「おっさんレンタル」の存在をなんとなく知っている人は多いでしょう。個性豊かな“おっさん”を1時間1000円からレンタルできるサービスで、本気の相談から雑談、ちょっとしたお使いまで幅広いニーズに応えてくれます。
筆者も先日「おっさんレンタル」を利用して引っ越しの手伝いをしてもらったのですが、その際、「“おっさん”同士の交流は基本的にない」という話を聞きました。人手が必要な作業で複数のおっさんがレンタルされるケースも時々あるものの、基本的に他のおっさんと会う機会はないそう。……飲み会とかすればいいのに! それぞれの苦労話とか絶対楽しそうじゃん!
そう思い、今回は「おっさんレンタル」立ち上げ人であるファッションプロデューサー・西本貴信さん、東大卒という経歴から仕事や勉強に関する相談を受けることが多い山田さん(仮名)、依頼として人々の相談を受けるうちに「専門家として仕事ができないか」と考え、資格を取って本業カウンセラーになってしまったヘイさん、3名のおっさんに集まってもらい、初の“おっさん同士の座談会”を開催。おっさんも初めて聞く、他のおっさんの仕事内容とは……!?
――おっさんレンタルは、西本さんの面接を経て採用が決まるそうですね。面接ってどんなことを話すんですか?
西本「世間話しかしていませんよ。顔合わせくらいの気持ちです。でも上から目線に感じた人は落とすかな。おっさんって、やっぱりそういう感じの人いるじゃないですか(笑)」
――山田さんと平さんは、なぜおっさんに申し込みを?
ヘイ「たまたま無職だった時期に、友達から『これやってみればいいじゃん』って勧められたんです。私は今アラフィフで、社会人として30年くらい働いて転職経験もあるので、何か若い方に教えてあげられたらいいなというボランティアのような気持ちでした」
西本「山田さんの面接は覚えていますよ。数学を教えたいっていう話。僕、感動したんですよ」
山田「数学力もそうですけど、全体的な学力の低下を感じています。だから、ちょっとした勉強のコツを教えたいっていう気持ちがすごくあるんです。
――どんな依頼が来るんですか?
山田「転職相談、キャリアアップ。職場の人間関係の悩みや、勉強関係の相談など。あとはイギリスに留学した経験があるので、イギリス旅行でオススメの場所を聞かれることもがあります。単なる世間話の相手を頼まれることもありますが、仕事関係の相談を依頼されることが多いですね」
ヘイ「私も真面目な相談が多い。でも飲みの相手になってほしいみたいな軽い依頼もちょいちょいありますよ。飲みレンタルは一番得した気持ちになれる(笑)」
山田「私は飲み相手としてのレンタルは1回だけです。そんな気軽な依頼もほしい……(笑)。私は深刻な相談事を受ける場合がほとんどなんですが、他の方もそんなもんなんでしょうか?」
――西本さんは、軽い感じの相談もいろいろ受けているそうですが。
西本「作業系は結構好きですね。作業の合間に、意外と深い話ができたりするんですよ。本当にめっちゃしょうもない依頼もありますよ。あだ名つけてくれとか、椅子の足つけてくれとか。あとはカタログ見せられて『これとこれ、どっち買ったらいいですか』とか。
――そういう些細なことをわざわざ依頼するのって、天真爛漫な性格をしているようですけど、むしろ日常生活で考え込んでしまうからこそなんでしょうね……。
――今までで印象に残った依頼はどんなものですか?
