土曜ナイトドラマ「オトナ高校」(テレビ朝日 土 よる23時5分〜)
脚本:橋本裕志 
演出:瑠東東一郎 山本大輔  
出演:三浦春馬 高橋克実 竜星涼 松井愛莉 山田真歩 夕輝壽太 杉本哲太 正名僕蔵 黒木メイサ

第2話 10月21日(土)放送 
「オトナ高校」2話。快調に三浦春馬が貶められ続ける、黒木メイサもよくぞこんな役を…
「オトナ高校」(テレビ朝日)2話より

とことん恋愛下手な登場人物たちが楽しい


歯止めの効かない少子化問題に業を煮やした国家は、やらみそ(やらないまま30代になってしまった)たちを集めて、教育を施すことにした。それが“オトナ高校”だ。
イケメン、エリート、美女・・・と一見勝ち組に見えて、内面に根源的なコンプレックスを抱える者たちが集まって、やれるお勉強をはじめる。

いまをわかりやすく切り取ったお笑い社会派ドラマを、ポップな画づくりで見せる。ケータイとかタブレットとかで見易いコンテンツだが、リアルタイムでテレビを見て、SNSで盛り上がるのにも向いていそう。
プロデューサー貴島彩理は、テレビ朝日の期待の若手で、今回が連ドラ初プロデュースだと言う。

第2話は、恋愛において不利なところばかりだったパーフェクト(小手伸也)が第一号卒業生になり、あせるチェリート(三浦春馬)たち。
今回は、チェリートと、常に二番手しかも相手は妻帯者であるスペア(黒木メイサ)がメインのお話だ。

テストで最下位だったスペア(一番は、55歳で未経験のサショー〈高橋克実〉)は、数々の恋愛漫画を読破した頭でっかちなヒミコ(山田真歩)に「不倫は楽だからするの。
本気の恋から逃げているだけ」と揶揄される。

現在、彼女が恋愛している会社の上司・白鳥課長(高橋洋・たかははしごだか)は、やはり妻子持ちで、スペアを都合よく使っているだけだった。
このドラマの謎というかおもしろさでもあるが、ふつうなら肉体関係も漏れなくついてくるであろうに、スペアは関わったら重そうと思われて、そこまでにも持ち込んでもらえない。にもかかわらず、彼女は相手に尽くし続けてばかりいるらしい。
カラダの関係がすべてではないとはいえ、そんなんでは恋愛ともいえないのではないか・・・いまの世の中に、こういう女性がいるのだろうか。確かに少女漫画には、見つめているだけで幸せ、というシチュエーションはあるが。

これをアイドルファンの男性に置き換えてみるとたちまち納得。彼らは、つきあえる可能性はほぼないアイドルのために貢ぎ続け、握手会などでたまに接触できるだけで満足している。Twitterなどで「いいね」とかされただけでもすごく幸せになれるのだ。それは男性にかぎらず、女性のアイドルやイケメン俳優ファンもそうかも。で、ヒミコは、肉体派のヤルデンテ(夕輝壽太)が好きな漫画の登場人物に似ていたため、少女漫画チックに追いかけ始めるというのも、笑いのツボを抑えている。

さて、主人公のチェリートはといえば、彼もどうにも事の改善ができない。

テストの回答が長くてつまらないとか、メールが長くてエリートの自己顕示欲がうざいなどとこてんぱんに言われる。

そんなとき、本職のほうの大事な用件が、学校に行く日とかぶってしまう。学校を休むと罰則があり、病気の場合は医者の証明が必要らしい。そんなアホな。大事な仕事で休むのくらい許可してあげてよ、と思うが、そこはドラマ。
困ったチェリートは、早く卒業してしまおうと、スペアと共謀して、体験したと口うらを合わせるが・・・。

具体的な最終結果はここでは書かないが、人気漫画「やれたかも委員会」的な描写もあって、チェリートは
またも屈辱を味わうのだった。ほんとに三浦春馬の表情の付け方がうまい。

それにしても


スペアの恋愛がほんとうに身も蓋もない。
相手にベッドまでプレゼントするって・・・。
相手は「また食事行こうな」と妙に真剣な顔で、スペアを避ける。
「それじゃ」と肩ポンポンする手つきも、女性を道具に使っているようなたらしには全く見えず、むしろ女性扱いが慣れてなさそうにも見える。
もしかして、こんな誠実そうな人だから安心みたいに思わせているのだったら、たち悪すぎる。
のちに判明する、この課長の設定は、自分を大きく見せられる相手を選んで立ち回り、女を利用するしょうもないものだった。
うーん、この課長、ゲストに過ぎないにもかかわらず、演技に余計な情報が入り過ぎ。その点、パーフェクトを演じた小手伸也はとても明確。小手は三谷幸喜の『真田丸』をきっかけに舞台『子供の事情』にも出て、ほんとうに的確で面白い芝居を見せている期待のバイプレイヤーだ。
一方、演技でも演出でもどっちでもいいから、白鳥課長をもう少しわかりやすくして、さらりと見せてくれと思う(この俳優さんの持ち味なんだろうけれども)以外は、「オトナ高校」はわからないところがひとつもなく、テンポよく話が進んでいくので、じつに楽に見られる。

土曜日の夜にぴったり。
ああ、でも、土曜の夜にこれをひとりで見ているのも、どうなのか・・・。
いや、そんな人こそ、見るべきドラマなのだ。

10月28日(土)に放送される3話は、体験学習で、自分の過去を知る小学校の同級生(松井玲奈)と18年ぶりに再会したチェリートはどうする? というお話だ。
「オトナ高校」2話。快調に三浦春馬が貶められ続ける、黒木メイサもよくぞこんな役を…
三浦春馬の自由自在な顔筋の動きが毎回楽しみ 「オトナ高校」(テレビ朝日)3話より


(木俣冬)