2016年12月4日に放映された『M-1グランプリ2016』で惜しくも優勝を逃した「和牛」。敗者復活戦から勝ち上がっただけに注目度も高かったが、最終決勝で「銀シャリ」に敗退した。


しかしネットを中心に「和牛の方が面白かったのでは?」などと評価の声も高まっている。このほか、放映後に爆笑問題の太田がラジオで絶賛するなど、東の先輩芸人をも唸らせるその実力は折り紙付きだ。

今回は、へりくつ漫才をやらせたら若手No.1と言える彼らのこれまでを振り返ってみよう。

緻密で丁寧な漫才と卓抜した演技力


ここ数年でテレビへの露出も増えた和牛だが、芸人ファンの間では結成当初から名の知れた存在だ。緻密に練られた構成と、水田信二(36)のネチネチとしたボケ、川西賢志郎(32)の卓抜した演技力で、幅広い世代に受ける漫才を数多く生み出してきた。

2006年に結成し今年で10周年を迎えるかれらの真骨頂といえば、過剰に理屈っぽいボケ・水田に対して、ツッコミの川西がスマートに対応しつつも翻弄されるという「へりくつ漫才」だろう。
「へりくつ漫才」といえば、過去のM-1王者であるブラックマヨネーズの印象が強いが、彼らのほとばしるエネルギーに満ちた「へりくつ」とは一味違う、ねっとりとした“いやらしさ”、“怖さ”が持ち味だ。

しかし、一度笑ってしまえばもう抜け出せない。えんえんと屁理屈をコネ続け、サイコパス臭を発する水田に観客が辟易してきたころ、川西の美しすぎる「もうええわッ」で得られるカタルシスはなんとも表現しがたい……。わずか数分のネタとは思えない、舞台を観終わったかのような満足感を得ることができるのだ。

M-1敗者復活戦からスタジオへ


そんな和牛は、上方漫才師のなかでもっとも誉れ高いとされる「NHK上方漫才コンテスト」で2014年に見事優勝。これをきっかけに改めてその実力が証明されたが、その後も「THE MANZAI2014」や「M-1グランプリ」で全国区の芸人となる。

昨年復活した「M-1グランプリ2015」では決勝6位、さらに2016年のM-1では敗者復活戦に勝ち抜きスタジオ入り。敗者復活組特有の勢いも助け、ネタではたびたび拍手笑いがまき起こった。
審査をした中川家の礼二が、すべての芸人のなかで彼らに最高得点をつけているのも印象的だ。

松本人志が絶賛 重たい1票を獲得


2位とはいえ和牛のポテンシャルを証明したのが、かれらに1票を投じたダウンタウン・松本人志のコメントだろう。「いやー優秀ですよね」「他にも色々ネタ見てますけど、全部面白いからね」と納得の表情。

南海キャンディーズ・山里がラジオで松本の発言に触れ、「すげぇな、あれはもう松本さんから『神の言葉』もらったしね」「100%売れる」と羨んだように、一部の芸人やお笑いファンにとって松本人志からの評価は「M-1優勝」よりも重く、意味のあるメッセージなのだ。

ネタでも披露 プロの料理人だった水田&女子人気の高い川西


そんな和牛の鉄板ネタのひとつといえば、「彼女の手料理」である。

「芸人になる前にプロの料理人だったんで、僕がつくったほうが断然美味しいですし、プロやって言ってるのに作ろうとする厚かましさに引きますよね」
「ナツメグないね? 肉の臭み消すのにナツメグいると思うけど」

彼女(川西)が彼氏(水田)の家でハンバーグを作るものの、プロの料理人目線でコメントする彼氏に彼女がドン引きするというこのネタ。

じつはボケの水田、実際に料理人だったという経歴の持ち主だ。有名洋食店や和食店で修行をしたという経験もあり、芸人界でその腕前は有名。バラエティ番組でもその腕前をたびたび披露している。

一方ツッコミ・川西はバラエティでもその優等生ぶりを発揮。人柄のよさがにじみ出るトークや、品の良いツッコミで女性人気も高い。端正な顔立ちをしているが、その容姿をいかして「かつみ・さゆり」のモノマネをすることも。

そんな「和」の心を兼ね備えた“上品な優等生”川西と、「牛」のごとく“暴れるとヤバい”水田が織りなす笑いは、和牛のようにやみつきになること間違いなし。


2017年には結成11周年目を迎え、M-1に出場できるのはあと5回となる。今後のM-1王者となる可能性がもっとも高いコンビだけに、来年もその活躍に目が離せない。
(ヤマグチユキコ)

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