そもそも、キューティーハニーと言えば、主題歌にもあるように「プクッとボインの女の子」であることが大前提。胸元が大胆に空いた衣装が肝だ。なのに、今作では西内まりやの控えめなバストをむしろ包み隠すかのような衣装。「コレジャナイ感」がハンパない。
やはり実写のキューティーハニーと言えば、佐藤江梨子に尽きる。2004年のサトエリ版『キューティーハニー』は、ストーリーや内容はともかく、ハニーの再現度だけは文句なしだったのだから……。
2004年は「アニメ実写映画」が花盛り!?
2004年は、アニメ・マンガ原作の実写映画が花盛りの1年だった。4月『キャシャーン』、5月『キューティーハニー』、8月『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』、10月『デビルマン』と、続々と公開されたがはっきり言って迷作ばかり。
宇多田ヒカルの当時の旦那、紀里谷和明が監督を務め、「宇多田ヒカルが歌う曲のプロモーション映像に過ぎない」と言われる始末の『キャシャーン』。主演の棒演技を始め、辻褄が合わない上に超スピードなストーリー展開で、「ポスター以外すべてダメ」の烙印を押された『デビルマン』。一応、香取慎吾主演の『忍者ハットリくん』は、興行成績も上々ではあったが……。
残念ながら、『キューティーハニー』も映画の完成度としては今一歩である。
アニメ的な世界で輝く佐藤江梨子の色気
個性豊かでド派手な敵キャラを始め、原色使いのカラフルな世界観は実にアニメ的。アニメでお馴染みのBGMを交えながら、深く考えるのがバカバカしくなるストーリーが勢い重視で展開されていく。
主人公「如月ハニー」は、普段はノー天気&ハイテンションな天然系美少女。しかし、「ハニーフラッシュ」による変身後は、勇ましいアクションで敵をなぎ倒して行く。その二面性あるキャラクターをサトエリが体当たり演技で熱演している。
グラビアアイドル全盛期のダイナマイトボディを、必要以上に随所でさらけ出しているサトエリ。それでも、いやらしさよりも健康的な色気が先立つのは、彼女が持つ魅力のひとつかも知れない。
庵野監督独自の技法「ハニメーション」はサトエリあってこそ!?
見どころは、「ハニメーション」と名付けられた、庵野監督考案の映像表現。
アニメーターが描いた原画に合わせてサトエリを1コマずつ撮影し、それに爆発等のデジタル合成を掛け、さらにそれらのコマを繋げて動画にするといった非常に手の込んだもの。いわゆる「スチールアニメ」であり、ごく簡単に言うと「パラパラマンガ」的な映像である。これにより、アニメのようなスピーディーで迫力あるアクションに仕上がっている。
ディフォルメされた動きのアニメ原画とあって、かなり無理なポーズも強いられるも、サトエリは持ち前の柔軟性でどうにかクリアしたそうだ。
倖田來未がカバーした主題歌は大ヒットとなり、ポップなアニメによるオープングも高評価で、後のアニメ『Re:キューティーハニー』の制作に繋がっている。しかし、興行成績は目標の半分にも届かず、制作会社は倒産に追い込まれてしまったのだった。
アニメ・マンガ原作の安易な実写映画化、やはり危険なようだ……。
(バーグマン田形)
※イメージ画像はamazonよりキューティーハニー [DVD]