山田「20代の女性で、会社を辞めて、資格を取るために専門学校に入りたいという方がいました。その方に数学や英語を教えて、専門学校にちゃんと合格してくれたんです。その方は今、まさに自分の夢に向かって走っているので、少しでもお役に立てたのは嬉しかったです。あと、ディープな依頼だと、こちらも女性で、夫のDVが原因で離婚して実家に戻って地方に住んでいらっしゃる方だったんですけど、稼がないといけないのに田舎だから仕事がないという悩み相談でした。難しい内容だから、僕もなかなか答えられないじゃないですか。でも答えをほしいというよりは、ただ話を聞いてほしかったのかな。そういう印象でした」
ヘイ「僕が一番印象に残っているのは、母子家庭の息子さんからの相談で、『母親が危篤状態になってしまったけど、友達もいなくて相談できる人がいない』というものでした。リピートしてもらっているうちに、お母さんが亡くなってしまって、『これからどうしよう』みたいな話も含めて3カ月くらい話を聞いていました。今でもたまーに連絡来ますよ。
西本「細く繋がっている感じがいいですよね。僕らから営業かけることはないですけど、あの人何してんのかなーって思い出すことはあります」
山田「たまに向こうからメール来たりしますもんね」
――「おっさんレンタル」って、バラエティなんかで面白サービスのように扱われていますけれど、結構本気の相談が多いんですね……。
ヘイ「“聞いてもらえればいい”っていうタイプの相談が相当数だと思いますよ。誰にも言えないから、見ず知らずのおっさんに聞いてもらうっていう」
西本「前にヘイさん、おっしゃっていましたね。日本ではカウンセリングを受けるとなると5000円、1万円かかるから高いって」
ヘイ「日本はカウンセリングという存在が定着していないんですよ。カウンセリングといってもいろいろあるのに、日本だと全部が心理カウンセラーと見られてしまって、『カウンセリングに行った』という人がいたら、何か病んでいるんじゃないかと周りに勘違いされてしまう」
――海外におけるカウンセラーのような役割を、おっさんレンタルが担っている部分があるのかもしれませんね。
山田「医者でもないし、ちょっと軽い相談相手っていうくらいのね」
――1時間1000円だと、これで稼ぐっていう感じにはなりませんよね。おっさんレンタルを続けている理由とはなんでしょうか?
西本「達成感が意外とあるんですよ。『俺、結構いいことしたやん』みたいな」
ヘイ「毎日楽しいですよ、本当に。人に感謝される、喜ばれるっていうのは大きいです」
山田「この年になると、仕事で怒られることはあっても、わざわざ褒められたり感謝されることはないですしね(笑)」
――おっさん側も受け取るものが大きいんですね。
西本「この前、うちのおっさん亡くなったんですよ。それで奥さんから『少しの間しかできなかったけど、主人はすごく楽しかったみたいです』ってメールが来ました。僕が面接した時点で、余命短い状態の方だったんですけど、人の役に立ちたいって、やっぱりそういうとき思うものなのかな」
山田「『おっさんレンタル』では、“人のためになっている”っていう感覚が得られる。
ヘイ「毎日飽きない。楽しいですよ、本当に」
何の変哲もない中年男性に見える彼らですが、『おっさんレンタル』について語るときは本当に楽しげで、誰かに求められている人というのは、いくつになっても活き活きと若々しく見えるものだなぁ……としみじみ。
なお、西本さんは、店舗型『おっさんレンタル』のオープンを視野に入れており、さらに“おっさん輸出”というのも構想にあるそう。
西本「おっさんをタンカーに載せて海を渡らせてね。外国でも『おっさんレンタル』をさせて、代わりに向こうの国からの留学生を受け入れるとか。おっさんなんて日本にたくさんいられても困りますし(笑)」
そう自虐してみせるのでしたが、若者としては、こんな“おっさん”なら、もっと世の中に増えてほしい! と思ったのでした。
(HEW)
多数のバラエティ番組でも紹介されており、また昨夏は「夏コミの売り子を『おっさんレンタル』にお願いしたという話」というレポート漫画がTwitter上で話題になりました(その後書籍化)。もしかすると、あなたの知り合いにも「『おっさんレンタル』を利用したことがある」という人がいるかも?
