『マジカル頭脳パワー!!』(日本テレビ系)は90年代を代表するクイズ番組のひとつだ。「マジカルバナナ」「マジカル伝言バトル」「あるなしクイズ」など多くの人気コーナーを生み出し、常時、30%近い視聴率を記録する“オバケ番組”として知られる。
だが、この番組は最初から順風満帆であったわけではない。

順風満帆でなかった『マジカル頭脳パワー!!』


番組は1990年の10月27日にスタートした。当初の放送時間は土曜日の8時。裏番組には『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』(TBS系)や『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』(フジテレビ系)といった人気番組並ぶ。この枠は、ザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』(TBS系)と『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)が熾烈な視聴率バトルを繰り広げてきた激戦区であった。
そこに、日本テレビが新たなクイズ番組で勝負をかけたのだ。

強力な裏番組に挟まれた『マジカル頭脳パワー!!』の視聴率は当初、伸び悩んでいた。だが開始半年後から人気に火がつきはじめる。問題を募集しそれを取り上げてゆく、視聴者参加型の要素が番組を盛り上げていったといえる。

『マジカル頭脳パワー!!』の演出術


『マジカル頭脳パワー!!』を立ち上げたのは、のちに『速報!歌の大辞テン!!』『エンタの神様』など数々の人気番組を手がける五味一男である。五味は大学卒業後、市川準のもとでCMディレクターとして働き29歳で日本テレビへ中途入社している。短い時間で簡明にメッセージを伝えるCMを作ってきた、五味が徹底してこだわったのはわかりやすさである。

番組で出される問題は、知識を競うものでなく、頭の柔らかさを試すものであった。
それゆえに、東大卒のインテリである俵孝太郎が解けない問題を、おちゃらけたイメージの所ジョージがやすやすと解いてしまう思いがけない展開も見られた。
その他、アイドル枠として田中律子、千堂あきほ、加藤紀子が入れ替わりで登場したかと思えば、おバカ枠では間寛平が10年にわたりレギュラーを務める。

こうした、きっちりとしたキャラクター配分からもわかる通り『マジカル頭脳パワー!!』は五味一男の演出がミリ単位で行き届いていたと言える。ナインティナインの岡村隆史は、番組出演時、連想ワードをつないでいく「マジカルバナナ」において「マッチといったら放火」と発言。「番組のイメージと合わない」として収録を止められた思い出をラジオで回想している。

『マジカル頭脳パワー!!』は1999年9月に終了するまで10年間にわたって続いた。その間、番組をもとにしたテレビゲーム、アーケードゲーム、ボードゲームと数々のメディアで発売されている。さらに番組のフォーマットも世界各国に販売された。この番組は視聴率至上主義の番組にありがちなエロ・グロ・ナンセンスの要素が皆無であったことも新しい。その分、家族で安心して観られる番組として広く受け入れられたといえるだろう。
(下地直輝)

※イメージ画像はamazonよりVAP Best Thanks 1800 マジカル頭脳パワー!! PARTY SELECTION
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