ドラマ10「運命に、似た恋」(NHK 総合 金 よる10時〜)episode1「禁じられた遊び」
脚本:北川悦吏子 演出:一木正恵  出演:原田知世 斎藤工 山口紗弥加ほか
斎藤工がありえないことばかりする「運命に、似た恋」episode1
『斎藤工 蜷川実花 東京編』ギャンビット

のっけから、斎藤工の指、瞳、唇のアップの連打。
斎藤工が自然光のたっぷり降り注ぐ部屋で椅子をつくっている。

そこへインターフォンが鳴って振り返り・・・
玄関のドアを開けると原田知世。

45歳、高校生の息子とふたり暮しのバツ一主婦(富裕層向けのクリーニング店勤務)の原田知世(香澄)とカリスマデザイナー斎藤工(小川勇凛)との夢のラブストーリーがはじまった。

脚本は恋愛ドラマと言ったらこのひと! の北川悦吏子。NHK初登場の北川は、民放では月9「ロングバケーション」(フジテレビ)、日曜劇場「ビューティフルライフ」(TBS)などの恋愛ドラマで木村拓哉を最も輝かせた脚本家といっても過言ではない。「とと姉ちゃん」でもやっていた「あすなろ抱き」の元祖「あすなろ白書」(原作・柴門ふみ)も北川脚本だ。

その北川悦吏子が斎藤工をどれだけ素敵に描くか!
期待して1話を観たら、ありえね〜〜! の連鎖。
これは褒めです。ありえない、でも、あったらいいな[ハート]をこれでもかとぶっ込んでくる力技。いや、ただの力技ではなく、緻密に計算された、技とハートが合わさったフィギュアスケートの演技のような1話だった。
最近のラブストーリーはちょっと慎まし過ぎる、ラブストーリーはこうでなくちゃの見本のような1話を振り返ってみたい。

ありえない1


原田知世が斎藤工の部屋にクリーニングの配達にいくと、いきなり部屋にあげられ、できたてのきれいな椅子を見せられる。
斎藤工にかしづくように座らされて、どこかの国の貴婦人みたいな気分に。
ありえないロマンティックな出会いである。


ありえない2


斎藤工は原田知世の苦手な車の運転を代わると言って、そのまま店まで送ってくれる。
斎藤工と短時間短距離のドライブデートのはじまりはじまり。

斎藤工「このまま海にでもいっちゃいますか。夕焼けに間に合いますよ」
斎藤工「もし次の信号が青だったら第三京浜出てほんとうにどこか行きませんか、このまま」

原田知世「もし信号が赤だったら?」
斎藤工「そのときは・・・停まります」
ふたり笑う

くすぐったーい! こんなふうにキュンとくる素敵なセリフに定評のあるのが北川悦吏子だ。
それから「信号は黄色で。それがわたしの人生」と来た。そこに卵の黄身のカットが挿入されるのでした。


ありえない3


「からかわれたんだなクリーング屋のおばさんが若い男に」と反省する原田知世。
でも「時をかける少女」の知世ちゃんがおばさんだなんて、ありえない! 

ありえない4


高校生の息子のことを詩的に説明する原田知世。
これまで恋人を詩的に語ってきた北川悦吏子脚本が今度は母親キャラの息子までをドリームにする。
「つぐみは真下から空を見るのが好きで 地面を蹴って飛ぶ。『そのあとは空が落ちてくるみたい』なんて言う」
感服です。
そして、自分の人生もやや卑下しつつでも負けてない。それがこのセリフに現れている。
「わたしは歩く そして働く」 ←韻を踏んでいる。
原田知世が暗くなく語るからいいのかも。

ありえない5


クリーニング店のお得意様・セレブマダム(山口紗弥加)に高級な服(7、80万円くらいする)をもらう。

ありえない6


6年前、若い女と結婚してしまったちゃらい元旦那(小市慢太郎←最近チャラ系にシフトチェンジ?)にお金をせびられる。

原田知世「仕事しなよ」
小市慢太郎「やだよおれからカメラとりあげたら何が残るの」

むむ、お金にならない芸術写真撮ってるひとなのかなあ、それにしてはチャラ過ぎる。


そして名台詞
「弱い者を見捨てられないのはほんとうは自分も弱いから」

ありえない7


ダメな元旦那と斎藤工の差異に絶望したのか、斎藤工との可能性を妄想する原田知世。
そこに工事の音が聞こえてきて現実に引き戻される。
「なんてわたし痛いおばさん」
知世ちゃんがそんなセリフ言っちゃダメだー(涙

ありえない8


カフェでごはん食べてたら斎藤工と再会、パーティーに誘われる。

「あなた僕の運命の人なんで」 早々にど直球!

「45歳です」と申告すると「うっそまじで全然見えない」と言われる。
「うっそ」とか「やっべ」とかのトーンに木村拓哉を思い出しました。

ありえない9


元夫のお母さん草笛光子(灯)とはいまだに仲良しな原田知世。いい感じの聞き役になってくれる。
義母の営む写真店でかかった「禁じられた遊び」を聞いて過去を思い出す原田知世。孤独だった少女期をさりげに解説。
ちょいちょい登場人物のバックボーンをセリフに混ぜていく北川悦吏子の手際はさすが。

アムロと名乗るワンピースのルフィみたいなかっこうの少年に死にそうなとこを助けてもらう。
場所が能登なのは、演出家・一木正恵が「まれ」の演出をしていた繋がりか。
少年と少女はしばらく仲良くしていたが、少女が能登を出るとき、貝のオルゴールとバレッタと交換してお別れした。
この巻貝が照明によってはう◯こに見える私は汚れているんでしょうか。せっかく原田知世が、今まで誰にも語っていなかった過去の悲しみを語りながら思わず泣いてしまう、その泣き方が素晴らしく自然でよかったというのによろしくない見方をしてしまいました。

ありえない10


やたらかまってくる斎藤工。
壁ドンならぬ車ドンで迫るも「くちびる分厚いですね」で交わす原田知世。
ここ、北川悦吏子は当て書きしたそうだ。

ありえる1


斎藤工となんだかただれた関係を(役の話ですよ)結ぶ山口紗弥加が、原田知世が椅子に座った話を聞いて、嫉妬に燃えて意地悪をする。これはよくありがちな流れですね。

ありえない11


山口紗弥加に騙されてアニメ「ハニーエンジェル」のコスプレでパーティーに行って恥をかく原田知世。
決めセリフが「あなたと私でランデブー」って・・・。
逃げ帰る原田知世に屋上からショールを投げる斎藤工。

「もしあのストールが無事落ちて来たらあの人はいい人
もしあの木にひっかかったら悪い人」

みごとにナイスキャッチ。いやいや、ストールは重量がないからそんないい感じに落ちないと思う。
でも、ここで、みごとに45歳主婦、恋に落ちた、という顔になる。

ありえない12


山口紗弥加とただれた関係を続ける斎藤工(役の上です)の部屋にバレッタがある。
「大人になっておれ香澄を迎えにいく」と約束した回想。
あっという間に、斎藤工と原田知世の因果関係がわかるのだが、原田知世に惹かれながら、
人妻とやっちゃうワイルドで偽悪的な斎藤工も魅力的〜〜で、1話終了。
できたらストイックであってほしかったけれど、夢の恋愛強者は貪るんですね。
斎藤工の入れ食いパワーがふんだんに発揮されそうなドラマ。2話も貪りまくりそうです。
(木俣冬)