、5人が集まったときの雰囲気は格別だ。

中居の歌いだしから始まるアップテンポな『君とBoogie Woogie』は、ファンもダンサーもハイテンション。メンバーも会場を広く使って、走りながら歌い踊る。そんな中、中居はサックスなどの楽器隊が並ぶ正面に立っておもちゃのラッパを一生懸命吹いている。芸が細かい……。


舞台転換のようなJunctionの映像。鼻メガネをかけたりしてパーティー中の5人。ボウリングをしながら盛りあがっている。映像には、マーティーフリードマン、ヒャダイン、サカナクションの山口一郎、菅野よう子、ナオト・インティライミと、ツアーのベースとなっているアルバム『GIFT of SMAP』で楽曲を手がけたアーティスト陣の姿。携わった人をうまく巻き込むところがSMAPらしい。

「ダンスを正確に踊るよりもアクトを」


映像が流れている間、ステージではダンサーによっていくつもの箱が置かれていく。設営も演出に組み込んでしまうのはすごい。

流れるようしてはじまった『I Wanna Be Your Man』は、香取と稲垣、草なぎが3人が歌う。楽屋裏からはじまり、着替え中の中居を直撃した草なぎ。木村を訪ねた香取は、木村のあごに触れたら指を噛まれ「痛たたた!」と歌えなくなる。木村と香取がイチャつきすぎな件。
その後、泣きついた稲垣にも噛まれそうになり、どこへ行ってもかわいがられる末っ子。

SMAPを代表する楽曲の一つ『夜空ノムコウ』は、木村のギターでしっとり歌うのかと思いきや、大胆なアレンジを加えていた。
歌詞をラップ調にしてポップな仕上がり。ダンサーにフラガール、サンバ、子どもにおじいちゃん、おばあちゃんと、大きなメインステージにはたくさん人が集まって、頭の上で大きく手を叩きながら口ずさんでいる。SMAPを見ていて驚くことの一つに、楽曲をそこまで聞き込まなくても歌える曲があること。また、慣れ親しんだ曲も、世界観をいい意味で壊して見せてくれた。

意表をつかれたのが草なぎのソロ。高倉健の『唐獅子牡丹』をステージ用にアレンジしてカバー。
牡丹のような艶やかなドレスを着た一人の女性を救うべく、アクションありトリックあり、まるでミュージカルを見ているようだった。

「日に日にダンサーたちが結束していくようすが見てとれて、びっくりするやらうれしいやらという感じ。つまりはパフォーマンスの完成度もあがってきていて、正確なダンスを披露するだけじゃなく、曲ごとにちゃんとアクトしてるんだよね。彼らが表現してくれるおかげで、俺らもその世界に入ってきやすい。共演者に恵まれて俺らのライヴもここまできたか、と思ったよ」
(ポポロ/2012年11月号)

ジャニーズのコンサートでプロダンサーがつくことは少ない。多くはジャニーズJr.か、バンド演奏があるくらい。プロダンサーを起用することで、これまでとは違う、一皮むけた表現につながるのは確か。ダンサーも“花を添える”レベルではなく、プロ同士の真剣勝負といった印象。時には土台となり、時にはSMAPを先導するような気迫を感じる。

『イナクテサビシイ』へと繋がるショートストーリーでは、5人がかわるがわる登場して演技をしていた。そうそう、5人とも俳優としても活躍しているんだよな、と改めて思った。
歌とダンスだけでもコンサートは成立するけど、そこへコントやドラマ、漫談……個々の活動で集めたアイテムを詰め込んで、プレゼントしてくれた。変幻自在なSMAPに圧倒されっぱなし。

映像にはタモリも出演。SMAP SLOT MACHINEのナビゲーターをしてくれた。
スロットをまわすと次に歌う曲が流れるスロットマシーン。イントロの時点でニヤリとした中居。1988年のデビュー前の曲『SMAP』を歌った。
この頃はまだ衣装もテロテロした素材が多くて、まさか20年後にかっちりとしたシルバーのスーツで歌う姿を見られるとは。いやー懐かしい!

