「敵は味方のふりをする。我々の最大の敵は、あの人だったんだ――!」

TBS系夜9時からの日曜劇場『小さな巨人』。
警察という巨大組織の中で自分の正義を貫こうとする男の戦いを描く。

誰が敵で誰が味方なのかわからず、それぞれの思惑がなかなか見えてこないもどかしさが影響してか、先週放送された第3話の視聴率はググッと下がって11.7%。しかし、ラストでいよいよあの男の正体が判明! まずは第3話を振り返ってみよう。
今夜4話「小さな巨人」長谷川博己とストーカー岡田将生がバディになった
公式サイトより

所轄の仲の良さを見つめるわんこ山田


警視庁の捜査一課から所轄に左遷されたエリート刑事の香坂真一郎(長谷川博己)は、所轄の刑事・渡部(安田顕)らとともに、巨大IT企業ゴーンバンクが絡む殺人事件を追っていた。

しかし、捜査の糸口になるはずの池沢菜穂(吉田羊)は逮捕後、供述を撤回。これを失態と見た捜査一課長・小野田義信(香川照之)は自ら陣頭指揮を執り、香坂らの所轄に特別捜査本部を置く。

一方、小野田に捜査を任されていた捜査一課の若きエリート刑事・山田春彦(岡田将生)も窮地に立たされていた。
今回は香坂と渡部のストーカーをする暇もなく、独自に情報を入手しようと悪戦苦闘する。

小野田の指示とは別に、事件の鍵を握るゴーンバンク社長の息子、中田隆一(加藤晴彦)と一緒にいた謎の女・山本アリサ(佐々木希)を追う香坂たち。だが、またしてもすんでのところで捜査一課がアリサの身柄を確保してしまった。

所轄の情報を捜査一課に漏らしている者がいる。犯人は捜査一課に憧れる若手刑事・中村(竜星涼)か――と思わせておいて、実はネチネチと香坂にイヤミを言い続けていた副署長の杉本(池田鉄洋)だった。

香坂らに現場をおさえられ、見苦しく言い逃れしようとするも、結局は取り押さえられる杉本。
捜査一課に戻る予定だった杉本は、人事を盾に中村を脅して香坂らの情報を取り、小野田らに横流ししていたのだ。香坂に「この泥棒が!」と成敗される杉本、所轄の仲間たちに笑顔で許される中村、それをうらやましそうに見つめるわんこ山田……。

香坂は再び山本アリサを確保しようとするが、アリサは間一髪で逃亡。このドラマ、所轄の香坂たちが犯人を確保できたためしがない。捜査情報をアリサに漏らしていたのは、誰あろう捜査一課長・小野田だった! 小野田はゴーンバンク社長・中田(桂文枝)や隆一、アリサらを守る一方、リベートを受け取って私腹を肥やしていたのだ。

「警察内部に裏切り者がいる!」。
山田からの情報提供で、香坂は小野田が悪事に加担していたと確信する。晴れてストーカー山田は香坂のバディに昇進し、小野田追及へと共に歩む!

権力×正論×大声=うっとり


今回のエピソードは杉本、小野田と裏切り者の二重構造になっていた。警察、裏切り者が多いな! 

杉本が成敗されるシーンは、残念ながら『半沢直樹』で小悪党の小木曽(緋田康人)がやりこめられるシーンほどのカタルシスはなかった。ここまで杉本のあくどさがそれほど強調されていなかったことと、杉本の処遇が明らかにされなかったことが原因だろう。

やはり巨悪として浮かび上がってきたのが捜査一課長・小野田義信だ。表では正論を言い、部下たちを駆使して職務を遂行しつつ、裏で悪事に手を染めてほくそ笑む。
第3話の白眉は、特別捜査本部での演説シーンだ。

旭日章をバックに「真実を語る者よりも語らない者のほうが罪は軽いというわけだ。これのどこが正義だぁ!」と大見得を切るが、実際に誰よりも真実を語っておらず、罪にも問われていないのは小野田自身である。ところが、それを知らない捜査一課と所轄の刑事たちは小野田の言葉にシビれてしまっている。うっかり「その通りだ」と思ってしまった視聴者もいるかもしれない。

「ここにいる全員の力を借りたい! 必ず真相を突き止めろぉぉ!」と煽られ、デカい声で「はい!」と返事してしまっている。
旭日章=権力×正論×大声のかけ算は、人々をうっとりさせる。その陰で権力者は、自分の欲望のまま、さらなる強大な権力を得て、私利私欲を優先する。これは現代の日本の縮図である。

小野田を冷めた目で見ているのは、誰よりも小野田の性質を知る香坂だけだ。巨悪を暴くためには、よく敵を知り、地道な証拠の積み重ねが必要になる。

香坂と渡部の所轄タッグ、香坂と山田のエリートタッグがどのようにカネ=巨大IT企業ゴーンバンクと権力=捜査一課長の悪事を暴いていくか? 物語的には、ようやくスタートラインにたどりついたと言っていい。
第4話は今夜9時から。

(大山くまお)