※この後スタッフがおいしくいただきました

バラエティ番組で食べ物を笑いの道具として使った際、必ずといって良いほど表示されるこのテロップ。日本には古来より「食べ物を粗末にするべからず」という文化が存在します。
その風習から大きく逸脱すると思われるシーンにおいて、このテロップがさながら批判を回避する免罪符のように使われているのはご存知の通りです。

以前、ダウンタウンの松本人志は「正直に言うと、スタッフが食べてるところを見た事はございません」と自身がMCを務める番組『ワイドナショー』の中で発言していました。撮影で使われる料理というのは、長時間放置したりする関係上、衛生的にリスキーな場合がほとんどなので、無理もないでしょう。

しかしそういった事情がありながらも、体裁上はテロップを表示しなければならないのが、テレビの難しいところ。かつて『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』で放送されていた『山崎邦正vsモリマン』においても、同様の表示がされていたものです。

12年間に渡って放送された『山崎vsモリマン』


この企画は、山崎邦正(現・月亭方正)とホルスタイン・モリ夫(モリマン)がリングの上で様々な対決を行うというもの。楽屋で常々「俺は昔、裏番長だった」とうそぶく山崎に対し、果たしてその強さは本物なのかを検証するためにスタートしたといいます。

1996年から全12回・12年間にわたって放送され、最後の試合となったのは2008年。『炎のファイナルリベンジマッチ』と題し、『絶対に笑ってはいけない新聞社24時』とセットの大晦日特番として放送されました。要するにこの企画、非常に人気の高いシリーズだったのです。

大人気だった「アツアツあんかけ対決」、「ゴボウしばき合い対決」


人気を集めたのは、なんといっても、食べ物を使用した対決の数々。チーズフォンデュ対決、ハチミツ入りバケツ頭突っ込み対決、Tシャツ小籠包対決、小玉スイカ対決、納豆かけ合い対決などなど……。字面だけで、笑いを予感させる対決がズラリ。

中でもこの企画の象徴とでもいうべき名物対決となっていたのが、アツアツあんかけ対決と、ゴボウしばき合い対決。
前者は中華鍋とおたまを片手に。後者は大量のゴボウが入った背負いかごを背負って。
そんな異形のままリング上で戦う2人の絵面と、山崎があんかけをかけられて熱がったり、ゴボウで脳天を割られて痛がったりするリアクションは、神がかり的な面白さをたたえていました。

ちょっとしたイタズラも社会問題になる時代…


しかし、その面白さとは紛れもなく反道徳的な面白さ。食べ物を粗末にしてはいけない。そんな子供でも守れるルールを、大人が堂々と突拍子もなく違反しているからこそ、破壊的な笑いがそこにはあったのではないでしょうか。

「最近はテレビを観ている人が“ボケ”を許さないですよ。子供の頃だったら、誰でも1度や2度やるようなイタズラも重大な社会問題になることだってあるし」

「ガキの使い」の構成作家・高須光聖はかつて、こんなふうにボヤいていました。彼が言うところによると、『山崎邦正vsモリマン』の食べ物系対決、特にゴボウしばき合い対決みたいなことは、視聴者からの苦情が酷くてもうできないのだとか。

テレビが“イタズラ”に対して寛容だったのは、今は昔のこと。子どもが真似するから、教育上よくないから……。そんな良識派とされる人たちの様々な批判を考慮しつつ、視聴率がとれるもの、面白いものを作らねばならない時代なのです。
テレビマンたちの苦悩は、これからいつまでも続くのでしょう。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonよりダウンタウンのガキの使いやあらへんで !! 2 松本一人ぼっちの廃旅館1泊2日の旅 ! [DVD]
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