どんな魚でも干物にできるのだろうか? そもそも干物にするメリットとは? アワビやタコといった珍しい干物も多数扱う「銀座伴助 銀座本店」店長の宮本さんに話を聞いてきた。

どんな魚も干物にできるのか?
「干物とは、魚を塩でしめて干したものが定義ですので、物理的にはどんな魚でも干物にできます。ただ、加工によって美味しくなる魚もあれば、そうでない魚もあります」(宮本さん)
宮本さんいわく、干物に適している魚の特徴は以下のとおり。
・身が柔らかい(水分が多い)
・脂がのっている
・身が厚い
・身が濃い色より薄い色(白身より赤身)
具体的には、ほっけ、さば、のど黒、きんき、銀たらなどが当てはまるという。

逆に身がかたくて水分が少なかったり、脂がなかったりする魚は干物には向かないそう。ぶりやマグロの赤身などがその代表例だ。
同店の母体は60年以上の歴史を誇る福島県の干物製造会社「伴助」。長い歴史のなかで試行錯誤を繰り返しながら、干物にすることで本当に美味しくなるものを見極めてきたそうだ。伴助では、ほっけなどの定番からトラウトサーモン、のどぐろなど、さまざまな干物を扱っている。
干物にするメリットとは?
かつては日持ちさせるために干物にしていたが、現代は美味しくするのが大きな目的になっているという。
「干物にするとよりうまみを感じるのは、干して熟成させることでイノシン酸やグルタミン酸などのうまみ成分が醸造されるから。また、塩でしめることで水分が出て、それとともに生臭みも抜けます。さらに筋肉組織の繊維が溶けだすのですが、これは干すと再び結合します。それによって、ほどよい食感が生まれるんです」(宮本さん)
干物にはシンプルな塩干しやみりん干しなどいろいろな作り方があるが、伴助の場合は「タレ干し」。
レア干物を食べてみた!

実際に珍しい干物を食べてみた。今回はお通しとして全員に出しているというディナータイムのメニュー「伴助オリジナル希少干物盛り合わせ」(888円税抜)をオーダー。アワビ、ホタテ、タコが美しく盛り付けられており、一見すると干物とは思えない。
まずはタコからいただく。身がしまっていて、噛めば噛むほどうまみが出てくる。やばい、これは猛烈に日本酒が飲みたくなる味だ。しかし、そこはぐっとこらえて、続いてホタテを口へ運ぶ。こちらは、さくっと軽やかな食感が楽しい。割れやすいホタテが薄くきれいに切られているのも見事な職人技だ。最後はアワビ。もともとかたいので、干物にしてもほどよい弾力があり、ふわりと鼻にぬける香ばしさがたまらない。
ちなみにほかに珍しい干物としては、いかの干物や穴子の干物もあった。


干物は外国人にもウケている!
同店は今年8月末にオープンしたばかり。1階は干物の物販、2階は干物料理のレストランになっている。高級干物の専門店という珍しいスタイルがうけて話題を集めており、週末のランチなどは2時間の行列ができることもあるとか。

また、銀座という場所柄、外国人観光客も多いそうで、メニューは中国語・韓国語・英語に対応。骨を丁寧にとった外国人向けメニュー「GINZA HIMONO SET」も用意していた。ちなみに骨は、干物にする前のさばく段階で取り除くそうだ。骨をとると身くずれもしやすいので、きれいなかたちで提供するにはかなりの技術がいるらしい。

実際に話を聞いてみると、想像以上にいろいろな魚が干物として楽しめることがわかった。日本ならではの食文化として、今後は世界からも注目を集めていくのかも!
(古屋江美子)