この本の中には、「スライダー=腐ったミカン」という山本の驚きの考えが明かされている。この言葉の真意はなんなのだろうか。
「スライダー=腐ったミカン」の理由
『ピッチングマニア』の中では、「スライダーを投げすぎることによって、ストレートに悪影響が出る」と、腐ったミカンと例えた理由を説明。腐ったミカンが他の新鮮なミカンも腐らせてしまうように、スライダーは他の球種に悪影響を及ぼすというのだ。
そのため、山本はブルペンでスライダーをほとんど投げなかったと明かしている。
山本昌が語るスライダー論
では、なぜスライダーを投げることでストレートに悪影響が出てしまうのか。山本は著書の中で次のように説明している。
「スライダーは、手首を寝かせれば誰でも投げられます。寝かせれば寝かせるほど、変化量が大きくなる。だから「曲げたい」「曲げよう」と思えば思うほど、本能的に手首が寝てしまうことになるのです」
この手首が寝てしまうというのが、実に厄介なのだ。投手が良いボールを投げるためには、基本的に手首を立てなければならない。実際、山本も同『ピッチングマニア』において、「手首を立てて、上から叩くように投げる」ことがピッチングの原則だと説いている。
しかし、よいスライダーを投げようとするあまり、手首が寝てしまってこの原則が疎かになってしまう。
これらの点を踏まえて山本は、スライダーを投げる上でのアドバイスとして、「曲げようと思いすぎないこと」が大事だとしている。
結局、変化球を生かすのはストレートである。しかしよい変化球を投げることに意識が働きすぎると、本末転倒になってしまうのだ。