
子どものころに、玩具の「ミニカー」で遊んだことはあるでしょうか。多くの少年たちはパトカーや消防車などの働く車に興味を抱き、ミニカーを手に取って遊んだと思います。
そのミニカーを実際の自動車さながらに、格好良く撮影する写真家がいます。野外ミニカー写真家のELPACHO PAMYOLE(エルパッチョ・パミョーレ、以降EP氏)氏はカーグラビアに近い感覚で、ミニカーをスマートに撮影していきます。今回、ミニカーの撮影についてEP氏からお話を聞いてきました。
ミニカーも外を走りたい!
――ミニカーの写真を撮り始めたきっかけは?
僕は2年ぐらいフリーターをやっていた時期があって、その時は暇を持て余しながら「何か楽しいことはないかな」と考えていまして。ふと「車は外を走っているから、ミニカーも外を走りたいんじゃないかな」と思いつきました。当時持っていたガラケーとミニカーを片手に、外で撮影したことがきっかけです。

――今までミニカーを通して、どのような活動をしましたか?
最初は撮影した写真をブログに掲載するだけでした。転機は2013年の「やる気のないサラリーマン展」という共同展に出展してからです。翌年には同人写真集をデザインフェスタで頒布。そこで知り合ったデザイナーさんと協力して2冊目も去年頒布しました。現在は夏に向けて3冊目を製作中です。他には初心者向けの『撮ろう!ミニカーの写真』というコピー本も作っていて、その関係で小規模の撮影会を2回ほど開きました。撮影会の様子に基づいて、初心者でも撮れるレクチャー本を作る予定です。
海外でも人気なミニカー撮影
――ミニカーには国産のトミカやアメリカ産のホットウィールなど様々なメーカーがありますけど、ミニカーの種類も変われば撮り方も変わりますか?
まず撮影する上で一番大きいのは、メーカーより車種を意識すること。そのミニカーの元になった車のイメージをミニカーの写真で表現するために、どういう人がよく乗っている車なのか、対象となる車の歴史などを調べます。ホットウィールは他のミニカーブランドと違って、オリジナルの車種や極端なデフォルメが多いです。ホットウィールのデザイナーは業界ではカリスマで、彼らの作家性が色濃く出ていますね。そういったミニカーは、彼らと対話する感覚で撮っています。

――ミニカー写真は海外だと結構ポピュラーと聞きました。
日本にも何人かいますけど、世界に視野を広げるとミニカー写真家は多いです。最近インスタグラムも始めたんですが、投稿した写真をインドネシア人の写真家が気に入ってくれまして。そこで、「俺たちのコミュニティに入らないか?」とFacebookにある野外ミニカー撮影コミュニティに誘われました。そのコミュニティは総勢2万6000人、規模を考えるとインドネシアでは人気の趣味なんですよ。そのコミュニティには週間ランキングがあるのですが、僕の写真がベスト3に入賞。「彼のような写真を撮影しよう」トピックスが立つくらい反響があって驚きました(笑)。

かっこよく撮れたら嬉しい
――ミニカー撮影に対するこだわりや、気をつけていることを教えてください。
僕がいつも大事にしているのは、「かっこよく撮れたら嬉しい」という気持ちです。だけど一時期「ミニカーで何を表現したくて撮影しているんだろう?」って悩んでいました。そんな時、雑誌『カーグラフィック』を読んで「コレだ!」と。そこに載っていた写真は車が魅力的に撮られていて、僕もミニカーを魅力的に表現したいと思い始めました。
それから、六本木で開催されていた日本レース写真家協会(JRPA)の展示会。そこで観た写真は単にレースカーを撮影しただけではなく、写真の奥に深いテーマがありました。それを見て自分がいかに無力であるかを痛感して…。それ以来ミニカーの写真を撮影する上で、被写体の奥にある「テーマ」を考え始めました。これらの経験から、「魅力を引き出す」、「テーマを見出す」という二つの視点を意識しています。

――あなたにとってのミニカーとは?
僕にとってミニカーは、「一番魅力を引き出したい対象」。個人的に「ミニカーの写真でてっぺんを取りたい」という目標を掲げています。自分でも「てっぺん」というのはよく分かっていないけど(笑)、自分のやっていることが100%満足できる状態を目標にしています!

精巧な「ミニカー写真」を撮影するEP氏は、一回一回の撮影に妥協しない姿勢で臨んでいました。
(高橋アオ)
E.P.氏のインフォメーション
写真集は即売会などのイベントで頒布
直近 8/12 コミックマーケット92
サークルスペースは東ホ54a
Twitter: ミニカーの写真bot(@minicar_love_)