中日ドラゴンズで50歳までプロ野球現役生活を続け、通算219勝を挙げたレジェンド山本昌。そんな山本が自身の投手としての技術をいかんなく伝えた著書が、『ピッチングマニア』(2016年発売)だ。


この本の中には、「スライダー=腐ったミカン」という山本の驚きの考えが明かされている。この言葉の真意はなんなのだろうか。

「スライダー=腐ったミカン」の理由


『ピッチングマニア』の中では、「スライダーを投げすぎることによって、ストレートに悪影響が出る」と、腐ったミカンと例えた理由を説明。腐ったミカンが他の新鮮なミカンも腐らせてしまうように、スライダーは他の球種に悪影響を及ぼすというのだ。

そのため、山本はブルペンでスライダーをほとんど投げなかったと明かしている。

山本昌が語るスライダー論


では、なぜスライダーを投げることでストレートに悪影響が出てしまうのか。山本は著書の中で次のように説明している。
「スライダーは、手首を寝かせれば誰でも投げられます。寝かせれば寝かせるほど、変化量が大きくなる。だから「曲げたい」「曲げよう」と思えば思うほど、本能的に手首が寝てしまうことになるのです」

この手首が寝てしまうというのが、実に厄介なのだ。投手が良いボールを投げるためには、基本的に手首を立てなければならない。実際、山本も同『ピッチングマニア』において、「手首を立てて、上から叩くように投げる」ことがピッチングの原則だと説いている。

しかし、よいスライダーを投げようとするあまり、手首が寝てしまってこの原則が疎かになってしまう。
だからこそ山本は、スライダーを「腐ったミカン」と表現したのである。

これらの点を踏まえて山本は、スライダーを投げる上でのアドバイスとして、「曲げようと思いすぎないこと」が大事だとしている。
結局、変化球を生かすのはストレートである。しかしよい変化球を投げることに意識が働きすぎると、本末転倒になってしまうのだ。
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