テレビコマーシャルを見ていると、1つの企業CMを1人のタレントがずっと担当していることがある。原田知世はAGF「ブレンディ」のCMに22年、井森美幸はアース製薬の「モンダミン」のCMに25年間出演。
「ピアノ売ってちょ~だい!」のセリフでおなじみ、財津一郎の「タケモトピアノ」のCM出演歴は17年だ。

そんな中で気になるのが、「くらし安心」のキャッチコピーでも知られる、水道工事の大手「クラシアン」のCM、広告キャラクターに使われている森末慎二さんだ。

どうしてクラシアンはCMに森末慎二を使っているのか?直接聞いてみた


今や「水道工事のおじさん」として若い人の間では認知されている森末さんだが、何を隠そう体操界のレジェンド。33年前の1984年、ロス五輪・体操の鉄棒競技で金メダルを獲得。しかも10点満点という前代未聞のパーフェクトパフォーマンスをやってのけた、まさに体操の神である。

ちなみにこの森末さん、現役時は「紀陽銀行」の社員でもあったのだが、五輪後に『笑っていいとも!』からオファーされたという。しかし、体操協会が定めていたアマチュア規定ではバラエティ番組の出演は禁じられていたため、その日にいきなり引退宣言をし、体操協会も脱退。銀行にも退行届を出して『いいとも』に出演したという、ウソのようなホントの話も残されている。

本題に入ろう。クラシアンはどうしてそんな森末さんの起用を決め、また今も使い続けているのだろうか、経営企画室・広報の方に聞いてみた。

最初に森末慎二さんを起用した理由


「クラシアンを利用していただくお客様のために、一流の会社を目指そうという企業理念が、金メダリスト(一流)であること、爽やかな笑顔が印象的な森末さんが、ピッタリ当てはまったからです」(広報の方)

森末さんを長い間起用している理由に関しては、

「水道メンテナンス会社として、森末さんのように常に初心を忘れず、一流を目指し続けるため。また森末さんの人柄の良さや爽やかさで、会社の知名度も増したから」といった回答が。


こぼれ話を聞くと、こんな興味深いエピソードが。

クラシアンの英語表記は「QRACIAN」。最初の「ク」は「C」でも「K」でもない。これに関しては当時、先におさまりの良いロゴマークから考案。「C」から始まるクラシアンのロゴ、または「K」から始まるクラシアンのロゴを作ってみたが、これといったデザインができなかった。そこでCとKを組み合わせてみたらどうか…と試してみたところ、「Q」にたどり着いたという。

どうしてクラシアンはCMに森末慎二を使っているのか?直接聞いてみた


今回話を聞いて思ったのは、人気タレントにはやはり「旬」というものがあり、まさしく「水もの」だが、人々の心に一瞬にして記憶に残る偉業を成し遂げたスポーツ選手は、人気の上がり下がりにそこまでの影響はない。しかもオリンピックのたびに思い出してもらえる。クラシアンさんも良い人材に巡り合ったといえるだろう。水道工事の金メダリストをめざしてこれからも頑張ってほしい。
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