90年代後半から、“サバイバル感”を押し出した人間観察番組が散見されるようになりました。
このジャンルにおけるパイオニアは、間違いなく『電波少年』でしょう。
猿岩石のヒッチハイクやなすびの懸賞生活など、極限状態にいる芸人たちの壮絶な人間ドラマは、普段決して味わうことができないスリルと興奮を提供してくれたものです。

次々と放送されたサバイバル系企画


その流れに乗るかのように、『トロイの木馬』(フジテレビ系)、『イカリングの面積』(テレビ東京系)『世界超密着TV!ワレワレハ地球人ダ!! 』(フジテレビ系)など、出演者に過酷なミッションを与えるドキュメンタリー系番組が次々と放送開始。
これらはどれも短命で打ち切りになりますが、2004年からスタートした『よゐこの無人島0円生活』(テレビ朝日系)は、人気シリーズとなりました。企画の形状は変われど、いつの時代もサバイバル系企画には一定の需要があるのでしょう。

本稿で紹介する『サバイバー』は、その名が示す通り、真正面からサバイバルを扱った海外生まれのドキュメントバラエティ番組。「世界中で話題騒然!」の触れ込みで、2002年から日本版が放送されましたが、まったくヒットせずに打ち切りとなってしまいました。

素人が無人島で戦う『サバイバー』


『料理の鉄人』や『マネーの虎』、『ガキの使い』の「サイレント図書館」など……。日本のバラエティ番組が外国からフォーマットを買われたケースは多々あります。

その逆に、海外のフォーマットを日本の放送局が買い取るケースは、あまり多くありません。思いつく限り『クイズ$ミリオネア』と、この『サバイバー』くらいでしょう。

『サバイバー』のルールは至ってシンプル。見ず知らずの男女16名が無人島に集められ、最後の一人になるまで生き残りを賭けて、競い合っていくというものです。

島では定期的に「追放審議会」を行い、多数決で脱落者を決めていきます。要するに、使えないやつ・グループの和を乱す危険なやつなどが、ふるいにかけられていくシステムです。
実際に本編では、体力のない主婦のおばさん(40歳)が早々に切り捨てられていたりして、かなりシビアなゲームでした。

視聴率低迷のため、1年で打ち切りに


放送局のTBSとしては、果たしてこのような番組が日本の視聴者に受け入れられるかどうか、不安もあったそうです。しかし、あえてゴールデンタイムの放送に踏み切ったのだとか。
結果から言って、この賭けは大失敗。視聴率は初回から低迷を続け、1年で終了となったのです。

同じような「電波少年」の企画はヒットした


反面、『サバイバー』より少し前に放送され、同じように「無人島でのサバイバル」をテーマとしていた『電波少年的15少女漂流記』は、すこぶる好評でした。
2つの命運を分けたもの……それはずばり、コンセプトの違いでしょう。

『サバイバー』が「一人だけ勝ち残ること」を目的としていたのに対し、『15少女』は「全員で島を脱出すること」を目的としていました。

つまり、個人主義と全体主義の違いです。先進国の中でも就労人口に対するサラリーマンの割合が多く、逆に起業家の割合が少ない日本では、個人のスタンドプレイよりも、組織内で協調性を発揮するほうが好まれる傾向にあります。
(日本の起業活動率は3.7%で、アメリカは12.3%。日本の数値はデータがある国の中で2番目に低い。※平成25年度 起業家精神に関する「Global Entrepreneurship Monitor」の調査による)

そのため、個ではなく、全体で目標達成に向かう『15少女』のほうが日本人の肌感覚に合っていたのかも知れません。


こうした『サバイバー』の失敗は、海外の番組フォーマットを買い取ろうとする際、しっかりと日本人の感性にハマるかどうか精査する必要があると認識させたに違いないでしょう。
(こじへい)
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