「低温やけど」の本当の怖さを知っていますか
冷え込む季節。低温やけどにはくれぐれもご注意を(画像はイメージ)。

12月6日に、消費者庁より「湯たんぽによる低温やけど」に関する注意が発表されている。
消費者庁は、「就寝時は布団に入れたままにせず、温まったら取り出すこと」を勧めているが、実際には湯たんぽ利用者は朝まで布団に入れている人が多いのではないだろうか。

しかも、一般的に「低温やけど」というと、「軽度のやけど」と思われがちだが、実は普通のやけどより重症化しやすいと聞く。
なぜ? そもそもの定義とは? 『新版 今さら聞けないスキンケアの正解 (主婦の友実用No.1シリーズ) 』等多数の著書を持つ、よしき皮膚科クリニック銀座の吉木伸子院長に聞いた。

「低温やけどとは、40度から60度くらいの、比較的低温で受けるやけどのこと。40度で約6時間、44度で2時間、50度では2~3分で低温火傷を生ずるといわれていますが、その人の体質、部位、熱源が何であるかなどによって時間は異なります」

人間の皮膚温は36度程度。そのため、たとえ40度でも長時間さらされれば、皮膚のタンパク質が熱変性して壊死するそう。それが「低温やけど」ということだ。

重症化しやすく、気づきにくい「低温やけど」


低温やけどは、普通のやけどよりも重症化しやすいと聞く。それはなぜ?
「時間をかけて深い部分まで熱が到達しているためです。深い部分の壊死がはじめに起こり、その後表面の皮膚が壊死していくという順序になります。そのため、はじめはやや赤くなる程度であったものでも、数日後に皮膚が黒く死んで、深いところまで穴があいたように崩れていく、という経過をたどります」
じわじわ時間をかけて深部まで熱が到達する低温やけどの場合、治療には一カ月近く要したり、あとが残ったりすることが非常に多いそう。
実は我が子も小学生の頃、足の一部が赤く腫れ、かゆみをともなっていたため、「どこかで何かの虫に刺されたのかな」と思っていたら、気づくと水ぶくれになっており、皮膚科を受診したところ「低温やけど」と言われたことがあった。その治療の長期間に痛々しさは、見ているだけでも辛かったけど……。
低温やけどの場合、重症化しやすいことに加えて厄介な点は、意外と気づきにくいこと。
最初は痛みも少ないため、気づかない人も多いという。


ダイエット器具やスマホ、さらに「ヒーターの前で寝る」が原因にも!?


「低温やけどの原因として多いものは、湯たんぽ、電気あんか、使い捨てカイロ、こたつなどの温熱器具。ファンヒーターの前で寝てしまったという例も多いです。その他、トイレの便座(高齢者で知覚が低下している人)、ダイエット器具(電極を当てて電気を流し、温度を上げたり筋肉を動かすもの)、スマホなどの報告もあります」
低温やけどを起こす条件を、以下に挙げてもらった。
・血行不良(足など血行が悪い部分。皮膚に受けた熱は血液で分散していくが、血行が悪いとその機能が働かず熱がこもる)
・骨の付近(血行が悪い部分が多く熱がこもりやすい)
・高齢者、糖尿病患者(知覚がにぶく、熱さを感じない。血行も悪い)
・温度が高くなる環境(ホッカイロを貼って毛布をかけて寝る、ホッカイロを貼って電車のヒーターの上にすわるなど)
・圧迫(ホッカイロの上からガードル、電気あんかに足をのせて上から布団をかけるなど)
・爆睡、泥酔(酔って帰宅してヒーターの前で寝たという例は多い)
「あんかや湯たんぽの場合は、毛布やふとんをかけて熱がこもる、足に当てるため血行が悪い、圧迫も受けるのでさらに血行が悪い、という条件が重なるため、低温やけどをよく起こします。 そのため、湯たんぽは、体から離して絶対に触れない位置におくか、寝るときはふとんから出したほうが良いですよ」


冷やす・消毒はNG!


低温やけどになってしまったら? 注意点を教えてもらった。
「低温やけどに気づいたら、まず冷やさないこと。普通のやけどは冷やしますが、低温やけどの場合、冷やしてはいけません。余計に血行が悪くなるからです。消毒もだめです」
また、低温やけどは、赤みが出るだけのものは軽症のため、ワセリンを塗って保護するくらいで良いというが、「水疱が出る」「真ん中が黒くなってくる」などの場合は、自分では治せないことが多いため、皮膚科を受診する必要があるとか。

皮膚科ではどんな治療をするのだろうか。

「やけどの深さや部位によって、さまざまな治療をしますが、一般的には壊死した皮膚を取り除き、皮膚の再生を早める薬を塗るなどします。ふさがるまで時間がかかるので、その間、化膿しないように細心の注意を払います」
言葉の響きだけで、軽く考えがちだが、重症化しやすく、治療に時間がかかり、あとが残りやすい「低温やけど」。

まずは、ならないように十分注意すること。そして、もし、やけどを負ってしまった場合には、早めの受診で適切な処置を受けたいものだ。
(田幸和歌子)
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