イスラーム教の断食明けの食事「イフタール」をムスリム協会で食べてきた

イスラーム教で毎年行われる「ラマダーン」。ラマダーンとはイスラーム暦の9月に断食を行なうことを指す。
この月は、日が昇る時から日が沈むまではなにも口にいれず、日が完全に沈んでから食事をするのだ。今年は、西暦の5月26日から6月24日まで。

ハラール食を扱うレストランを日本でもよく見かけるようになったが、ラマダーンの食事会は各地の団体で行われているという。そこで、日本ムスリム協会が行っている夕食会に参加してみた。イスラーム教徒でない人も歓迎する旨がTwitterで事前に告知されており、これは気軽に参加しても良いのでは?と思ったからだ。


「日本人のイスラームに対する接点はニュースしかない」


食事会の場所は東五反田にある日本イスラーム文化交流会館。
イスラーム教の断食明けの食事「イフタール」をムスリム協会で食べてきた
東京東五反田の閑静な住宅街にある日本イスラーム文化交流会館

ムスリムとはイスラーム教徒のこと。中に入るとムスリムになって50年という男性の会員の方が快く迎えてくれた。小さいながらもアットホームな雰囲気である。
イスラーム教の断食明けの食事「イフタール」をムスリム協会で食べてきた
会員の皆さんが奉仕で食事を作っている

まずはなぜ今回ツイッターで募集したのかを聞いてみたところ、
「日本人のイスラームに対する接点はニュースしかありません。イスラームについて日本人は誤解されている部分が多い。なので、このような食文化の交流で正しいイスラームを理解してもらいたいので開催しています。ここでは食生活の紹介から講演会など様々な活動を行っています」とのこと。

運営は定年退職後の人もいれば、企業で仕事をしている人も。また大学に勤務している人たちも多いという。
「国籍も関係なくみんな一緒の同じテーブルで食べて語りましょうという機会ですよ」とにこやかに食卓に案内された。

時間は18時55分。日没の時刻が決まっているのでそれをみなさん待たされている様子。そして、日没時間ぴったり18時58分になるとアザーン(礼拝の呼びかけ)が高らかに鳴り、各テーブルに配られた水とデーツを各々食しはじめた。
イスラーム教の断食明けの食事「イフタール」をムスリム協会で食べてきた
デーツはビタミンやミネラルなど栄養豊富な果物

「断食明けの作法は、すべては預言者の言行録が見本になっています。預言者に習ってまず水で喉を潤しデーツを食べ日没の祈りに入ります。世界中のムスリムが同じ日没時間にその日の断食が終わったあとにデーツを食べる。それは人種を超えた素晴らしいことです。それから礼拝して、そのあとゆっくり食事を食べるのが習わしです」


徳を積める“ボーナスステージ”の礼拝


デーツを食べ終わるとみなさんおもむろに礼拝堂へと上がります。(筆者は女性のため見学のみ)
イスラーム教の断食明けの食事「イフタール」をムスリム協会で食べてきた
ここは共用の礼拝堂ですが今日は男性だけ

男性と女性は別フロアに分かれてお祈りをささげる。
イスラーム教の断食明けの食事「イフタール」をムスリム協会で食べてきた
全員で並んだ後、祈りを捧げる
イスラーム教の断食明けの食事「イフタール」をムスリム協会で食べてきた

お祈りが終わったあとに残っている人とそうでない人がいたので近くにいた女性に聞いてみると、
「カンタンにいうとボーナスステージです。
決まった礼拝はみんなでやりますが、その後も任意の礼拝をするとボーナスがいただける。やらない人もいるけど、やったらボーナスポイントになる。やらないからと責められるわけではない」と教えてくれた。
意外や意外、そんな仕組みになっていたとは。
ちなみに、例えて言っていただいたボーナスとは神様に対する徳のこと。現金とかではないので念のため。
「自分のためにボーナスステージの礼拝ができなくても、みんなの食事を振る舞う準備をしてもボーナスステージになる。みんなのための行動もボーナスです」(同女性談)


国境の隔てなく食事を取る機会に


さて礼拝が終わり、いよいよ食事時間になった。今日のメニューは協会の副会長の作る牛肉の煮込みとサラダ、鳥の素揚げ、アラブ風炊き込みごはん、マグロのカルパッチョなどハラール食。お米はインディカ米を使用。
イスラーム教の断食明けの食事「イフタール」をムスリム協会で食べてきた
会員の手作りの食事。もちろんハラール食
イスラーム教の断食明けの食事「イフタール」をムスリム協会で食べてきた
イスラーム教の断食明けの食事「イフタール」をムスリム協会で食べてきた

「こうやって日本人もアラブ人もインドネシア人もトルコ人も国境の隔てなく一緒の席で食事を取ることができるのは素晴らしい機会です」
イスラーム教の断食明けの食事「イフタール」をムスリム協会で食べてきた
多国籍な会員が集まっている

夜の礼拝が終わったあとに、タラウィーフと呼ばれる特別な礼拝があるそう。さきほどの日没の礼拝はマグリブ、夜の礼拝はイシャー、未明の礼拝はファジュルと呼ぶ。
タラウィーフの礼拝は特別に長い時間をかけて行われるとのこと。

協会ではイスラーム文化を広げるために、語学や文化を学ぶ教室を行っている。
参加したい場合は、あくまでの宗教施設なので利用している方々の邪魔にならないよう、可能なら女性は露出の少ないロングスカート、髪はスカーフで隠すようにしよう。
(カシハラ@姐御)
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