筆者も先日「おっさんレンタル」を利用して引っ越しの手伝いをしてもらったのですが、その際、「“おっさん”同士の交流は基本的にない」という話を聞きました。人手が必要な作業で複数のおっさんがレンタルされるケースも時々あるものの、基本的に他のおっさんと会う機会はないそう。……飲み会とかすればいいのに! それぞれの苦労話とか絶対楽しそうじゃん!
そう思い、今回は「おっさんレンタル」立ち上げ人であるファッションプロデューサー・西本貴信さん、東大卒という経歴から仕事や勉強に関する相談を受けることが多い山田さん(仮名)、依頼として人々の相談を受けるうちに「専門家として仕事ができないか」と考え、資格を取って本業カウンセラーになってしまったヘイさん、3名のおっさんに集まってもらい、初の“おっさん同士の座談会”を開催。おっさんも初めて聞く、他のおっさんの仕事内容とは……!?
『おっさんレンタル』の面接とは

ヘイさん(左)、西本さん(右)。山田さんは職場だけでなく妻にも“おっさん”であることは隠しているため、顔出しはナシ。
――おっさんレンタルは、西本さんの面接を経て採用が決まるそうですね。面接ってどんなことを話すんですか?
西本「世間話しかしていませんよ。顔合わせくらいの気持ちです。でも上から目線に感じた人は落とすかな。おっさんって、やっぱりそういう感じの人いるじゃないですか(笑)」
――山田さんと平さんは、なぜおっさんに申し込みを?
ヘイ「たまたま無職だった時期に、友達から『これやってみればいいじゃん』って勧められたんです。私は今アラフィフで、社会人として30年くらい働いて転職経験もあるので、何か若い方に教えてあげられたらいいなというボランティアのような気持ちでした」
西本「山田さんの面接は覚えていますよ。数学を教えたいっていう話。僕、感動したんですよ」
山田「数学力もそうですけど、全体的な学力の低下を感じています。だから、ちょっとした勉強のコツを教えたいっていう気持ちがすごくあるんです。
人に何か教えること自体がもともと好きなんですよね」
「20秒で終わった」軽い依頼
――どんな依頼が来るんですか?
山田「転職相談、キャリアアップ。職場の人間関係の悩みや、勉強関係の相談など。あとはイギリスに留学した経験があるので、イギリス旅行でオススメの場所を聞かれることもがあります。単なる世間話の相手を頼まれることもありますが、仕事関係の相談を依頼されることが多いですね」
ヘイ「私も真面目な相談が多い。でも飲みの相手になってほしいみたいな軽い依頼もちょいちょいありますよ。飲みレンタルは一番得した気持ちになれる(笑)」
山田「私は飲み相手としてのレンタルは1回だけです。そんな気軽な依頼もほしい……(笑)。私は深刻な相談事を受ける場合がほとんどなんですが、他の方もそんなもんなんでしょうか?」
――西本さんは、軽い感じの相談もいろいろ受けているそうですが。
西本「作業系は結構好きですね。作業の合間に、意外と深い話ができたりするんですよ。本当にめっちゃしょうもない依頼もありますよ。あだ名つけてくれとか、椅子の足つけてくれとか。あとはカタログ見せられて『これとこれ、どっち買ったらいいですか』とか。
でも、それを1人で決められない子もいるんですよ。若い子っていろんな人の視線を気にしているのかな? たとえば、婚活のためのプロフィール写真をiPhoneで撮ってくれっていう依頼もあったんですよ。婚活サイトに登録するって知られるのが恥ずかしくて、身近な人に頼めないんでしょうね。20秒で終わりましたけど、結構いい写真が撮れましたよ(笑)」
――そういう些細なことをわざわざ依頼するのって、天真爛漫な性格をしているようですけど、むしろ日常生活で考え込んでしまうからこそなんでしょうね……。
人生の節目に立ち会うような依頼も
――今までで印象に残った依頼はどんなものですか?
