遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研という、名バイプレイヤーたちが本人役としてシェアハウスで共同生活を送る。

……という設定のドラマ『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら』(テレビ東京・金曜24:12〜)。


第8話では、大杉漣がリメイク版『七人の侍』の企画がとっくに頓挫しているのを知っていたにもかかわらず、それを隠してみんなにシェアハウス生活を送らせていたということが判明。

大杉以外のメンバー5人がシェアハウスから出ていってしまい、おじさんたちの共同生活が終了してしまいます。
「バイプレイヤーズ」8話。日本アカデミー賞七冠直後「シン・ゴジラ」ネタというミラクル
イラスト/北村ヂン

そんなにみんなで一緒に暮らしたいのか(いいぞ!)


大杉がそんな嘘をついたのも、かつてみんなで撮っていた映画『バイプレイヤーズ』のフィルムを、この中の誰かが盗んだんじゃないかと疑っていたから。

犯人を見つけ出すため、馴染みのアジアンパブのホステスに動画チャンネルのアシスタントプロデューサーのフリをさせて『七人の侍』の企画がまだ生きているように見せかけたり、シェアハウス内のいたるところに監視カメラを設置したり……。

仲間を監視するためにそこまでする大杉漣、もはやサイコパスだよ!

しかし大杉のサイコっぷりは、5人が出ていってもまだ止まらない!

とにかく仕事に打ち込んで、がんばっている姿を見せることによって信用を取り戻し、5人をシェアハウスに呼び戻そうとするのだ。

いやいや、信用を取り戻そうとするのは分かるけど、他の5人がフィルムを盗んだんじゃないか疑惑、企画を売ったんじゃないか疑惑も晴れたことだし、別にシェアハウス生活を再開する必要はないんじゃない!?

大杉漣だって家庭があるんだから、自宅に帰ればいいじゃない!

まあとにかく、思い詰めたらとことん突っ走っちゃう大杉漣(ドラマ内の設定!)は、NHKから全民放キー局にテレビ埼玉、さらに低予算の自主映画まで仕事を入れまくって、がんばってるアピール全開。

しかし、さすがにその仕事量にはムリがあっあったのか、過労で倒れ仕事に穴を空けまくってしまう。

そこで立ち上がったのが、バイプレイヤーズの5人。

それぞれが分担して大杉の代役を務めてピンチを切り抜け、シェアハウスにも戻ってきてくれた!

……いやいや。

だから、仲直りするのはいいけど、シェアハウスをすることになった理由である『七人の侍』の企画自体がナシになったんだから、共同生活を再開する必要はないんじゃないの?

そんなに一緒にいたいの、キミたち!? ……視聴者としては嬉しいけど。

ストーリーのアラなんて気にさせない役者力!?


ツッコミどころは多数あるし、ストーリー自体もまあストレートで、先の読めるベタな展開。

ぶっちゃけて書いちゃうと、『バイプレイヤーズ』って脚本のクオリティとしては、そんなに高くはないよね?

しかし、細々としたツッコミどころや、大味な脚本も気にならず、結果的にすごく魅力的なドラマになっているのは、やはりベテラン役者陣の力量のおかげだろうか。

第1話で、とにかくメチャクチャ仲よくて楽しそうなシェアハウス生活をガッツリ見せられたことによって、そこで暮らすおじさんたちに思いっきり感情移入させられているというのも大きいかも知れない。

とにかく、出演者への感情移入の度合いは、他のドラマの比ではないのだ。


もはや、このドラマ以外……たとえば、4月12日に放送されるテレビ東京のドラマ『破獄』に松重豊と寺島進が出演するという話を聞いても、

「ああ、シェアハウスで一緒のふたりが共演なんて楽しみだなぁ〜」

と、『バイプレイヤーズ』設定で考えちゃうくらいだもん。

それくらい『バイプレイヤーズ』での姿をドキュメンタリーとして見ちゃっているので、多少のストーリーのアラは気にならない……というか、正直、ストーリーとかどうでもいい!

ドラマ終了後の「バイプレトーク」で大杉漣が、

「こっち(「バイプレトーク」)があんまり面白くなっちゃうと、本編がアレだから気をつけよう」

と言っちゃってたけど、ホントにドラマ本編以上に「バイプレトーク」で6人が酒飲んでくっちゃべってる姿に心奪われてるよ。

総理、ご決断を!


もちろん、ドラマ本編にちょいちょいぶっ込まれてくる小ネタも面白いんだけど。

第8話でいえば、『シン・ゴジラ』が日本アカデミー賞で7冠に輝いて話題となっていた3月3日の放送で、

「総理、ご決断を!」

という、『シン・ゴジラ』で大杉が演じていた総理大臣ネタをぶっ込んでくるミラクルさよ。(しかもBGMは『シン・ゴジラ』でも使われていた「宇宙大戦争マーチ」!)

これが、日本アカデミー賞の発表後に放送があるということまで読んだ上でのネタだったらスゴイけど、どうなんだろうか?

あとは、大杉漣が入れまくった仕事のひとつ、CXのドラマ『私はいつか父との日々を思い出して泣いてしまうだろう』(『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』オマージュだよね)での志田未来の演技にも心をグッとつかまれた。

あんなドラマ内ドラマの小ネタ的なシーンのために、どうしてあそこまで鬼気迫る演技ができるのか!? やっぱりスゴイよ志田未来。

急遽、大杉の代役を務めた寺島進の、そんな志田未来をも思わず笑わせてしまうほどにムリヤリ感のある「大杉漣風」メイクの破壊力もスゴかったけど。

第9話では、いよいよ映画『バイプレイヤーズ』の監督も登場し、大杉があそこまでこだわってきた映画の全貌が明らかになってくるようだ。

これまで出てきた情報から推測するに、明らかに『レザボア・ドッグス』のパクリっぽい映画『バイプレイヤーズ』とはどんなものなのか!?

ここにも一発、強力な小ネタが仕込まれているんじゃないだろうか。
(イラストと文/北村ヂン)
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