
野球も仕事も時代とともに価値観は変わる。
ポスティングシステムでのメジャー移籍を目指す日本ハムの大谷翔平がロサンゼルスでメジャー各球団との面談を開始した。
名門球団のオファーを断った大谷
しかも、あのニューヨーク・ヤンキースは面談前に大谷側から契約の意志がないことを告げられ脱落。ニューヨークメディアでは「なんてチキンだ!」なんつって、合コンで相思相愛と勝手に思い込んでいたおネエちゃんに相手にされなかった八つ当たり的な見出しが踊った。
過去に多くの日本人選手がメジャーのキャリアの始まりにヤンキースを選択してきた。松井秀喜も田中将大も、あの伊良部秀輝は死にたいくらい憧れたピンストライプのユニフォームを着るために日米を巻き込んで大騒動まで巻き起こしたくらいだ(ポスティング制度は96年オフのこの伊良部騒動をきっかけにできた)。
今度もなんだかんだ言ってヤンキースに来るはず。事前にそんな空気すら流れていたが、大谷はヤンキースブランドやカネよりも、自らが野球をプレーしやすい環境を選んだ。各報道によると「西海岸で中小規模の都市に本拠地を置く球団」を希望しているという。伝統よりも今。歴史を追うのではなく、自ら歴史を作る男。“二刀流”という新しい概念を球界に持ち込んだ23歳の青年の生き方には、素直にすげーなと感心してしまう。
プロ野球は時代を写す鏡である。日本でも今年のドラフトの目玉・清宮幸太郎(日本ハム)は最後まで巨人感がなかった。一昔前まで甲子園のスーパースターと言えば、桑田真澄と清原和博、元木大介、松井秀喜と良くも悪くもそのストーリーのど真ん中で巨人軍が絡んでいたが、清宮の場合は事前面談してもいまいちスイングせず、抽選でもあっさり外す。清宮ドラフトにおいて、巨人は常に脇役だったわけだ。これも時代の流れ、巨人ファンとしては寂しい限りだが、日本ハムは清宮本人の意中の球団でもあったという。いろいろと制約も多い伝統の球団よりも、育成に定評がある自分が成長できるチームへ。大谷と清宮、偶然にも2017年を象徴するふたりの才能が同じような価値観で新たな野球人生のスタートを切ろうとしている。
重要なのは「どこでやるか?」じゃない
そうか、もう名前で会社を選ぶ時代は終わったのか。エンタメソフトやライフスタイルと同じく、価値観の多様化。
……と書くと、大谷や清宮は野球の天才。自分たちとは次元が違うと突っ込まれるかもしれないが、いやスーパースターも俺らと同じ人間だ。能力は真似できなくても、その姿勢は参考になる。
なんて偉そうに書きながら、俺も29歳の春にいわゆるひとつの有名デザインプロダクション会社の知名度に流されて転職して、まったく環境になじめず即辞めた経験がある。あの時の自分は、会社のブランドや給料を上回る、仕事上の最優先事項を設定できていなかった。いつの時代も何を欲しいか分かっていない男は、何も手に入れることはできない。
今の大谷には絶対に譲れない最優先事項があるのだろう。その答えが何であるのか、2018年シーズンを楽しみに待ちたい。
【プロ野球から学ぶ社会人サバイバル術 其の1】
会社選びで重要なのは、「どこでやるか?」じゃなく、「なにをやるか?」である。
(死亡遊戯)