
マンガ家セット。
このアニメは顔が簡単な割にキャッチーなデザインをしており、ポイントさえおさえていれば6人の描き分けも難しくはない。
Twitterやpixivなどではファンイラストやマンガがばんばんあがっており、発表しやすい。
イラスト・マンガの練習を『おそ松さん』からはじめてみる、というのはかなりいい入り口。
「なかよし」が以前マンガ家セットを出したりと、今の攻めポイントなのかも。

12月6日にはEDテーマ「レッツゴー! ムッツゴー! 〜6色の虹〜」が発売される。
ゆるいブルース風味が魅力の曲。歌っているのは「ROOTS66 Party with 松野家6兄弟」。
ROOTS66 Partyは1966年生まれの27人のアーティストによるユニットで、増子直純、スガシカオ、大槻ケンヂ、吉井和哉、谷中敦、渡辺美里、トータス松本など。この一曲でいくらかかっているんだろう。

今回は『おそ松さん』内におけるアイドル、トト子とにゃーと、流行語大賞にもなったインスタ映えの話。
ふたりは地下アイドル
チビ太のおでん屋台で一人飲みしていた、アイドルのにゃー。そこにやってきたのは、アイドル仕事を終えたトト子。
二人は犬猿の仲。いきなり牽制合戦がはじまり、チビ太は気が気じゃない。
女の戦いがはじまる。
8話でスタートした「トト子とにゃー」が連続短編化。「おそ松さん」で女の子だけの話は、大変めずらしい。
二人のアイドル活動の様子を簡単におさらい。
トト子
弱井トト子。松野家の隣に住む幼馴染のヒロイン。
ちやほやされたい願望が強く、町内会の人から褒められるのが大好き。
1期4話で、実家の宣伝のためにアイドルデビュー。魚やらクラゲやらをモチーフにした奇抜な衣装で、「鱗を剥がさないで」をリリース。
しかし六つ子以外に客はおらず、CDやチケットは売れていない。
「下を見ればまだまだ勝ってる」という開き直りで、地下アイドル活動を続けている。
2期では六つ子以外の観客が来ていたように見えたけど……。
にゃー
正式名「橋本にゃー」。ドルオタ・チョロ松が夢中になっているアイドル。
ネコミミにネコ手にネコしっぽ、制服のような衣装にピンクの髪の毛と、萌え要素山盛り。
ファンは多く、握手会には多くの人が集まっている。けれどもおそ松いわく「クラスにいるレベル」らしい。
21話ではにゃーの熱愛疑惑がスポーツ新聞に載っており、24話では婚約相手ができて地下アイドルを引退。トト子に屁をかけて去っていった。
演じているのは、山下七海。
SNSとハッシュタグとアイドル
にゃーが二期現在も地下アイドルなのかどうか、本当に結婚したのかどうかは、描かれていない。
それよりも、にゃーは新聞に載るほどの存在なことに驚く。トト子と争う次元じゃないのでは。
にゃーはチビ太の作ったおでんを即スマホで撮影。自分を入れた写真も撮って、即SNSにアップ。
「今日はおでんで飲んじゃうにゃ〜 #夜食テロ #ぼっちのみ #こじらせ #おやじ #いつも酔っ払いな人 #ホントはさみしい #これで何度目?」
アップした瞬間に「いいね!」が57件。
撮影に夢中で、一切食べていない。
彼女がアップしているSNSはInstagramatsu、Twitter、〜〜todon。
Instagram、Twitter、Mastodonのパロだ。
食べ物写真の構図がうまく、「インスタ映え」をよく理解しているのがわかる。
アイドルが屋台でお酒をぼっちのみ、というギャップの見せ方もうまい。
ハッシュタグの使い方は、インスタあるある。
本文は添え物に過ぎず、ハッシュタグの方が心情の本編。なのでこの投稿は「一人で飲みにいくくらい、にゃーちゃんさみしいんだね」と読むのが正解。
一方、トト子が使っているのは一つ。Matuitter(Twitter)だけだ。
「おもしろいネコ発見!!(絵文字) #拡散希望 #大拡散希望 #超絶拡散希望 #落ち込んだ時にどうぞ」
写したのは顔におでん汁を浴びたにゃーが転げ回る一枚。
にゃーとトト子の写真に、決定的なまでの立ち位置の差が見える。
まずにゃーがあげている写真は、自分のファンが一定数いることを見越したサービス的意味合いが強い。インスタにTwitterにと、次々写真をアップする。「#これで何度目?」のハッシュタグから、彼女がSNSに頻繁にアップしているのも見えてくる。
Mastodonは目的別に住み分けされたSNSサービスで、仲間内感が強いため誹謗中傷が少ない。いわゆるギークが多いのも特徴。これを出すあたり、オタクの気持ちをわかってるなあ、にゃーもアニメスタッフも。
一方トト子のツイートは、Twitterにおける煽り文化にのっとったものだ。
「拡散希望」、ようはトト子のフォロワーのファンが、そもそもあまりいないのがわかる。
「落ち込んだ時にどうぞ」のネタ投稿感。「自分より下」を見て楽しむトト子ならでは。
発信者が何かを残すというよりは、バズらせて不特定多数のみんなで共有して笑おうぜ、というノリが近い。
見る人を想定してかまってほしいにゃーと、自分が楽しいトト子。
地下アイドルというクローズドな世界でのし上がれるにゃーの処世術が、ここにある。
おでん、食べてください
チビ太はおでんに命をかけた職人だ。
だからうまそうにもりもり食う六つ子やトト子が嫌いではない(迷惑は被るけど)。
にゃーを見ている時の彼は、良いでも悪いでもない、複雑な表情だ。
写真を撮るばかりで、全く食べてくれない彼女を見て、チビ太は何も言えない。
『おそ松さん』でのおでんは、夢に向かう人間の象徴だ。
花の精との悲恋を描いた1期15話「チビ太の花のいのち」を見ると、彼のおでんへの向き合い方と成長がよくわかる。
彼が作る、渾身のおでん。
にゃーは自分とネットの向こうの相手のことだけ見て、目の前のおでんを食べてはくれない。
二人の戦いはまだまだ続く様子。
本編ではなくCパートで、というのが味がある。
ところで布団の中でトド松とおそ松が一緒にスマホで見ていたのは、YouTuberの動画だった。以前トド松は、YouTuberで儲けようとしたこともある。
ニコニコじゃないんだなあ。
(たまごまご)
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