
主人公・今宮沙織(木村多江)の復讐ロードは、いつまで経っても終わりを迎えない。政治家・塚本修二郎(神尾佑)、アイドル・愛原サユミ(芹那)、通販会社社長・南條夕子(横山めぐみ)の3人を“社会的な死”に追い込んだと思いきや、その背後に「週刊星流」編集長・福島勲(佐藤二朗)がいることが判明。
この男を炎上させれば、沙織の復讐は完了する。そう思われていた。果たして、テレビ番組で福島の記事捏造を明るみにさせた彼女は、ようやく復讐を完遂!
一筋の涙を流しながら高笑いする沙織。それは、悲しき“勝利宣言”だと思っていたのだが。
朱里が今も想う「北里玲奈」なる人物
第7話のエンディングにて、カウンセラーの糸賀朱里(鈴木砂羽)は「楽しいね、復讐って」と発言。この時、彼女が手に持っていたのは恵蘭女子中学校の卒業アルバムだ。指先で「北里玲奈」なる女生徒の顔写真を撫でながら、朱里は笑うのだ。
一方、寺田圭吾(高橋光臣)の元秘書・高槻裕也(堀井新太)は朱里の正体へたどり着こうとしていた。沙織と朱里が中学校の同級生だと突き止めた彼は、廃校した恵蘭女子中校舎へ忍び込む。そして、屋上に花がたむけられているのを発見。花の傍らには「Akari Iriyama & Reina Kitazato」と書かれたメッセージカードが添えられていた。
見覚えのあるネームだ。まず「Akari Iriyama」、即ち「入山灯里」とは朱里の本名である。そして、朱里が卒業アルバムを持ちながら撫でていたのは北里玲奈の顔写真。即ち「Reina Kitazato」のことだ。
やはり、朱里と玲奈には強き結びつきがあるらしい。
このメッセージカードを見た高槻は、一つの記事を発見する。それは、女子中学生・北里玲奈が飛び降り自殺したというものであった。朱里は「北里玲奈」の存在を胸に、何かを画策している?
遡ると、沙織の妹・石山綾子(中村映里子)と知り合ったのも朱里の計画通りだったらしい。母子でクリニックに訪れた綾子に、朱里はこう語りかけた。
「本当はあなたを利用するために近付いた。ごめんね、最後まで私の都合に付き合わせて。……もう一つだけ、あなたには大切な役割があるの」
福島編集長、ブーメランを食らって人生の終焉を迎える
悪い行いをしたならば、必ず悪い報いがやってくる。これぞ、因果応報。昨今では、「ブーメラン」とも呼ぶらしい。
9話での福島は、完全にブーメランを食らっている。スキャンダルで有名人を炎上させてきたはずが、今度は己が炎上の渦中で苦しんでいるのだから。
今までの軽薄な態度はどこへやら、炎上後の福島の取り乱し方は見苦しいばかり。オフィス内で「い~ま~みーやーーーっ!!」と激しくとりみだしはじめたかと思えば、かつての部下・天満龍二(平山浩行)を前に情けない姿を晒してしまう。
福島 あっ、あっ、あの、ふっ、二人でさ、配信事業を立ち上げるっていうのはどうだ!? 配信事業! なあ!? スクープ映像と一緒にさ、俺とお前の記事をさ、配信するんだよ! おっ、お前も配信に興味持ってたろ!? な!? 二人してさ! な!? また、記者やろうぜ! な! 俺とお前は、ベストパートナーなんだからさ!
天満 冗談じゃありませんよ!
福島 ……!
天満 記事を捏造した元「星流」編集長・福島勲が関わった記事なんて、もはや何の信憑性もない。もう、この業界にあなたの居場所はない!
