1997年夏、『ASAYAN』から生まれた女性3人組ユニット「Say a Little Prayer」をご記憶だろうか?

モーニング娘。が誕生する前の話。
それどころか、モー娘。誕生のための実験台とさえ思われる悲運のユニットである。

小室哲哉のオーディション落選→デビュー予備軍ユニットで再起を図る


当時の『ASAYAN』は、小室哲哉によるオーディション企画「コムロギャルソン」が番組の軸となっていた。全国規模のオーディションを行い、勝ち抜いたものが小室プロデュースでCDデビューするまでをドキュメンタリー方式で追う企画だ。

その京都オーディションに参加した片桐華子、茨城オーディションに参加した田口理恵、さらに『ASAYAN』の収録を観覧していたところをスタッフにスカウトされた大櫛江里加の3人が後にSay a Little Prayerを結成することになるのだが、そこに至るまでが実に波瀾万丈。『ASAYAN』の企画に翻弄されまくった感が否めないのである。

彼女たちが参加したのは「小室哲哉プロデュース 女性ボーカリストオーディション」。しかし、これを機にユニットが結成されたのではない。彼女たちは落選組である。
この時の優勝者は西野妙子。当時、微妙な立ち位置にいたアイドルだったが、taecoとして後に振付師となるkaba(現KABA.ちゃん)、後に小室の嫁となるasamiと共にdosを結成。人気ユニットになったのはご存知の方も多いはずだ。
もっとも、そのブレイク期間は短く、わずか1年ほどで活動自体はフェードアウトしてしまったのだが。


このオーディション参加者自体はレベルが高い逸材ぞろいだった。そこで、落選者を選抜する形で、9人組のデビュー予備軍ユニット「AIS(アイス)」を結成。後にSay a Little Prayerとなる3人もここに参加し、メジャーデビューに向けて、歌にダンスに猛特訓に励むことになる。

モー娘。誕生が敗者復活からなのは有名な話だが、その企画の原点こそがここにある。モー娘のオーディションで恒例となるお寺合宿も、実はAISメンバーたちがひと味早く経験済み。そう考えると、AISはモー娘。のプロトタイプだったのかも知れない!?

CM出演→没→河村隆一プロデュースで復活デビュー!


歌とダンスの特訓を積み、公開オーディションに臨んだ片桐、田口、大櫛だったが、ここでもデビューチャンスを掴めず。しかし、そこに助け舟が。この3人にCMオファーが舞い込んだのだ。
奇跡の逆転劇に番組は盛り上がったが、この話も途中で立ち消えに……。この辺り、どこまでガチだったのだろうか?

ここからが粘り腰。他のメンバーが『ASAYAN』を卒業していった中、残った3人にメジャーデビューのチャンスが到来。
まさかの、河村隆一プロデュースが決まったのだ。
この頃の河村は、LUNA SEAを離れてのソロ活動でミリオンを連発。酒井法子を始め、プロデュース活動でも快進撃を続けていた時期に当たる。その超売れっ子を起用しての肝いり企画がスタートしたのだ。

Say a Little Prayerとしてのメジャーデビューに用意されたハードルは、タワーレコード渋谷店でインディーズCDを10日間で1万枚手売りすると言うもの。当時、人気絶頂だったGLAYや浜崎あゆみでさえも、1日に千枚売れることはない。
あまりにも高いハードルが用意されたが、結果は初日からまさかの6千枚超え。わずか2日で完売のミラクルを達成。見事メジャーデビューを果たすことになった。

後にモー娘。がメジャーデビューに当たって、5日間で5万枚の手売りが条件となったのは、この時の成功が元になっているのである。

メジャーデビュー直後に吹き荒れたモー娘。
ブーム


デビュー曲『小さな星』の作曲は河村隆一、歌詞はメンバー3人の共作だ。想いを乗せた楽曲はオリコン初登場6位と好記録をマーク。上々のスタートだったのだが、この直後にモー娘。が結成されたのだから、あまりにもツイてない。

『ASAYAN』は、モー娘。のメジャーデビューへのドキュメントを追いかける形になり、視聴者の興味もそちらに移行。Say a Little Prayerの活躍は、デビューをピークにモー娘。の光にかき消されていく……。
その後も根強いファンに支えられ、河村プロデュースの元、シングル・アルバムを合わせて計10枚リリースしたが、99年には解散となってしまった。

モー娘。の成功の陰にSay a Little Prayerあり。そう思うと、芸能史に残した足跡は非常に大きいのである。


※文中の画像はamazonよりBEST
編集部おすすめ