ドラマ「任侠ヘルパー」の翼彦一役が登場。表情も声のトーンも違う草なぎの映像が流れると、会場の子どもは口をあんぐり。役者スイッチが入ったつよぽんは別人だもんね……。
パンチパーマの草なぎが登場すると、花道でケンカが始まる。「弱きを助け、強気をくじく、てめぇら極道をナメてんじゃねーよコノヤロウ!」
背後から登場する白いワンピース姿の女性。
「つよちゃん、つよちゃん」
会場が一気に沸き上がる。
見たことある……女装+中居くん=計算マコちゃん!
「つよちゃん、いつこんなに怖い怖いになっちゃったの?」
頬を膨らませるぶりっこマコちゃん。小顔で目がクリクリしていて、女装がとんでもなく似合う中居くん。「どれくらい好き?」「言葉じゃ伝わらない」と最後はキスのおねだり。マコちゃんのペースのまれた彦一は……。
会場からは笑いやら悲鳴やら、大歓声が沸きおこる。
結末は会場の反応から想像してもらうとして、映画の宣伝を兼ねたコントとは思えないほど楽しい一コマだった。他にも綾小路きみまろのパロディー、綾小路しんまろに、木村のPちゃん、C-C-B吾郎とスマスマでおなじみのキャラが登場。
次はコントか歌か、バラードそれともダンスナンバー? 何が飛び出すかわからない面白さがテンポよく続いてく。

オープニングでリボンをほどいてスタートした「GIFT of SMAP CONCERT'2012」。歌にダンスに、コントと、バラエティに富んだSMAPからのギフトを、エンディングでは大きな箱に詰め込むようにしてリボンを結んだ。箱を開ければいつでも蘇るSMAPとの時間。
変幻自在なSMAPと過ごすひとときはあっという間だった。

スターだって床を拭く!SMAPらしい舞台裏が見られるDisc 2


ブルーレイ盤Disc 2ではリハーサル風景など、各会場でのダイジェスト映像が収録されている。

中居は、ロンドンオリンピックの取材があり9日間遅れての合流。
「暗記パン食いてぇ」と木村。振りつけにポジション、覚えることは山ほどある。ツアー初日福岡でのリハーサルを終えたのは公演当日の朝5時47分。開演が18時だとしても休めるのはわずか……。

MCでは、「はじまったねぇーーー!」と、汗だくでも元気いっぱいに、嬉しそうに喋る香取。
「『夜空ノムコウ』やったとき中居、一回消えたろ?」
生気のない中居の姿をマネる木村に、疲れをのぞかせた中居。楽屋では、集中して歌詞を覚えたい中居に「肉うまいよ!」と言い続けて怒られた草なぎ。ステージでは見ることのできないエピソードは嬉しい。

「雨のなか来たの?」香取にいじられる会場。10月の味の素スタジアム公演は、雨の中スタートした。途中であがったとはいえ、ステージは水浸し。
MC中にスタッフが懸命に拭き取っているのを見て、
中居「俺らもやったほうがいい」
稲垣「SMAPっぽくしようか」
中居「自分たちのステージ、人にやらせて…」
ふざけながらも、デッキブラシやタオルを持って手伝う。
最後に「スタッフのみなさんに拍手!」と香取。どこまでデキる人たちなんだSMAP。

東京ドームの本番中、楽曲に合わせて手をつなぐなど楽しみながら任務を遂行するスタッフの姿があった。仕事を通して、いい関係が築けているんだなぁ。

他にも、味スタで香取ソロ『MONSTERS』に、ドラマで共演中の山下智久がサプライズ登場した映像もあれば、舞台セットについての解説も収録されている。見応えありすぎ!

2011年にデビュー20年周年を迎えたSMAPは、1991年に出発の地西武園ゆうえんちでファン1万人とイベントを行っていた。
2012年は稲垣が出演したドラマ「ハングリー!」にはじまり、中居主演ドラマ「ATARU」、木村主演「PRICELESS〜あるわけねぇだろ、んなもん!〜」、香取と山下智久の「MONSTERS」、草なぎも「37歳で医者になった僕〜研修医純情物語〜」などドラマ出演が続いた。バラエティでは「ナカイの窓」がスタートした年。2012年も相変わらず忙しそうだったSMAP。

中居がキャスターをつとめた「TBSロンドンオリンピック2012」のテーマソングに起用された『Moment』。Disc2では『Moment』を歌う5人それぞれにフォーカスを当て、メンバー個々の映像が見られるレアな編集が入っている。
はじめは大舞台で活躍するアスリートをイメージしていたけれど、5人がこれだけのパフォーマンスを披露するために…、もっと言えばデビューから5大ドームツアーができるまでの間に、どれだけの苦労や努力があっただろう……映像を見ているうちに歌詞とSMAPが重なった。

「ライヴのときはいつも、初日は涙がでちゃう」
(ポポロ/2012年11月号)
それは受け取る方だって同じ。たくさんの時間を費やして、愛情を注いで考えてくれたステージは本当に楽しかった。
香取はコンサートのはじめも終わりもこの言葉をくれた。
「愛してまーーす!」

(柚月裕実)

【SMAPライブDVDレビュー企画】
SMAPの解散が報じられ、ジャニーズファンのライターとして何かできることはないかと、SMAPライブDVD全作レビューに挑戦することにしました。
これまでSMAPが見せてくれたステージを、改めて振り返ってみたいと思います。