連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第10週「笑いの神様」第58回 12月8日(金)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:保坂慶太
「わろてんか」59話「瀬をはやみ」考察。「ちりとてちん」「ちはやふる」にも登場する歌
イラスト/まつもとりえこ

58話はこんな話


団吾(波岡一喜)と団真(北村有起哉)には因縁があり、団吾は藤吉(松坂桃李)に団真が出るなら風鳥亭に出ないと言い出す。

てんとゆうは似ていた


ついに明かされた、ゆう(中村ゆり)の夫・団真と、団吾の関係。
ふたりは兄弟弟子で、本来、団真が団吾を継ぐはずが、なぜかそうならず、跡継ぎの嫁となるはずのゆうと駆け落ちし、破門されてしまい、以来、10年間、旅まわりをしているという。

なんと大変なことか。10年も、このひとの落語はすごいと信じて、貧しさに耐え、支え続けているなんて。
でも、団真とゆうは、とても幸せそうだ。

駆け落ちしてまで一緒にいて、夫の才能を信じて応援している部分は、てんと藤吉と、ゆうと団真は似ている。
でも、いまのてんは、ゆうのように幸せそうに見えない。
てんは、幸せを取り戻せるのだろうか。


瀬をはやみ


10年前、落語を題材にした朝ドラ「ちりとてちん」でもよく詠まれた「瀬をはやみ〜」。
いまだと、百人一首の物語「ちはやふる」で記憶している人も多いだろうか(朝ドラ100作目のヒロインに選ばれ、リリコ役の広瀬アリスの妹・広瀬すず主演作)。
百人一首の有名な歌で、川の流れが岩にぶつかっていったん別れ別れになっても、いつかまたひとつになるという願いのこもった歌である。
それを知って、トキ(徳永えり)が、少女時代のようにまた「ロマンチック〜」とひとりで盛り上がっていた。
で、その歌を盛り込んだ落語「崇徳院」について、ダルマを使って、亀井(内場勝則)が説明。
お参りに行った先で偶然出会った女性に恋してしまった若旦那のお話。あれ、これ、どっかで・・・。
そう、てんと藤吉の出会いもこんな感じであった。ふたりも8年越しで再会して、一緒になったのだった。
10月に描かれたふたりの出会いは、いまのこのエピソードと計算して描かれていたわけだ。

団吾の謎


団吾の座を奪われてしまったいまの団真は、過去、仲良くしていた弟・弟子をよく思っていない。
団真にとって団吾は、ひとのものをすぐ欲しがる性分らしい。それで自分の落語家としての将来を奪われたと思っているのだろう。

実際、団吾は、団真が寄席に出るのを邪魔する。
いまのところ、明らかに団吾がワルモノのように見える。
59話のラスト、懸命に「崇徳院」を練習している団吾を見ても、藤吉のように感動を覚えるよりも、団真のほうが巧いんじゃないかと思ってしまう。

いったい、こんな団吾をなぜ、先代の団吾(ゆうのお父さん)は跡継ぎに選んだのか。
ただ、団吾がずる賢くて、うまく騙しただけなのか。
この謎がとっても面白く描かれたらいいなあ、と期待しています。

(木俣冬)