所轄VS警視庁、本格開戦! 日曜劇場/『小さな巨人』がヒートアップしてきた。内通者は小野田義信捜査一課長(香川照之)ではなく、三笠署長(春風亭昇太)だった!
出演者たちの力演もあって、先週放送の第4話の視聴率は13.5%とV字回復。

岡田将生にこんなに怒り顔が似合うとは思わなかった
巨大IT企業ゴーンバンクにまつわる殺人事件の真相を追う香坂真一郎(長谷川博己)ら芝署の面々。しかし、警察の捜査情報が漏れており、肝心なところで容疑者に逃げられてきた。内通者は警視庁の小野田捜査一課長に違いない……! そう確信した香坂は、渡部(安田顕)ら所轄の刑事と前回からめでたくパートナーに昇進(?)した山田(岡田将生)とともに小野田の悪事の証拠を掴もうとする。
堺雅人の無双ぶりが目立った『半沢直樹』に比べると、『小さな巨人』はバディ感、あるいはチーム感が強い。滑舌は異様に良いが怒り顔にあまり迫力がない長谷川を、めいっぱい顔を歪めた岡田将生がよくサポートしている。彼がこんなに怒り顔が似合う俳優だとは思わなかった。“わんこ俳優”だなんて書いて申し訳ない。
料亭で小野田とゴーンバンク社長・中田和正(桂文枝)との密会を張り込む香坂たち。しかし、すんでのところで香坂のたくらみは小野田に察知されてしまう! ふすまを開けて、無表情で長谷川を見下ろす香川照之がコワい! そして目を見開き、ぐいっとにじり寄る。
「つまり、内通者がいる。それが私だというわけか」
香川照之のテンションがふつふつと沸騰していくのがわかる。
「本当に、この私だと思っているのか? ……言ってみろぉ!」
来たぞ来たぞ。そして(なぜか)肘置きをパーンと薙ぎ払って、座敷にどっかと腰を下ろして一言。
「この警視庁捜査第一課長! 小野田義信の目ぇを見て答えろ!」
おもだかや! カメラもまっすぐ正面から香川照之の大見得を捉えてみせる。大画面テレビで見たら、かなりの迫力だっただろう。ここ最近はEテレ『昆虫すごいぜ』のインパクトが話題の中心だった香川だが、本業でも大爆発だ。香坂と小野田のこの対決シーンは『小さな巨人』前半のクライマックスの一つと言っていいだろう。
結局、香坂は小野田の悪事の証拠を掴むことができず、捜査は振り出しに。警察内部での立場も悪くなる一方となる。香坂と結託する山田の立場も危うくなってきた。香坂チームの大ピンチだ。
ヤキが回った加藤晴彦と笑い顔のまま怒る春風亭昇太
起死回生を狙う香坂は、ゴーンバンク中田社長の息子でナカタエレクトロニクス社長、中田隆一(加藤晴彦)のアリバイを証言していた女・山本アリサ(佐々木希)を狙う。
『小さな巨人』では加藤晴彦が地味にナイスキャスティング。
山本アリサを自首に導いた香坂たちだったが、実は一つの罠をかけていた。その罠にかかったのが……なんと、元捜査一課長であり、現在は芝署署長、そして香坂を育て上げた恩師である三笠署長だった! 冷静に問い詰める香坂に対し、温厚だった三笠署長が絵に描いたような逆ギレを見せる。
「この親不孝者! 謝れ。今だったら許してやる。恩義ある私を疑ったことの非礼を詫びろ。地べたに這いつくばって、誠心誠意謝罪しろ! 香坂ァ!」
自分の悪事を追及する部下に対して「親不孝者」となじるところが面白い。上司は親で、部下は子ども。日本的な組織は疑似家族ということか。そして上司(親)の言うことが理不尽でも部下(子)は逆らうことができないのだ。
それにしても、これまでずいぶん大人しくしていた春風亭昇太だったが、ここで怪演が爆発! 笑顔のまま怒っているように見えるからものすごく怖い。
結局、ここでも香坂は三笠署長に決定的なダメージを与えることができなかった。香坂はいつも証拠を掴んでいない。「証拠を出せ」といつも敵に嘲笑われているが、逆に言えば香坂は自らの「勘」に従っているということ。ここで言うところの「勘」というのは、自分の心であり、信念だと言い換えることができるだろう。香坂は勘を貫き通すことができるのだろうか?
芝署編は本日放送の第5話で完結! はたして三笠署長の悪事の全貌とは? 「警察組織全体を敵に回す」という言葉の意味とは? 警察内部の悪事を本格的に描くことができれば、『小さな巨人』はなかなか骨のあるドラマだということになる。期待!
(大山くまお)