第11週「われても末に」第61回 12月11日(月)放送より。
脚本:吉田智子 演出:保坂慶太

61話はこんな話
ゆう(中村ゆり)は団真(北村有起哉)の元から出ていってしまい、てん(葵わかな)は藤吉(松坂桃李)から寄席の仕事をしなくていいと言われてしまう。
繰り返される伝書鳩パターン
ゆうに出て行かれて、ふて寝する団真の傍らに、折れた扇子が置いてある。
それによって、落語なんてほんとならとっくに辞めていたという彼の言葉は本心ではないのだろうと、感じさせる。
てんと藤吉にもそういう象徴的な小道具があればいいのに(てんはたまに小鳥の根付を握りしめているが)。
てんと藤吉の、言葉にならない言葉を代弁するのは、トキ(徳永えり)と亀井(内場勝則)だ。
喧嘩すると口を利かなくなるのがお決まりらしい夫婦の伝書鳩になる。
でも、この伝書鳩たちは優秀なのかそうでないのか、藤吉はだんだんイライラして、「もうええわ」と一喝。
口利かないふたりの間を、伝書鳩が行き来するパターンは、てんと藤吉夫婦のお約束として、楽しい。
いつの間にやら、すり替わり
夫を日本一の席主にしたい一心で5年もがんばってきたのに、しばらく休めと言われて、悲しくなるてん。
なぜか突如として、藤吉がよくできた人で、てんが足手まといキャラのようになっている。
このすり替わりによって、外で働きたい女が、男によって家に閉じ込められる社会問題が浮き上がってくるではないか。
え、そんな難しい話でしたっけ?
そこで、リリコ (広瀬アリス)が
「女だから仕事に口出すなと言ったのではない」とフォロー。
問題は、男女差に関する社会問題じゃなく、芸の世界の話であった。
突出した花形がほかの芸人の人気も底上げする、てんは芸のことがわかってない、とリリコは説く。
ふむふむ。至極ごもっともな話のようで、なるほど、藤吉はちゃんと考えているんだなあと思ってしまいそうになる。
だが、そのあとの「あさイチ」での「(藤吉は)早く説明すればよかった」「そうすればリリコに言われないで(済む)」とイノッチと有働由美子の指摘によって、私の目は覚めた。
リリコや藤吉は、世間知らずで、人の好いてんをうまく丸め込んでいるだけだ。
芸人はお客に夢を見させる・・・マジックをかける(悪くいえば、騙す)もの。その資質を幼い頃から身につけてきたリリコと藤吉は、その場、その場で、自分たちに都合いいことを言っているだけなのだ。
藤吉はぱっと見、クールで知的なので、ついつい、彼のいうことに流されそうになってしまう。視聴者もそうだし、てんもきっとそうなんだろう。
そもそも、寄席の開業を提案したのも資金を調達したのもてんである。もっとえらそうにしていい。でも、この時代(大正)は、女性が出過ぎてはいけなかったのだろう。やっぱり、当時の社会情勢が物語に、少なからず影響しているようだ。
経営はてん、番組は藤吉という、互いの仕事を信頼して任せながら、二人三脚で、という立脚点を見出すという話なのだろうけど、5年も経って、いまさらそこ? と疑問に思う視聴者も多そう。
これまでも、こういうツッコみどころがあまりに多過ぎて、餌を撒かれている気がうすうすしているので、当レビューでは、そろそろ言及するのをやめようと思う。
今日の、わろ点
どうにもこうにも、藤吉とリリコは愛人関係で、てんはうまく誤魔化されているという設定の夜か昼のドラマを想像してしまう。
誰か二次創作してください。
(木俣冬)