山田「20代の女性で、会社を辞めて、資格を取るために専門学校に入りたいという方がいました。その方に数学や英語を教えて、専門学校にちゃんと合格してくれたんです。その方は今、まさに自分の夢に向かって走っているので、少しでもお役に立てたのは嬉しかったです。あと、ディープな依頼だと、こちらも女性で、夫のDVが原因で離婚して実家に戻って地方に住んでいらっしゃる方だったんですけど、稼がないといけないのに田舎だから仕事がないという悩み相談でした。難しい内容だから、僕もなかなか答えられないじゃないですか。でも答えをほしいというよりは、ただ話を聞いてほしかったのかな。そういう印象でした」
ヘイ「僕が一番印象に残っているのは、母子家庭の息子さんからの相談で、『母親が危篤状態になってしまったけど、友達もいなくて相談できる人がいない』というものでした。リピートしてもらっているうちに、お母さんが亡くなってしまって、『これからどうしよう』みたいな話も含めて3カ月くらい話を聞いていました。今でもたまーに連絡来ますよ。
元気に暮らしています」
西本「細く繋がっている感じがいいですよね。僕らから営業かけることはないですけど、あの人何してんのかなーって思い出すことはあります」
山田「たまに向こうからメール来たりしますもんね」
おっさん=カウンセラー?
――「おっさんレンタル」って、バラエティなんかで面白サービスのように扱われていますけれど、結構本気の相談が多いんですね……。
ヘイ「“聞いてもらえればいい”っていうタイプの相談が相当数だと思いますよ。誰にも言えないから、見ず知らずのおっさんに聞いてもらうっていう」
西本「前にヘイさん、おっしゃっていましたね。日本ではカウンセリングを受けるとなると5000円、1万円かかるから高いって」
ヘイ「日本はカウンセリングという存在が定着していないんですよ。カウンセリングといってもいろいろあるのに、日本だと全部が心理カウンセラーと見られてしまって、『カウンセリングに行った』という人がいたら、何か病んでいるんじゃないかと周りに勘違いされてしまう」
――海外におけるカウンセラーのような役割を、おっさんレンタルが担っている部分があるのかもしれませんね。
山田「医者でもないし、ちょっと軽い相談相手っていうくらいのね」
「おっさんレンタル」を続ける理由
――1時間1000円だと、これで稼ぐっていう感じにはなりませんよね。おっさんレンタルを続けている理由とはなんでしょうか?
西本「達成感が意外とあるんですよ。『俺、結構いいことしたやん』みたいな」
ヘイ「毎日楽しいですよ、本当に。人に感謝される、喜ばれるっていうのは大きいです」
山田「この年になると、仕事で怒られることはあっても、わざわざ褒められたり感謝されることはないですしね(笑)」
――おっさん側も受け取るものが大きいんですね。
西本「この前、うちのおっさん亡くなったんですよ。それで奥さんから『少しの間しかできなかったけど、主人はすごく楽しかったみたいです』ってメールが来ました。僕が面接した時点で、余命短い状態の方だったんですけど、人の役に立ちたいって、やっぱりそういうとき思うものなのかな」
山田「『おっさんレンタル』では、“人のためになっている”っていう感覚が得られる。
それが一番大きいと思います」
ヘイ「毎日飽きない。楽しいですよ、本当に」
何の変哲もない中年男性に見える彼らですが、『おっさんレンタル』について語るときは本当に楽しげで、誰かに求められている人というのは、いくつになっても活き活きと若々しく見えるものだなぁ……としみじみ。
なお、西本さんは、店舗型『おっさんレンタル』のオープンを視野に入れており、さらに“おっさん輸出”というのも構想にあるそう。
西本「おっさんをタンカーに載せて海を渡らせてね。外国でも『おっさんレンタル』をさせて、代わりに向こうの国からの留学生を受け入れるとか。おっさんなんて日本にたくさんいられても困りますし(笑)」
そう自虐してみせるのでしたが、若者としては、こんな“おっさん”なら、もっと世の中に増えてほしい! と思ったのでした。
(HEW)
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