第3週「一生笑わしたる」第18回 10月21日(土)放送より。
脚本:吉田智子 演出: 本木一博

連続朝ドラレビュー 「わろてんか」18話はこんな話
てん(葵わかな)は藤吉(松坂桃李)と彼の実家のある大阪へ駆け落ちする。
藤吉、最後の芸
最初の5分で、てんは勘当され、10分で家を出て、駆け落ち。終わりで、姑・啄子(鈴木京香)と藤吉の許婚らしい楓(岡本玲)が登場。
序・破・急とはこのことか(たぶん違う)。
ふたりが決意でひしと抱き合うのは橋の上。
近松門左衛門「心中天の網島」の「名残の橋づくし」ではないが、やっぱりいまいる場所を捨てて彼方へ向かうときには橋が似合う。
“この災難に大江橋”“この世を捨てゝ行く身には聞くも恐ろし天満橋。”べべんべんべん♪
それにしても、いきなり「お嬢さんをください」と、芸を捨てて店を継ぐと言い出して、藤吉が最後の芸をするところにはたまげた。
たしかに伏線はあった。最後の芸としてやった傘回しを、藤吉は14話で練習していた。
桝をまわして、「(てんに)いよいよますますのしあわせがふりつづけることを」と祈る。
女性陣は大喜びだが、お父さんの顔は険しくなるばかりで「あほんだら」「勘当だ」となる。
てんは「お父さんに言われた言葉を胸に私は笑うて生きていきます」と挨拶するてん。
ここで、
今日の、わろ点
自分が言った言葉で娘がこんなことに・・・と儀兵衛ははげしく後悔したことだろう。
こうして、バカップルが誕生した
厳しい制度に縛られていた時代とはいえ、一皮むけば、雄と雌。動物の本能で惹かれ合ってしまったのだから仕方ない。
藤岡家は、次女りん(堀田真由)が、お婿さんをもらって家を継ぎ「これからはうちがこの家を照らしてもみせます」と言うから大丈夫だろう。
そしてあっという間に大阪。鳥のはばたきで空から大阪船場を俯瞰するのは、大河ドラマ「真田丸」(16年)の鷹を使った演出にもある、わりとオーソドックスな説明カットである。
その「真田丸」では秀吉の、たのもしき正妻・寧を演じていた鈴木京香が藤吉の母・啄子として登場。満面の笑顔は、三谷幸喜監督作「清須会議」(13年)の眉をつぶしていたお市のようにもみえる。
つまり、なんかこわい。
案の定、藤吉の婚約者だという楓(岡本玲)を紹介し、てんを固まらせる。
4週目からは、朝ドラ名物、嫁いびりのはじまりだ。
「ひよっこ」ではこうなることを主人公が熟慮のうえ回避したが、「わろてんか」はまんまと地獄の道に。どんな苦労をすることになるか楽しみにしたい。
今日の、小姑チェック
「え」と楓を凝視していたてん。ここは、どういうこと? と藤吉の顔も見てほしかった。
松坂桃李は、楓の顔を見つつ、母の顔も見ている。なにかしらもうワンアクションあるだけで画面にリズムが出ると同時に、情報量も増えるのだが、「わろてんか」はあえてそういうことをしないようにしているのか。
てんが藤吉を見るのは19話に残しているのかもしれないけれど。
(木俣冬)