そのバリエーションは実に多彩。嘘か本当か分からない、信じるか信じないかはあなた次第。でも、話さずにはいられないウワサ話の数々は、口コミ・書物・ネット・テレビ番組などを介して広範囲に語り継がれてきました。
ここに一つ、00年代前半、爆発的に広まった都市伝説があります。それは松本人志が『ガキの使い』のフリートークコーナーでしゃべっていた“ある女優の実体験”です。
女優が自宅へ帰宅した際に起こった異変
話の一部始終は以下の通り……。
ある女優が仕事終わりに、自宅マンションへ帰宅したときのこと。エレベーターがやってきて扉が開くと、中には既に男が乗っていました。男は目深に帽子を被り、俯いています。
「こんばんわ」と挨拶をしても無視。何となく不気味に思いながらも、エレベーターの中へ。2人きりになっても、男は決して顔を見せようとしません。途中の階で扉が開き、足早に出て行く男。
「あっ、すいません」。女優が謝るも、それすらもスルー。変な人だなぁ……。そう思いつつ、自分の部屋へと戻ります。家の中で何の気なしに先ほど肩が当たった部分を見てみると、うっすら血の跡が。
いよいよ気味の悪さが募っていきます。
数日後、警察官が自宅へ訪ねてくる
そこから2~3日したある日。家にいたときに「ピンポーン」とチャイムが鳴ります。扉の覗き穴から確認すると、外には警察官が一人立っていました。
「何か御用ですか?」女優が問います。警察官は「実はこのマンションで数日前に殺人があった」と説明。加えて「怪しい人物を目撃しなかったですか?」と聞いてくるのです。
しかし、当時女優はドラマの撮影で多忙な時期。ここで「見ました」と言えば、事情聴取やら何やらで、どれだけ拘束されるか分かったものではありません。そこで女優は「知らないです」と回答。「そうですか」と警察官は去っていきました。
後に衝撃的事実が発覚!
翌日。女優がテレビを見ていると、彼女の住むマンションで殺人事件があったというニュースがやっていました。「やっぱりそうだったんだ」とテレビ画面を注視していると、「犯人は捕まった」との報と共に、犯人の顔写真が画面に映し出されました。
なんとそれは、昨日来た警官の顔でした。要するに、口封じのために殺しに来ていたのです……。
「室井滋の実体験」となった都市伝説
『ガキ使』ではピー音が入っていたものの、くだんの女優が室井滋であることを、松本は自身のラジオ番組『放送室』で語っていました。
けれども、室井滋は当事者でないことが後に分かっています。室井もこの話を誰かから聞き、それを『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングで披露。
それがどこで間違ったのか、「室井滋の体験談」として今田耕司が知り、松本へ伝えたために、誤った情報が流布することとなったのでした。
で、結局この話、いったい誰の体験談なのでしょうか? もっと言えば、本当にあった話なのでしょうか? 一つだけ確かなのは、『世にも奇妙な物語』や手塚治虫の漫画『ミッドナイト』、平山夢明の短編ホラー小説『東京伝説』にも似たような話があるということ。
事実を元にしたフィクションなのか、はたまた、フィクションが事実のように語られているだけなのか……。
真相は分かりませんが、いずれにしてもそのミステリアスさこそ、都市伝説の魅力であり、この話が広まった理由だったのではないでしょうか。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonよりHITOSI MATUMOTO VISUALBUM “完成"【豪華5枚組『寸止め海峡(仮題)』よりコント3本を追加収録】 [Blu-ray]