就活相談と称した食事の席で開口一番そう話したのは、大学4年生のユウキさん(22歳・仮名)。イケイケな語り口なだけあって、茶髪にふんわりとしたニットを着こなした女子力の高い見た目だ。来年から会社で働く彼女に就活を振り返ってもらった。
――確かにユウキさんって、プロフィールだけ見たら「役満」な女子大生だよね。就職先もやっぱりキラキラしたとこなの?
すごく迷ったんです。もともとブライダルに行きたくて、3年生の頃から学内セミナーにも熱心に出席してたぐらいで、選考もとんとん拍子に進んでたんですけど。やっぱり勤務時間は長いし土日に休みがない仕事だから、同じ年代の友達とも遊びにくくなっちゃうし。それに大変な割に給料もそんなによくないから……。
――銀行や商社の一般職は受けなかったの?
そのあたりも考えました。私の通っているような女子大だと、一番の「勝ち組」はその辺りですね。特に財閥系の商社の一般職は学科の先輩が「宝くじに当たるようなもの」って言ってたぐらいで、周囲でも可愛くて人当たりが良い子しか受からないような高嶺の花。憧れもしましたよ。
――男子の中では総合商社の総合職に内定した子はもてはやされてるイメージだけど、女子大だと一般職がそれにあたるわけだ。
そうですね、その次に人気なのは大手の銀行や信託など金融系や、海運系の一般職。アナウンサーやCAほどの華やかさはなくても、安定してて、婚活の人気が高いその辺りの職種が人気だし、実際に行く子も多いです。将来何か自分で事業がやりたいとか、こだわりが強い化粧品ブランドがあってその会社に行きたいっていう子以外にとっては、そういう一般職に行くのが「正解」っていう感じはあります。この前も、金融系一般職に勤めてる3年目の先輩が、会社の上司と婚約したって聞いて、「やっぱりな」って。
――ユウキさんは、大学ではインカレサークルに所属してて、そこで「ハイスペ」な高学歴彼氏をゲットしたよね。一般職にうまく入れば、その延長線上みたいな人生が待ってたかもしれない。名の通った会社で、仕事はほどほどに頑張って、公私ともども順調。
ええ、でも……なんだか大学まででそういうのに疲れちゃったっていうのもあるんです。結局、私は地元の銀行に就職することにしました。
――あれっ、そうなんだ。それまたどうして。
大学から東京に出てきて、一人暮らし始めて、サークルにバイトに楽しんで、合コンやパーティも行ったりして。
――もう十分に楽しんだ?
そうですね、そういうキラキラした世界を初めて知って最初の方はわくわくしたんですけど、段々疲れてきちゃったなあって思って。際限がないじゃないですか。大学の同期でも、西麻布や六本木の高級バーに夜な夜な通って、年上の経営者の方と「パパ活」したり派手な遊び方を続けて、インスタグラムに高層マンションから撮った夜景をあげてるような子もいるけど、いつまでもそうやって見栄を張り続ける生活も大変かなって思うんです。金銭感覚もおかしくなっちゃうし。
――そういう人たちは、会社に入って、うまく20代のうちに安定した大企業のサラリーマンや公務員と結婚してそういう世界から足を洗うのかなって思ってたけど。
それもアリだと思うんですけど、私はもう早めに経験した分、もういいかなって思ったんです。年末年始に帰省して家族と質素にゆっくりと過ごしているとすごく落ち着くことに気づいたんです。
――地元だと、地元の銀行の一般職でも十分「勝ち組」って思われるしね。
そうそう。それで、東京にいる友達とは結婚式とか何かイベントがある時にたまに会えれば良いかなって思ったんです。東京で「キラキラ女子」を続けてたら、そういう時に毎回、相手より良い条件の彼氏がいるかとかマウンティングしあっちゃうでしょう。
キラキラ女子の「王道」を歩んでいたユウキさんは、就職というタイミングで別の形で身近な幸せを追うことに決めた。この意思決定は、女性に限らず、周囲と自分の比較に追われて厳しい競争環境に飛び込んでいく多くの就活生にとって参考になるものかもしれない。
取材・文 大熊将八(おおくましょうや)
財務分析と取材の両面から企業を調べることを得意とし、現代ビジネスなどで企業分析記事を連載しているほか、「進め!!東大ブラック企業探偵団」というビジネス書を講談社より出版、東大や京大の大学生協でベストセラーとなる。分析術を活かして、就活生の進路相談にも乗っている。」
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