これは、どういう心理なのだろうか。
聞き手の気持ちを察することができない
「自分の話ばかりしてしまう人というのは、あまり他人に興味がないというか、相手の反応に無頓着なところがあります。 会話中は自分が話すこと・自分にあった出来事や気持ちに関心が向いているために、聞き手の反応を見て気持ちを察するということができない状態です」
そのため、こういった人と話をすると、会話がキャッチボールではなく一方的に聞かされるもの・押し付けられるもののように感じられると言う。
「自分の話ばかりする人には、『相手の話を聞くのが苦手』という人もいますが、会話中不自然に自分の話題にすり替えたり、自分の話しかしなかったりするような人は、少し心に不安定なところがあると考えられるでしょう。 また、もともと相手の話を聞くのが苦手な人の場合は、『相手の会話を受け止める』という練習がコミュニケーションの中で培われてこなかったこと、“スキル不足”が原因として挙げられます」
相手や話題に関心が持てていない場合も確かにあるが、関心がある相手にもかかわらず、「黙って相手の話を聞くことはできない」という人もいる。それは、普段から落ち着きがないとか、じっとしているのが苦手な人に多いそう。
「また、それとは別に、自分の話にいつもすり替えたり、自慢話や周囲が首をかしげるような自分語りをし始めてしまう人は、自信がない・自分に関心を持ってほしい・自分を認めてほしいといった自己承認欲求が強い人だと言えます。『本当は自分はすごいんだよ』『あなたが思っているよりも、こうなんだよ、こういうところもあるんだよ』と、どんどん引き出しを開けて相手に関心を持ってもらおうとしているのです。 心の奥の方では『自分は認められていないんじゃないだろうか』という不安感があって、それを補うために、相手に好かれよう・相手にすごいと思われたい・相手より優位に立ちたいといった心理が無意識に働いてしまうのです」
相手の欲求を満たすとエスカレートする場合も
自分の話ばかりする人に対しては、「認めてあげる」のがいちばんなのかと思いがち。だが、それで話を聞いてしまうと、極端に気に入られ、自分語りをエスカレートさせてしまうことも多いもの。
それでも、その相手を好きで、安心させてあげたいなら良いが、「とりあえずあまり空気を悪くせずに相手の会話を止めたい」のであれば、相手の欲求を満たす行為はかえって相手を助長してしまうためNGだと言う。
では、相手の会話を止めるには?
「いちばん良いのは、『話題を変えること』です。
突然全く違う話題をふられると、話していた側は一瞬混乱し、対応できなくなる。その混乱のすきを狙って話を切り上げることも、まったく別の話題にシフトすることもできるそう。
これは特に自分の話ばかりする人に捕まってなかなかその場を立ち去れないというときなどには、かなり有効だと言う。
「『ところで』『そういえば』という枕詞を使えば、切り上げにもシフトにもスムーズに持っていけますよ」
ちなみに、上司や先輩などには「今聞いておかないと気になってしまうので」「後まわしにして忘れてしまうと困るので」と真面目な顔をして切り出すのがオススメだという。
余談だが、自分の場合、「あ、宅配便が来ちゃった」「携帯に仕事の電話が」とまで言っても電話を切ってくれず、そのまま待つか、すぐにまたかけてくる知人がいたが、別のターゲットを見つけてからは用がなくなったらしく、全く電話してこなくなった。
こうしたタイプのターゲットにされやすい人は、特に上記のコツを上手に活用したいものだ。
(田幸和歌子)
※ゆうきゆう 精神科医・著書多数。ゆうメンタルクリニック総院長(上野院)。(池袋東口院)。(新宿院)。