脚本:西田征史 演出:大原拓

イラスト/小西りえこ
いよいよ最終週。
まず、今から観ても大丈夫なように(そんなひといないか)「とと姉ちゃん」の25週をおさらいしておこう。
10代で父を亡くした主人公・常子(高畑充希)は父に代わって家長となり、母とふたりの妹を守り、妹たちを嫁に出し、家を建てることを目標にしながら、戦争をもくぐり抜け、たくましく生きて行く。
生活費を稼ぐためにはじめた雑誌作りが当たり、編集長として迎えた花山(唐沢寿明)の才能も手伝って出版事業は成功。常子は、結婚よりも仕事を選び、ひたむきに女性のための読み物をつくり続ける。
以上。これだけ知っていれば大丈夫。このベースにいろいろなトッピングが乗りながら25週駆け抜けてきた。
朝ドラの良さは、いつ、どこから観ても、当たり前に受け容れられること。例えるなら、富士山のような存在だ。常子たちが運動会の二人三脚で「富士山、富士山」
と唱えていましたね。

イラスト/小西りえこ
最終週は、時代が変わり核家族が増えたことによって主婦が働き辛い状況を打破すべく、常子は雇用システムの改良をはかる。それを聞いた花山は、自分ももうひとふんばり出版人としてでき得る限りのことをしようと、病を押して広島に取材へ向かう。
はたして花山は何をしようとしているのか。
最終週になっていきなり広島の街のセットをつくり、背景には原爆ドームがCGで加えられているところに、
花山の行動がいかに重要なことであるかを匂わせる。
モチーフになった「暮しの手帖」が出版した「戦争中の暮しの記録」
を「とと姉ちゃん」なりに描くのだろうと想像するが、先回りして何か書くことはしない。今まで描いてきたことはすべてここに至るためだったのか! と感服させてほしい。祈るような気持ちで観ております。
あと5回!
(木俣冬)

イラスト/小西りえこ