そして天満は、炎上主である福島に追い込みをかける。「これからは俺があなたの人生を追いかけ回す」と宣言したのだ。うろたえる福島をスマホで撮影する天満。思わず、顔を隠そうとする福島。よく見ると、周囲の一般人も福島の姿をスマホカメラで捉えている。遂には、膝から崩れ落ちる福島。見るからに弱り切っている。しかし……
「読者受けする記事のためなら、取材対象がどうなろうともきっちり追い込む! あなたが俺に教えてくれたことじゃないですか。どこに逃げても無駄ですよ。あなたの行動は、手に取るようにわかる。だって、俺があなたのベストパートナーだから(笑)」
超ド級のブーメランだ。取材対象に追い込みをかけ、破滅へと導いてきた福島。だが、今度は自分の番だ。
それだけじゃない。「ベストパートナー」という言葉で天満をいいように利用してきた福島が、今度は「ベストパートナー」という言葉で窮地に追い詰められている。これも、ブーメランである。
福島は、周囲に当たりまくる。ゴミ箱を蹴り倒し、周囲の一般人に「何見てんだ!」と威嚇。今まで、自分も他人のプライベートを散々覗き見していたくせに。その上、荒れるこの瞬間を天満に撮影され、スクープ映像として配信されてしまった。「配信事業を立ち上げよう!」と持ちかけた、そのすぐ後に。天満がいる限り、福島にプライバシーなどないのだ。
「コメディは蹴る方蹴られる方、共に良くないと成立せず」 細部不確かだが、たしか海外の舞台演出家の言。これ、コメディに限らず。悪に打ちのめされる悲哀や繊細さを有した木村多江や平山浩行に感謝。今夜「蹴る方蹴られる方」逆転か。さあ最終章。「ブラックリベンジ」9話、今夜23:59放送。
— 佐藤二朗 (@actor_satojiro) 2017年11月30日
なるほど。「今夜「蹴る方蹴られる方」逆転か」だなんて、9話を簡潔に表した絶妙な表現じゃないか。
復讐を達成し、血に染まる手の幻覚を見る沙織
福島勲は、沙織をビルの屋上へ呼び出した。ここは、新人時代の福島がよく訪れた場所だ。
福島は、まだ沙織が気付いてなかった真相を明かし始める。圭吾に関する捏造情報を福島に提供したのは朱里だったという事実である。
そして、彼は諦めの笑顔で沙織に語りかける。
「あ~、スキャンダルされるってのはこんなにも嫌な気分だったんだなあ」
「よく見とけよ。お前が俺を殺したんだ」
そのまま、福島はビルから飛び降りてしまう。これは、復讐のループだ。憎しみからは憎しみしか生まれない。復讐を成し遂げても、それは不毛。
それを証拠に、自分の行いで人が命絶える瞬間を間近で見た沙織は、己の手が血だらけになる幻覚を見てしまうのだから。憎き人間を死に追いやっても、結局は自分が苦しむだけであった。
『ブラックリベンジ』とは、誰が誰に復讐するドラマなのか
福島から事の真相を聞いた沙織は、朱里のクリニックへ車を走らせた。到着すると、室内に流れていたのは圭吾がベランダから飛び降りる映像。この動画が入ったUSBが何者かから郵送された時から、沙織の復讐ロードは始まっている。
沙織が知るのは、圭吾が飛び降りた瞬間まで。しかし、今観ている映像にはその先がある。この動画の撮影主がカメラを裏返し、レンズを自分に向けた。そこに映るのは、朱里!
要するに、療養中の沙織にUSBを送ったのは朱里ということ? 復讐の始まりから何から、全て朱里が仕組んでいたということ?
この映像が終わると、沙織はスクリーン前の椅子に座る人物の存在に気付く。そこにいたのは、いくつもの花で飾り付けられ絶命する綾子であった。
先ほど、朱里が綾子に告げた「大切な役割」とはこのことか……。
綾子の手には、一枚のメモ紙が挟まれている。そこには、こう書いてあった。
「私のこと思い出した?」
「思い出せなかったら悠斗君を殺します 25年前、あなたがそうしたように」
この文言を読んだ沙織に、過去の記憶がフラッシュバックする。脳裏に甦ったのは、中学生時代。ある女子生徒が「あの2人でしょう。ちょっと凄くない(笑)? アハハハハハ!」と、別の女子生徒2人を笑っている場面である。
容易に想像が付いてしまう。恐らく、2人の女子生徒を笑っているのは沙織。笑われている2人は、北里玲奈と朱里に違いない。
今さらだが、ドラマのタイトルを今一度確認していただきたい。そう、「ブラックリベンジ」だ。てっきり、この作品は沙織が夫の復讐劇に邁進するストーリーだと思っていた。
違うのだ。リベンジしているのは、朱里の方。沙織は、復讐される側である。
北里玲奈は、飛び降り自殺によって命を絶った。そういえば、ずっと気になっていたのだ。このドラマは、高所からの飛び降りで絶命する人物が多すぎる。寺田圭吾、福島勲、そして情報屋の城田純一(DAIGO)。
これは北里玲奈の自殺に端を発した、朱里による“復讐ロード”の途中道であることを表している。
次回、『ブラックリベンジ』は最終回を迎える。次回予告では、朱里が校舎の屋上から飛び落ちるかのような映像が公開されていた。長く展開されてきたリベンジ、最後も北里玲奈を想起させる“飛び降り”によって決着が付くということ?
沙織が仕掛けた復讐で、社会的に抹殺された者、それどころか本当に死んでしまった者は数多い。実はそれら全て、朱里が沙織へ仕掛けたリベンジに巻き込まれただけだった。そう考えると恐ろしくなってくる。朱里の抱える怨念は常軌を逸している。
彼女の感情の根本にある真相は、本日放送される第10話で明らかにされる。
(寺西ジャジューカ)
Huluにて配信中