
主演は以前のシリーズ作品である『イップ・マン 序章』、『イップ・マン 葉問』に続き、ドニー・イェン。『ローグ・ワン』では帝国軍相手に大立ち回りを演じていたドニーさんが、イップ・マンシリーズに帰ってきた。監督は今までのシリーズ作品同様にウィルソン・イップ。今度の敵は元ボクシングヘビー級王者マイク・"耳食い"・タイソンに加えて元スタントマンで現在大注目のアクションスターであるマックス・チャンと、なんだか手強そうなメンツが揃っている。
戦うPTA、香港で大暴れ
舞台は1959年、好景気に沸く香港。その裏では悪質な地上げが横行し、また治安機関のトップであるイギリス人警察官と悪徳不動産屋の癒着が問題となっていた。香港に武館(日本でいう道場)を構え詠春拳を弟子に教えていたイップ・マンは、自らの息子が通っている小学校が不動産王フランクによる地上げのターゲットになっていることを知り、学校を守るために警備を買って出る。その中で彼は、同じ詠春拳を使うチョン・ティンチと知り合うことに。放火に誘拐などなりふり構わない手段を使ってくる地上げ屋と激しく戦いつつ、町の人々を守ることで名をあげるイップだったが、不遇の武道家チョンはイップに対抗意識を募らせる。そんな中、イップの妻ウィンシンにも危機が……。どうするイップ・マン! というストーリー。
本作の前半戦はめちゃくちゃ大雑把に言うと「頑張って地上げ屋から小学校を守れ!」という話。
というわけで、イップ・マンは住民たちから応援されたり息子をかばいつつマイク・タイソンと戦うことに。地元のおばさんたちから応援されつつヤクザと殴り合う様はまさに戦うPTA。同じ学校の父兄にイップ師父がいたら、そりゃあ頼りにしちゃうよ! タイソンともボクシングと詠春拳がぶつかり合うガチンコのバトルを繰り広げるので、アクション的にも見応えたっぷりだ。
言いたくないけど「愛」の物語だったんだよ!
本作のポスターに印刷されているキャッチコピーは「その拳が伝えるのは、愛」というもの。本編を見る前にはなんか説教くさいというか、戸塚ヨットスクールみたいなコピーだな……と正直思っていたし、また愛とか言ってインターネットの映画オタクが怒りそうだ……とも思っていた。でも見終わった今になると「確かに愛だな……」という感じである。その原因が本作の後半だ。
正当な詠春拳継承者の座をかけて、同門の詠春拳使いチョンがイップに戦いを挑んでくるのが後半戦。にも関わらず、そこでイップは戦いよりも重要なあるものに時間と手間を費やす。そこからどうやってチョンとの戦いに赴くのかはここでは書けない。だがしかし、今この原稿を書きながらその場面を思い返して泣きそうになっている。
見終わってしみじみ思うのは、この映画のタイトルはやはり「継承」だろうし、そしてキャッチコピーでは「愛」としか言えねえ……ということである。極めてレベルの高いアクションと熱すぎる感動を同時に味わえる映画なのは間違いない。公開規模は大きいとは言えないけど、なんとかして劇場で見て欲しい作品だ。
(しげる)