何故、テレビはつまらなくなったのか?

そんな議論をここ数年、よく耳にします。広告主への行き過ぎた配慮のせいなのか、それとも、BPOの厳しい監査があるからなのか、はたまた、テレビ局の弱腰な制作姿勢ゆえなのか……。
いずれにしても、テレビが昔よりもつまらなくなったのはたしかです。

もう一つ原因に挙げたいのが、視聴者からのクレーム。「子供に悪影響がでる」「真似する人がいたらどうするんだ」といったご意見・ご感想が、自由闊達な番組作りを阻害しているのではないか、とよく言われています。

テレビ局のクレームへの対応姿勢が変わった?


しかし、視聴者からのバッシングは昔からあったこと。変わったことといえば、番組側の対応姿勢です。イケイケだった頃のテレビ局は、たとえバッシングの電話がかかってきたとしても「だったら見なきゃいいじゃないですか」などと一蹴していたのだとか。しかし、今、苦情を言われると「申し訳ございません、早急に改善しますので…」と恭順の態度を示しているといいます。

この話をしていたのは、ダウンタウンの松本人志。テレビがイケイケだった頃に芸人としての全盛期を迎えていた彼も、今のテレビ業界に思うところは多いらしく、10月17日には自身のTwitterでこのようなことを呟いていました。

「バラエティ番組はいわゆるスピード違反で叱られる時がある でも それはテレビを面白くしたい情熱だったりする。今のテレビを面白くなくしてるのは叱られることを恐れすぎのスピードださなすぎ違反だと思う。」

スピード違反……。『ごっつええ感じ』のコント然り、『24時間テレビ』で出演芸人が被っていたヘルメットを脳天からチェーンソーで斬りつけたことも然り、松本の番組は「スピード違反」の連続でした。

昔の『ガキの使いやあらへんで!』もそう。
動画サイトで過去の映像を見返してみると、今では絶対放送不可能な企画ばかりです。

「サイレント図書館」に寄せられた奇妙なクレームとは?


けれども、やはり近年は、時代の変化に対応せざるをえなかったようで、視聴者からのクレームを甘んじて受け入れた結果、多くの企画が軟化してきました。

その代表例が、山崎vsモリマン。「食べ物を粗末にするな」との批判から、「アツアツあんかけ対決」「ごぼうしばき合い対決」といった、一番盛り上がるはずの対決がなしに。そのせいで、絵的なインパクトが薄くなったのは言うまでもありません。

「食べ物を粗末にするな」なら、まだわかります。しかし中には、こんなクレームもあったそうです。
昔放送していた、ガキ使メンバーが図書館で罰ゲームを行う『サイレント図書館』という企画。ここで、ガキ使の総合演出をしていたヘイポーが、うさぎの糞を顔面でキャッチする罰ゲームがあったのですが、これに対し、ある視聴者からこんな抗議が寄せられたといいます。

「うさぎは、ヘイポーさんの顔に糞をするために生まれてきたんじゃないですから!」

なぜ、うさぎ自体が何かさせられたわけでもないのに、こうも怒っているのか……理解に苦しみます。

フェイク通販企画で本当に問い合わせしてきた人も……


こうしたガキ使における理解の範疇を超えたクレームの最たるものが、「板尾プレゼンツ・イッツジーショッピング」にまつわる、ある視聴者からの批判です。

これはクリームタイプの精力増強剤「勃起王」なる薬を、板尾創路がガキメンバーに売りつけようとする、通販番組のパロディ企画。もちろん、こんな商品は存在しません。
番組中には、精力増強剤であるはずのクリームで車の凹みを直したり、リッツに付けて食べたりするなど、明らかにフェイクと分かる演出もなされていました。

ところが、この商品の存在を信じて疑わなかった視聴者がいたらしく、実際に通販会社へ問い合わせまでしたのだとか。もちろん「そんなものはない」と突き返されたため、「赤っ恥をかかされた!」といって、日テレに難癖をつけてきたというのです。

これに対し、ガキ使の構成作家・高須光聖は「そんなやつがテレビ見たらあかんやろ!」といっていました。
こうした「テレビを見てはいけないような人たち」からのエキセントリックな批判の数々も、テレビ業界の「スピードださなすぎ違反」を招いている一因となっているのでしょう。
(こじへい)

※文中の画像はamazonよりダウンタウンのガキの使いやあらへんで !! 5 浜田・山崎・田中 絶対笑ってはいけない温泉宿 1泊2日の旅 in 湯河原 [DVD]
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